第4話:魔王様への意地悪な依頼
「ふあー、良く寝た」
久しぶりの長い睡眠に、すっかりリフレッシュされた側近は大きく伸びをした。そうすると良い音がなった。
伸びをすると布団が側近の体から剥がれ落ち、その大きな2つの果実が露わになった。誰もいないと思って特に気にしていなかった側近だったが、隣で寝ている存在に気付く。
「なななな、何で魔王様が寝ているんです」
デジャブのような光景だった。
身体に布団を巻き付け、側近は魔王を起こす。
「あれ、側近ちゃんどうしたの?」
「どうしてじゃありませんよ。どうして一緒のベットで寝てるんです。私にゆずたんですよね」
側近はちゃん付けに突っ込む余裕もなかった。
「えっ、確かにあの時は譲ったけど、一緒に寝たらダメとは言わなかったから」
「…………」
言わなかったけど、普通に考えれば分かるだろと思いながら、側近は目の前の魔王にため息を吐かずにはいられなかった。
「若い男女が同じベットにいたら、間違いが起きてもおかしくないでしょ。女の方は服も着ていないんですよ」
「…………」
だから、どうしたんだという顔でリュシカは側近を見ていた。側近は言葉がそれ以上出てこなかった。こういう時、どう怒って良いのか分からなかったのだ。話が進まないので諦めることにした。魔族の世界は縦社会である、自分が我慢するしかないと、また深いため息を吐くのだった。
「……リュシカ様、申し訳ないのですが、深いダメージを負った時のように、魔法が使えません。服を調達して来てくれませんか?」
側近は、今一番の問題は解決することに考えをシフトする。
「…………」
リュシカは、昨日あったことを思い出し、冷や汗を流す。
「本当に申し訳ないのですが、体に力が入らないんです」
側近はしおらしい態度に、バレたら殺されるのではないかと、リュシカは滝のように汗を流した。溜まりに溜まった怒りを爆発された時ほど怖いものがないことを知っていたのである。
「分かったよ」
そう言って、リュシカは笑顔で部屋から出ると、ダッシュで逃げ出した。
10分後
側近は、リュシカが戻ってこないのでイライラしていた。服も持ってこれないのかと、始めてのお使いに子供を行かせたお母さんのように呆れる半分、心配半分という感じだった。
何と言っても、ここは人間界なのである。何があってもおかしくないし、リュシカを守る存在は自分以外居ない。
「あっ、いけません勇者様」
「いいじゃん、いいじゃん。こっち来なよ」
そんな側近の心配をよそに、人間のメイドの腰に手を回しながらリュシカは部屋に戻ってきた。
メイドは言葉では嫌がっているが、表情は満更ではなく期待した表情で、リュシカにお持ち帰りされていた。
「じゃあ、脱いで」
リュシカの男らしい堂々とした言葉に、メイドは恥ずかしそうに服を脱いでいく。
それを誰よりも顔を赤くしながら、部屋にいた側近が見ていた。
「なっ、何をしてるんですか?」
「えっ、他にも女性が?」
メイドはリュシカしか見えていなかったようで、今さら側近に気付く。
「そんな同時プレイ何て……」
そんなことをゾクゾクしながらメイドは呟いた、だいぶMだった。
「あなた何をしてるんです?」
メイドのことを無視して、側近がリュシカに詰め寄る。
「いや、側近ちゃんが服が欲しいって言うから人間から奪おうと……」
「やり方があるでしょ。馬鹿」
余裕がないゆえに、昨日に続きだいぶはっきりとした、もの言いだった。
「勇者様、おはようございます」
そんな空間に今度はリーア姫が現れる。
リーア姫が見たのは、布団を体に巻いてリュシカに迫る側近と、服を半分以上脱いだメイドの姿だった。
姫の後ろに付いてきていたバルトは凍り付いた。百戦錬磨のバルトであったが、それでも一瞬で凍り付いた。いつもの笑顔を崩していないが、姫の怒りは一目瞭然であり、笑顔の中で、相手を睨み殺しそうな禍々しいオーラが漏れていたのだ。今から行われる修羅場を思うと、ここから逃げ出したかった。
死ぬなよ。勇者。そんなことを心の中でバルトが呟いた。
