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記憶を無くした空の騎士姫と太陽王子  作者: 桜月雪


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24.目指すものの為に

お読みくださり有難うございます。


「あー隊長!今日は休暇なんですからちゃんと休んでくださいよ!」

「話があるんだよ」


 もう何度目になるのか分からないこのやり取りを続け、ヤナギは半ばうんざりしていた。


「休暇を取らない隊長が悪いと思いますよ」


 ゼラがしれっと苦情を被せてくる。

 ヤナギの隊は、他の隊と決定的に違うところいくつかあり戦闘スタイルはさておき、一つが休暇についてだ。

 基本的には3交代制でとっており中でも隊長クラスは日中間で交代制なのだが、ヤナギの隊はヤナギが主君であるユリオの休暇に合わせている為、その時に限り隊長以外の隊員は全員、日中から夜間にかけて一日出勤である。そのため前日の夜間と早朝はヤナギが一人で警備している。また部隊訓練など全員が集まる時の早朝と夜間はヤナギが一人で警備する。これはヤナギが部隊全員の戦力より上であるから成しえることであり、部下を全面的に信頼しているからなのだが、時にその部下を掻い潜ってふらりと出かけることもあるユリオに対応するためである。因みに部下たちは働きすぎている隊長に休んで欲しいのに中々休まない隊長をあの手この手で休ませようと画策しているので、冒頭のセリフがお決まりのように発せられるのである。


 しばらくして全員が集まり、ヤナギは長々と説明せず、ただ事案を言った。


「昨日入った情報だ。アルカイック殿がアイリスに接触した」


 それを聞いた途端、物騒な言葉を吐くもの数名――相手は公爵家嫡男である為、諫めるべきゼラまでもが苦虫を噛み潰したような顔をしている。その様子に「アイツうちの隊ではマジで嫌われているなぁ」とヤナギは苦笑するしかない。


「落ち着け、あいつを含めた保守派が改革派にいるフドル家を取り込みたいのは元々分かっていたことだ。それでなくともあいつは、フドル家いやノース殿に異常な執着見せているかなぁ」

「同じ公爵家で次期当主候補同士ですしね。隊長私が知っている限りアルカイック家は長男以外は、中立派ではありませんでしたか?」

「あぁ〜それはだなぁポール殿曰くあいつより弟の方が出来が、良いんだとよ。実力主義だからあの家」


 焦っているところを保守派に付け込まれたという事である。


「話は戻すが、アイリスを保守派の餌にする。本人には許可を取ったが、どちらにせよこちらから数名つけろと殿下に言われた。あと何かあったら双子がうるさい」


 後半部分が本音なのでは?と皆思ったが口には出さなかった。


「「「隊長私たちがアイリス様の護衛に就きたいです」」」


 声をそろえて手を上げたのは、女性隊員たちだ。だが彼女らの表情を見たヤナギが眉を寄せ言った。


「なぜ嬉しそうにしている。任務なのだが」

「青の姫騎士様と仲良くなれて、嫌な虫達の鼻を折れるのですよ!やるに決まってます!」

「殿下の側近と近衛隊で同性なら一緒に行動していても怪しまれることはありませんし、交流を取っているといえば此方の勝ちです」

「分かった。ゼラそれで編成を組み直してくれ、夜には城に戻っているからその時にでも「明日の朝に渡しますね」」


 ゼラは満面の笑みでヤナギの言葉を遮った。笑顔に圧が込められている。


「……」

「今日隊長は休暇なので明日に編成と本日の報告書まとめて渡します」

「分かったからその顔やめろ。後アイリスも休暇は東から出ないから顔合わせするならそちらに行けよ。じゃ後よろしく」


 部屋を出ようとするヤナギに何人かがおやつをあげていた。これまたいつもの光景であり、しかもヤナギが好みそうな物ばかりで、美味しい物を食べて休んでくれと言うメッセージ込みである。


「さて屋敷に戻るか」


 渡された菓子を手に抱えたヤナギは、屋敷に向かって裏通路を歩いていった。



***



 同時刻――


 自身の執務用の椅子に座っている人物をみて深々とため息をつく、不敬にならないのはこれがもう何度目か分からないからである。


「ユリオ殿下。朝からどうされたのですか?今日は休暇では?」

「休暇だからこっちに来た。でないと誰かしらついてくるだろう?」


 護衛される立場なのにそのセリフは如何なものなんだと、机を陣取られているヒイラギは頭を抱えた。


「殿下立場をお分かりください。何かあってからでは遅いのですから」

「シュロと同じセリフを言うな」


 またふらふらとどこかへ行った同僚の名前を聞きヒイラギは眉をしかめた。とりあえず、自分の机から応接室に移動してもらい、レイスがお茶を入れて持ってきたので、ユリオに勧め本題に入ることにした。


「で、殿下は何をお聞きになりたいのですか?」

「昨日の訓練の時に、ヒイラギが戦時に他国の軍を研究していたって聞いたから色々そのあたりを聞こうと思って」

「知りたいのは、各国の軍事状況ですか?」

「それもあるが、どの様な統治体制をしいているのとか……あと純粋にヒイラギが何故それを優先的に調べたのか知りたい。本に書かれている内容だけだと、その国ついて理解出来るとは思わないし、個人の主観でいい、色々な人の話を聞きたいんだ」

