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新世界の神話黙示録  作者: 白樹クロト
第1章 血塗れの淫魔編
3/5

入学式が終わり、昼間の儀式へ

 帰り道、俺たち3人はなんて事ない話をしながら歩いて、エリナと途中の道で別れ俺と小陽菜の2人で歩いていた。


「フウ君お昼なに食べたい?何か食べたい物があれば作るけど?」

「ん〜、そうだな、お好み焼きが良いな。なんか今日はそんな気分だ」


 俺はなんとなくお好み焼きが食べたい気分だったので小陽菜に返事した。現在時刻は午前11:45分、丁度お昼頃だったのでお腹が減っていた。


「お好み焼きかぁ、良いねぇ!作るのも簡単だし美味しいし。じゃあお昼はお好み焼きだね!フウ君、お好み焼きの材料買いたいから商店街寄って良い?」

「ああ、俺も手伝うよ。荷物持ちくらい俺に任せろ」

「うん、ありがとうフウ君!」


 俺たちはお好み焼きの材料を買うために商店街に行くことになった。

商店街はここから少し離れた所にあるのでさほど遠くなく、歩いて7分くらいで着いた。商店街は俺や小陽菜がよく買いに来る場所で、今では商店街の人たちとも顔なじみである。


「最初に買うのは野菜からだね。フウ君早く行こ〜」

「ああ、分かったからそんなに急かすなよ」

小陽菜は俺を急かすように俺の手を握ると、くいくいと引いてきた。そしてそうこうしてるうちに八百屋の前まで着いた。そこには小さい頃から知ってる八百屋の店主のおっさんがいた。おっさんは俺たちを見つけるとニカッ!と人の良い笑顔を見せた。


「おう!フウライの坊主に小陽菜の嬢ちゃんじゃねぇか!らっしゃい!平日のこんな時間に珍しいな?」

「ようおっさん、相変わらず元気だな〜。俺たち今日は入学式で午前に終わったからな、昼飯を買いに来たんだよ」

「おじさんこんにちは〜。野菜を買いに来ました〜」

 俺はおっさんに入学式のことを言い、小陽菜は挨拶をした後、野菜を買いに来た(・・・・・・・・)と言った瞬間、おっさんの雰囲気が変わった。……ああ、いつものやつか。


「小陽菜の嬢ちゃん、今()()()()()()()()と、言ったのか?」

「はい、野菜を買いに来ました〜」

「そうか、なら、分かってんだろうな?フウライの坊主?」

「ああ、勿論だ。いつでもいけるぞ、おっさん」

そう、これは俺とおっさんのいつも買い物の時にやるいわば儀式みたいなものだ。その内容は……


「ではこれより、恒例の損得ゲームを開催する!坊主が勝てば、野菜は全て無料!俺が勝てば坊主達が払う代金は十倍払い!勝てば天国!負ければ地獄!さあ俺たちの聖戦(ゲーム)を始めよう!」


 と言うものである。このゲームはいつから始まったかは忘れてしまったが、恐らく10年くらい前からやってたと思う。俺たちがこの店で買い物をする度にやっている儀式で、この商店街ではひとつの名物になっていたりする。


「さあ始まりました損得ゲーム!今日も元気に解説して行こうと思います!司会は毎度おなじみ精肉店の店主のわたし林と、毎度おなじみゲストの小陽菜ちゃんでお送りします」

「こんにちは〜、ゲストの間宮小陽菜です。今日も元気にフウ君を応援したいと思います」


 いつの間に集まったのか商店街の人たちが集まり、毎度司会をしている林のおっさんが既に司会をしていた。

(小陽菜、毎回思っているが、ゲストが個人を応援して良いのかよ……)


「それでは損得ゲームの今回のお題を発表致します!お題は、ジャンケン三回勝負ーーーー!」


 ジャンケン。それは実は単純な様で奥が深いゲームだ。一件普通のジャンケンに見えるが、俺たちのやるジャンケンは他とは少し違うところがある。それは、魔法の使用による魔法ジャンケンだ。


「では、もう何回も言ったことがあると思いますが、司会なので、ルールを説明させて頂きます。このジャンケンは他のジャンケンと違い魔法の使用が出来ます。使用制限は三回で、使用可能な魔法系統は属性魔法と個人魔法です。ただし、相手に魔法による攻撃の発動および相手に直接攻撃、殴る蹴るなどは禁止です。勿論普通のジャンケンのルールも適応するのでお忘れなく、あくまで魔法はジャンケンの補助が目的です。以上で説明を終わります。それでは選手の準備できた様なのでそろそろ始めたいと思います」