「おはよう」
ただ、マイペースなリュシカだけは、姫のその顔を意に返すことがなく、普通に笑顔で返事を返した。
側近ですら、「これが人間の殺気か?」などと呟いているのにである。
凄いなコイツ。女の修羅場でも平然としているリュシカに対してバルトはそう思った。バルトの中で、リュシカの評価がさらに上がった瞬間だった。この男ならと、バルトは淡い期待を抱く。
「ええと、私はもう行きますね」
「お待ちなさい」
「ひっ」
この状況からいち早く動いたメイドだったが、それを姫が引き留める。
これが女同士の修羅場か、参考になるな。何が参考になるか分からないが、側近は部外者というスタンスで、そんなことを思いながら姫とメイドを見ていた。そして、リュシカの方に視線を移す。そこで見たのは、何が面白いのか、一瞬笑顔を見せたリュシカであった。
印象的な笑顔で、側近にとって始めて主から感じた禍々しい笑顔だった。
リュシカは内心楽しかった。リュシカは修羅場というのが大好きなのである。魔族は人間の負の感情を好む。とりわけ始めて見せた姫の邪悪な表情は実にリュシカ好みで、リュシカの第六感が反応していた。姫が始めてリュシカのお眼鏡にかなった瞬間だった。
メイドに小言を言っている姫。涙目のメイドの前にリュシカが歩み寄る。
「ごめんね。怒らないで」
「うっ」
上目づかいでリュシカがリーア姫に謝罪した。
その姿を見て、リーア姫はこれ以小言を言うことが出来なかった。心臓が高鳴って抑えることが出来なかったのだ。
その姿を見て、リュシカはオーク大臣に習った、必殺技を使うことにした。女性問題を起こした際にだいたいこうすれば解決すると言っていたのを思い出す。
「君の怒った顔は見たくないんだ。駄目な私を許してね」
そうリーア姫の耳元でリュシカは囁いて頬を撫でた。
「ええと」
白い雪のような肌は、一瞬で朱に染まる。
リーア姫は、誰もいない壁の方に顔を向け。一人ブツブツと呟くのであった。
「駄目よ私。我慢しなさい」
そんなことを呟いて、リュシカの顔を振り向いてちらっとだけ確認する。
「駄目よ。駄目よ。駄目よ」
「初心だな」
そんな風に、必死に自分の衝動を抑えようとする姫を見て、側近はどの口が言うのか、そんな言葉を漏らした。関係ないがペットは飼い主に似てくるものである。
「バルトさん、朝飯用意してる?」
リュシカは、何やら満足げな顔で部屋から出ていく。
「ああ……」
バルトは姫の方に視線を向ける。行っても良さそうだったので、バルトはリュシカを食堂に先導するためにリュシカの前まで小走りで移動する。
「貰っていきますよ」
側近はメイドから、本当に服をはぎ取ってリュシカの後を追った。
「本当に取るとは思わなかったよ」
そんなリュシカの言葉にイラッとした。
「でも似合ってるよ。可愛い」
「かわ……可愛い?私がですか?」
「うん」
「そんなことは……あるかもですね」
急に側近の機嫌が直った。
ただの天然だったが、リュシカはこうやっていつか爆発しそうな側近の溜飲を下げていた。
「旨いな」
昨日、王と一緒に食事した場所でリュシカは一人朝食をいただいていた。
王から一歩も引くことなく、食事を奪い取ったリュシカは既に城内で有名だった。その整った容姿もあって、先ほどとは違うメイドたちがリュシカの世話を甲斐甲斐しく行っている。
そんな姿を見ても、姫は惚けていて気にしていなかった。食事も手に付けずと言った感じだった。
「何をしている?」
遅れて王が到着する。
王は自分よりも早く食事を開始しているリュシカが許せなかった。王よりも早く食事するなど人間の世界では無礼に当たる。もちろんリュシカはそのことを知らない。姫も惚けていてそんなことを注意することに頭が回っていなかった。
「ご飯いただいています」
相変わらずリュシカはマイペースである。
「見れば分かるわ。貴様は儂を馬鹿にしているのか?」
「はい」
屈託のない笑顔でリュシカは答えると、吹き出すものもいた。
王はその言葉を聞くと、フォークをもってリュシカに投擲する。