「少しお待ち下さい。当時つけていた記録を見ながらの方が良いですから」


 ヒイラギは自身の執務机の奥の本棚から数冊取り出していると、部下兼同僚の1人が応接室を見やりながら言った。


「ヒイラギ隊長。殿下はどうされたので?」

「各国の事について知りたいそうだ。後でお前達にも聞くと言っていたから準備しておいた方がいい」

「「「え……」」」


 バタバタと机を漁りはじめる面々に苦笑しながら、ユリオの待つ応接室へと戻った。


「では、まず私がこれを調べた理由ですが、簡単に言うと指揮官の考えが知りたかったとでも言いましょうか」

「指揮官の考え方か……」

「えぇ、国の在り方は王が指針となりますが、軍の統制や実戦での指揮はその軍の指揮官になります。王が直接指揮をとる国もありますが、ごく僅かですからね。大国なら軍の数もまた多い、少数部隊ごとの指揮の在り方や全体的な統制の仕方で違った側面での国の形が見えてくるものです」

「なるほど」


 ヒイラギはそこで一度言葉を区切り、ユリオを見た。


「殿下はこの国をどのような国にしたいと思われますか?」

「このエテに住む国民が皆心から笑い暮らせる国したい。貴族でも平民でも身分関係なく支え合える国を目指したいんだ。ただ今の俺にはまだまだ大き過ぎる夢だから今は目の前にいる者達から守っていきたいと思っている……って言ってもまだ助けられてばかりだがな」

「(すぐに答えるあたり指針は決まっているが、自身がどう動くのかに迷っているという事か……)」


 ヒイラギは、若い頃の自分と今目の前にいるユリオが重なって見えた。


「殿下、私が調べたのは先程述べたものあるのですが、もう1つ私自身が、出来ることを模索したかったのですよ」

「出来ることを模索するのに他国を調べるのか?」

「私は、父やシュロのように力でねじ伏せるのは苦手でしてね。終わりが見えぬ戦いの中、今日は味方でも明日は敵になるかもしれない。そんな状況下にずっとありました……その時ふと考えたのです。もし私が敵ならどうやってこの国を落とすのかと」


 ケイジュとシュロの強さは圧倒的だった。

 だが、何処かに必ず隙は出来てしまう。それが自軍からなのか同盟国からなのかは分からない。


「ヒイラギは、その隙を知る為に他国を調べ……敵国や同盟国の指揮官の考え方が分かれば、相手の行動を予測出来る」

「そうです。まぁ自国を落とす方法を考えるのは結構疲れましたが、先頭をきる父やシュロでも全方位は難しいですからね。何処に誰をどれだけの人数置くのか、時には同盟国をどのように動かすかとか調べながら考えていると、気がついたら気配を消せるようにまでなっていましたよ」


 それはかなり特殊な例なのでは?とユリオは思ったが、ヒイラギが言いたいのは、出来ることからやればいいの一言に尽きる。ユリオ自身が納得のいくやり方を模索しろと言っている。


「ヒイラギは、やはりヤナギの父親だな」

「息子がどうかしましたか?」

「努力家だと言うことだ。よしヒイラギとりあえず、まずは、同盟国のから始めよう頼む……あとこれは教えてもらう礼だ」


 そう言って渡された紙に書かれた内容をみて、ヒイラギは動揺を抑えつつユリオを見た。


「殿下これはどこで……」

「散歩してたらたまたま耳に入ったんだ。ヒイラギに、渡した方が良いと思って」


 口調は先ほどと変わらないが、その顔は統べるもの特有の顔である。


「殿下は、ますます先王や王妃様に似てきましたよ……」


 頼み事をする時のやり方がそっくりなのだ。当のユリオは、ふと思案顔になり言った。


「そういえば、父上に似ているとあまり言われたことが無いな。昔の父上ってどんな人だった?」

「陛下は、今も昔もあまり変わってはおられませんよ。普段は物静かな方ですし、息抜きに面白い事案を見たり聞いたりするくらいですかね。どちらかと言うとスノード殿下と王妃様の方が突発的な行動力を持っているので、陛下が振り回されていましたかね」

「母上はともかく叔父上は、静かなイメージしかないな」


 甥たちの前では落ち着いた大人に見えるのだろうが、ヒイラギからすれば、今も割と変わっていない。

 

「殿下達の前では、大人ぶりたいのですよ。私の知っているスノード殿下は、タルロに小言を言われて、逃げているような方ですし」


 想像したのか可笑しそうにユリオは笑う


「自分の視点だけでは分からないことは多いな」

「確かにそうですね。完璧に客観視出来る人などいませんよ。陛下でも我々の意見を聞いてから決断しているのです。殿下もこれからですよ」

「皆んなを頼れとこの間言われたが、俺はずっと頼ってばかりだ。今の俺では、ヤナギ達の抱えているものすら一緒に背負ってやれないから」


 ユリオの言葉にヒイラギは、いつだったかヤナギが『父さん知ってる?殿下って心が真っ直ぐな上に、人タラシなんだよ。この人に仕えたいって本気で思わせてくれる』と言っていたのを思い出す。


「殿下。息子も含め人は誰しも道を選ぶんです。息子はユリオ・ソレイユ殿下、貴方に仕えたいと貴方のそばにいる事を望みました。それは、見返りを求める為ではありませんよ」

「そうだったな。すまない色々脱線してしまったな」

「悩むことも成長には必要です。では殿下、始めましょうか」

「あぁ頼む。ヒイラギ殿」


 ユリオとシオンが似ているのは、目に見える部分ではないのだろうとヒイラギは感じた。


「(皆が心から笑える国か……先は明るいですよシオン陛下)」





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