 司会の林のおっさんが説明をしている間に俺と八百屋のおっさんはお互いに正面を向き合って火花を散らしていた。いつ始まっても良い様に。そしてその時は来た。


「おっさん、今日も俺が勝って野菜を頂く。勝ちは譲らないぜ!」

「面白い!坊主、この俺から可愛い野菜達を奪えるもんなら奪ってみろ!」

「それでは只今より魔法ジャンケン三回勝負、試合開始ーーーー!!」


 ワアアアァァァァァと言う商店街の人たちの歓声が上がるとともに、試合は開始された。


(さて、ジャンケンはなんといっても出だしが大事だ。先手を取った方が圧倒的に有利だ。精神的余裕も出でくるからな)


 俺はおっさんが魔法を使うのか使わないかは、魔力を感知すれば分かるので発動のタイミングは分かるが、問題は最初に使う魔法が何なのかが重要だ。俺は慎重におっさんを観察するがそれはおっさんも同じだろう。なので……。


「おっさん、あえて言おう。俺はパーを出す。そして、俺は最初は魔法を使わない!」

「!?。坊主、おめぇ……」

「おおっと!これはフウライ選手、何とパーを出す宣言からの魔法を使わない宣言だぁぁ!!開始早々からとんでも宣言を放ちました!ゲストの小陽菜ちゃん、これはもしかしなくても彼は心理戦を誘ってるんでしょうか!?」

「恐らくそうではないかと〜、フウ君こういう戦法はよく使うからなぁ。まぁでも、フウ君のこういうところも凄いところだと思います。フウ君〜頑張れ〜!」

(小陽菜、だから毎回毎回ゲストなのに個人を応援して良いのかよ……。だがこれでおっさんの動揺を少しは揺さぶれただろう。さあ、おっさんはどう出る?)


 俺はおっさんの顔をうかがう、おっさんは俺に対して不敵な笑みを浮かべていた。


「坊主、いいのか?自分の出す手札を晒し、更には魔法を使わない宣言をしちまってよぉ?」

「ああ、問題ない。別に魔法が有りだからって魔法で対抗するのが正解なわけじゃない。やり方次第でどうとでもなるさ。それよりもおっさんどうしたんだ?少し動揺してる様に見えるが?」

「へっ!言ってくれるじゃねえかよ坊主、その減らず口先手を頂いて黙らせてやるぜ!」

(坊主の野郎、開始早々から俺の苦手な心理戦に持ち込むなんてやるじゃねぇか!だが、坊主は本当にパーを出すのか?実は裏をかいてグーを出してきたら、いやしかし坊主の事だ俺の動揺を誘ってチョキを出さないようにしているのでは?こんな観客の連中が大勢いるのに嘘を言える様な事……。いや、分からん。坊主ならやりかねないな。だが!俺はあえてグーを出す!坊主なら勝負で周りを余り気にしないからパーではなくチョキを出しかねない。一番安全な策としては俺もパーを出せば良いが、男ならここは堂々と覚悟を決めて一発勝負だろ!)


 と、思っているのだろな。おっさんの表情は物凄くわかりやすかった。まるでポーカーフェイスの概念を知らないみたいだ。ちなみに俺はパーを出す。宣言通りに魔法も使わない。そして俺は宣言した後からずっとポーカーフェイスモードだ。


「準備はいいかよ?おっさん」

「おうよ!いつでもいけるぜ坊主!」

(悪いな坊主、先手は頂くぜ!)

「んじゃ、行くぜ」

(さあて、おっさんは何の魔法を使うのやら)


 俺とおっさんは互いに拳を構えて合図をした。そして……。


「「最初はグー、ジャンケン、『食らいやがれ!フラッシュ!』『させるか!キャンセル!』ポン!」」


 おっさんはポンと言う前に、技能魔法の初級に位置するフラッシュを繰り出した。そして俺はおっさんの発動と同時にフラッシュの魔法を逆演算してキャンセルした。そしてお互いが出した手は……。


「俺は宣言通りにパーで、おっさんはどうやらグーだな。と言う事で先手は俺の勝ちだな」

「坊主!テメェ魔法は使わないんじゃねぇのかよ!なんだよキャンセルってよ!どう言う事だよ!」

「ああっと!なんとフウライ選手、宣言通りにパーで八百屋の銅羅言(どらごん)選手をジャンケンで負かしたぁーーーー!!しかしフウライ選手のキャンセルはどう言う事でしょう?あれは魔法なのでしょうか?ゲストの小陽菜ちゃん、これはどうなんでしょうか?」