それをリュシカの隣で、呆然とリュシカを見ていた側近が払った。
「何をする?」
側近は王を睨んだ。
「何だそのメイドは?」
王も怯むことなく側近を睨んだ。魔力切れの側近には人間を威圧するだけのオーラーがなかったためだ。いつもの側近なら王は既に失禁していたかもしれない。
「勇者様のドラゴンです」
バルトが答えた。
「ドラゴンがメイド服など着るか、馬鹿にしているのかお前も」
「勇者様は、竜騎士でもあるんですよ。お父様」
惚けていて状況の良く分かっていない姫は、自慢げに嬉しそうに語る。
「……お前たちは分からないのか?竜を従えて連れている勇者など聞いたこともないわ。そいつは、まともな勇者ではない。何をするか分からんぞ。この国を滅ぼしかねん。。否、そうに違いない。そもそも勇者かすら怪しいわ。魔王の使いではないのか?」
王の意見は良い線行っていた。魔王の使いという部分以外は正解である。愚王ゆえにだれよりも状況が分かっているという、何と言う皮肉。王にとっての都合の良い解釈はほとんど正解だったのである。
核心を突かれたリュシカはというと……
「これ美味しいね」
王の話を聞いていなかった。既に勇者の演技などする気がほとんどなく、人間界に来て1日たって緊張もほぐれ、いつも通り振る舞い始めていたのだ。
それは側近が何度も舌打ちした魔王の姿である。都合の悪い話はほとんど聞いていないのである。否、聞く気がないのである。
返ってくる返事は大抵「側近ちゃんがやっておいてよ」である。
思い出して、またイライラしてきたので側近は考えるのを止めた。
リュシカは余りにも堂々とし過ぎていた。ゆえに疑われることがなかった。普通の人間ならここまで疑われれば、何かしらの焦りを見せて良いところだが、動じないのである。それが、信頼を得ることに成功させる。
「勇者様、飯を食うのを止めて、王の言葉を聞いてくれないか?」
「……しょうがないな。何です?」
バルトの言葉に、リュシカはようやく王の方を向いた。
「お前は魔王の手先ではないのか?」
一番重要な部分を王は言い直した。
「手先だ?違いますよ」
手先と言う部分に、リュシカはイラッとした表情を見せた。
「…………」
魔王の殺気を感じて、王は思わず気おされ押し黙った。
全く思い通りにならない勇者に、王は頭を抱えた。
娘をかっさらって行こうとした、前の勇者の方がましだったとすら思えた。
誰か助けてくれと思いながら、王はバルトの方を見るのだった。王は王国の未来を思い心底震えていた。
バルトはため息を吐いた。
心配性の王を安心させるために、バルトは頭を働かせる。バルトはリュシカのことを既に疑ってはいなかった。短い間に、リュシカの男としての器に惚れこんですらいた。
もちろんバルトの勘違いである。器のでかさなどリュシカは持ち合わせていない。
だが、周りのものを勘違いさせる豪運持ちという点においては、歴代魔王の中でも類を見ないほどであった。
「勇者様、疑いたくはないのだが、王は心配性な方なのだ。王国のために一度働いてくれないか?もちろん報酬は弾む」
バルトは迷った末に口を開いた。
王はバルトの言葉を聞いてニヤッと笑った。王にはバルトがリュシカに何をさせようとしているか分かったためだ。
「……何をすれば良いんです?」
リュシカが問う。
「王国に反旗を翻す反乱軍がいることが、この前分かった。勇者様にはこの反乱軍を討伐して欲しいんだ」
姫は秘匿するように命じたが、バルトにだけは昨日起きた真実を話していた。その結果、明るみになったのは、王国を滅ぼそうとしている反乱軍の存在である。
昨日起きた事件のバックには、大きな組織が動いていた。
バルトと側近は、リュシカがどうするのか固唾を飲んで見つめた。何というのか全く想像もできなかった。
「反乱軍か……王様も大変ですね」
それは同じ王として、リュシカから出た真実の言葉だったが、王には嫌味にしか聞こえなかった。
「反乱起こされるのって、だいたい王が悪いんですよ」
さらにリュシカの言葉は続く。誰も言えない言葉をリュシカは言い切った。
その言葉は反乱は起こされていないが、上級魔族からストライキを起こされているリュシカに言える言葉ではないなと、側近は思ったが黙っていた。
「少しは反省したら?」
最後のリュシカの言葉に、『おい、ブーメラン刺さっているぞ』と側近は言ってやりたかった。そして、優秀なオーク大臣辺りに反乱を起こしてほしかったが、リュシカ信者であるあの男では無理だろうと諦めるのであった。
王は怒りで震えていた。だが、その横でバルトはさらに震えていた。リュシカが自分の予想のはるか上を行ったからだ。
バルトは実は意地悪な依頼をしていた。あえて『討伐』してほしいと言ったのだ。反乱軍と言え国民である。無下に討伐しに行くのなら、器が知れるというものである。だから、魔王の手のものと疑われても断って欲しかった。
全く魔王の手のものと疑っていないからあえてした意地悪な質問だったのである。そして、断ったうえで、バルトは反乱を未然に防ぎ国を救うことを改めてお願いしたかった。
しかし、リュシカの答えは全く別であった。自身の保身など考えず、王を叱ったのである。それは中々できることではない。その勇気はまさに勇者であり、正しい人間の姿に見えた。
その辺、自分はというと王を止めることは出来ず、裏で暗躍して国民の被害を減らすことしか出来ていなかったのである。バルトは自分を恥じた。
そして遂に、勘違いがここに極まりこんな男に仕えたいと思うようになっていた。
ないものをどう感じ取ったか分からないが、バルトはリュシカに王の器を感じていたのだ。
「もう良い。役に立たない勇者なら殺してしまえ」
王は反乱軍をどうにかして欲しかったが、ついに堪忍袋が切れていた。王はリュシカを殺すように命じる。
「えっ」
リュシカは、そんな言葉を漏らす。
リュシカには無礼なことを言ったと言う自覚すらなかったのである。
リュシカの前に、側近が守るように立つ。
しかし、兵士は誰1人動こうとしなかった。人間たちは、王を除いて皆、バルトがどうするのか見ていた。
「あの……」
しかし、一番早く口を開いたのはリュシカであった。
側近はリュシカの顔を見て嫌な予感がした。その顔は碌でもないことを思い付いた顔であると知っていたからである。
「王様、勘違いしないでくださいよ。私は一般論を言っただけで、行かないとはいってないでしょ。反乱軍の問題は、この勇者リュシカが解決してあげますよ。大船に乗ったつもりで待っててください」
そう言って、リュシカは高らかに笑った。
側近は『大船』の部分にツッコミをいれたかった。お前は『泥船』だと言ってやりたかった。
バルトはリュシカの真意について考えた。何か考えがあると思っていた。勇者が王にビビって討伐に行くとは思えなかった。そこで気づく、『討伐』から自然な流れで『問題解決』にすり替えていたことを……もちろん言葉の綾であり、リュシカに深い考えなど何もない。
すっかり、バルトもリュシカに振り回されていた。
「勇者様、カッコイイです」
リーア姫は、そう呟いた。
そう思う人間は意外に多く、リュシカの噂は国中に広がり、ファンがどんどん増え始めようとしていた。
反乱軍のアジト。
それは、王国の第2都市にあった。裏切りの騎士からその情報をバルトは得ている。
反乱の火種はかなり前からあったが、あの優しい姫の代になれば国はまともになると考えた国民たちは、その炎を燃え上がらせることなく耐えていた。
しかし、勇者が死に、王は何を血迷ったが先陣切って魔王軍と戦うと、王たちの会議で言ってしまったため、ついに怒りの臨界点を超え、水面下で存在していたその集団は、表にでてこようとしていた。
その第一作戦が、姫の身柄を抑え人質にとり、王亡き後に新しい王として傀儡なっていただくことだったが、リュシカのせいでその計画は潰えていた。姫さえ押さえればバルトも手を出せないと計算していた。バルトもあの姫がいるから王国に仕えているのだ。全て上手くいくはずだったのだ。
リュシカはどこにいても迷惑をかける男である。ある意味魔王であった。
「馬鹿どもが」
姫の身柄を抑えるのに失敗したどころか、敵に情報を流した部下たちに、反乱軍のリーダーは怒りを覚えて、幹部たちの目をきにすることなく机を叩いた。
「バルト……そして勇者」
計画がばれ、この2人を真正面から相手しなければならないことに、反乱軍のリーダーは頭を抱えた。王が無能なため王の城の中には、間者が大量にいるのだ。城の中での出来事はリアルタイムで伝わっていた。大魔導士で魔法に精通している反乱軍のリーダーには、それだけの魔法が使えたのである。しかし、勇者を相手にするのはきつかった。
そして、その勇者の出現に組織の根幹が崩れようともしていた。勇者の出現に反乱軍から抜けるものが出てきたのである。
「何てやつだ」
現れてたった1日で、多大な影響を与えたのだ。魔王よりも憎い。そんな風に反乱軍のリーダーは思っていた。
姫さえ押さえることが出来ればこの国は平和になったはずなので、八つ当たりのようで的を得ていた。
「リード様、どうされますか?間者の報告では、このアジトの場所は既に王国にばれ、勇者がただちにこちらに向かってくるとのことですが?」
反乱軍のリーダーであるリードは、若き副官に問われ、頭を抱えるのを止めて覚悟を決めて顔を上げた。
「俺は平和的に解決したかった。だが、それは既に無理な状況になってしまった。しかし、国を正すと言う我々の思いは変わらない。勇者がどのような人物であろうと、我々の国を正すと言う思いを踏みにじるようなら、殺す」
反乱軍のアジトは、今まさに対勇者で盛り上がっていた。
リュシカの部屋
そこには2つのベットが用意されていた。側近のためという理由で姫が新しい部屋をよういしたのだ。
その部屋で朝食を食べ終えたリュシカと側近が二人きりでいた。
「それで、どうするつもりなんです?」
側近がリュシカに質問する。
「私、良いこと考えたんだよね」
リュシカはニヤッと笑った。
側近は非常に嫌な予感がした。
「……何です?」
聞いて欲しそうだったのと、語り始めないので側近が質問してあげる。
「良くぞ聞いてくれた」
うざいなと思いながら、側近はリュシカの言葉を待った。
「王を暗殺すれば良い思っていたけど、反乱軍を利用すればこの国を労せず亡ぼせることに気付いたんだ。人間どもに醜くも美しい内乱を起こしてもらい、この国を亡ぼす。何でもこの国は真っ先に魔王軍と戦う予定の国だったというじゃないか、そんな国を滅ぼしたとあっては私の株はうなぎ登りだ」
リュシカは高らかに笑った。魔王軍と先陣切って戦うと言う話は、服を奪おうとしたメイドから教えてもらっていた。
「どうやって反乱軍を利用するんです?」
「決まっている、私がリーダーになって先陣を切る。そして、反乱軍と王国軍のバランスを取って、上手い事共倒れを狙うんだ」
まともな作戦で、側近は驚いていた。どうやって反乱軍のリーダーになるのかとか、バランスのとり方など、色々と詰めないといけない部分もあるが、リュシカの作戦にしては真っ当に思えた。
何より、リュシカの言葉には妙な説得力があるのだ。それは魔王としての唯一の長所だと側近は思っていた。
無理だと凡庸なものなら思うことも、この魔王はごり押しでやってのける。実際無理だと思っていた勇者に成り代わったし、誰も倒せなかった勇者を討ち取った男である。側近もだいぶリュシカに染まってしまい、正しい判断が出来なくなっていた。
立場や功績や生まれ持った整った容姿、それに無駄にある自信が合わされば、仮に偽物だったとしても、カリスマを形成させるには十分だった。
ガバガバな作戦で国を滅ぼしに来たリュシカ達であったが、少しだけまともな計画を持って、反乱軍のアジトに向かうのであった。
当初の作戦であった王の暗殺は、食事のおかげで魔力が回復した側近がいるので、出来るようになっていたが、リュシカも側近もそのことに気付いていなかった。
何も疑問を持たず、魔力を取り戻した側近の背中に乗って、リュシカは再び空を行く。