「はーい、えっとですねさっきフウ君が使ったキャンセルは実は魔法ではないんですよ〜。詳しくは余り聞いてないんですけど、なんかフウ君が言うには『このキャンセルは相手が魔法を発動するとき、相手は必ず魔力を使う。そして魔法とは魔力と術式、そして詠唱の三要素が必要だ。まぁ、最後の詠唱は、高位の魔導師になるにつれて無詠唱になってくるからから何とも言えないが、だが共通して魔力と術式はどんな魔法にも必要だ。だから魔力の感知と発動する魔法の術式を解析出来れば、発動する魔法をキャンセルできる。それにこれは魔法じゃないしな。だって俺は相手の魔法術式を解析してその魔法を逆演算で相殺するだけだ。それに俺は自分の魔力を使ってないしな。使っているのは魔法を発動しようとする相手の魔力と、相手の発動しようとする魔法の魔法術式、それらを俺が相手の魔力を利用して魔法術式へ干渉し、発動するタイミングで俺がその魔法術式をキャンセルする。俺はこれを魔法妨害(マジックハック)と呼んでいる』だったと思います〜。私はよく分からなかったけど、とにかく魔法ではないらしいです。でもフウ君よく魔法のキャンセルなんて考えるよねぇ、やっぱり凄いなぁ。フウ君〜!一勝おめでとう〜!この調子で頑張って〜!」


 小陽菜の説明の通り、俺は相手の魔力と術式を解析して発動する魔法をキャンセルしたのだ。簡単そうに見えるがこの技術はとんでもなく難しい。まず相手の発動する魔法は、相手が魔力を使い術式に魔力を注ぐ、そしてこれは人によってだが詠唱したり無詠唱だったりなのでばらけるが、詠唱だった場合は詠唱によってどの魔法が発動するか凄く分かりやすく、タイムラグがあるため詠唱の途中でキャンセル出来るが、無詠唱だった場合は相手が魔力を使い術式に魔力を注ぎそして発動の流れなのでとてもやりづらい。キャンセルのタイミングは相手が魔力を術式に注いでいるその間に術式の解析、そして発動のタイミングで逆演算し、魔法を相殺する。まぁ、普通の人は無詠唱が出来ても一瞬で術式に魔力を注ぎ魔法を発動の流れには早々出来ないので、おっさんなんかは普通の人なので割とやり易かったが、これが高位の魔導師だった場合はそう簡単にはキャンセル出来ないだろうな。それに俺の魔法キャンセルは発動する瞬間ならキャンセル出来るが、既に発動された魔法まではキャンセル出来ない。俺のキャンセルもとい魔法妨害(マジックハック)は万能だが全能ではないのだから。


「なんとフウライ選手は本当に魔法を使わずに一勝してしまったようだーーーー!!毎度思いますが、商店街名物にしては物凄くその範囲を超えている気がします!!お陰で今日も商店街は人通りも多くとてもおいしいです!!フウライ選手いつもありがとう!!」


(林のおっさん、本音が駄々漏れだな……。まぁとりあえずは一勝か。あと二勝勝たないとな。油断は禁物だが、この調子で勝っていこう。早く昼飯食いたいしな、あ〜、腹減った)


「へっ、まさか本当に宣言通りパーで魔法を使わずに勝っちまいやがるとは、恐れ入ったぜ坊主!だがなぁ、次からはそうは行かないぜ。坊主が魔法をキャンセルするのは分かったんだ。なら次からはそれも考慮して勝負すれば良いだけの話だ」

「まぁ、普通はそう考えるよな。だけどおっさんは忘れているようだが、俺、自分の魔法使えるんだが?」

「あっ」

「……」

「「……」」


 おっさんの「あっ」の後の俺とおっさんの沈黙。何だろう、この空気。なんか周りも心なしか静かになった気がする。


「……えーっと、このジャンケン、魔法無しに変更しとく?」

「……お願いします」

「……えー、というわけで、この勝負普通のジャンケンに変更致しましたーーーー!!今更ですね!!」

「フウ君、この空気に耐えられなかったんだね。でも仕方ないよね?一人だけ魔法が使えてもなんか居た堪れないしね?フウ君は優しいからね、だから落ち込まないでね?フウ君」


 沈黙の後なんか凄く居た堪れなくて、魔法無し提案をした結果普通のジャンケンになった。林のおっさんの言う通りホント今更だな。そして小陽菜、頼むから俺の心を読まないでくれ。なんか申し訳なくなる。


「んじゃ、気を取り直して、やるか?おっさん」

「お、おう。なんか、悪いな。坊主」

「いや、謝らないでくれおっさん。なんか俺の方が辛くなってくるから……」

「坊主……」


 再び俺とおっさんの沈黙。もうやだこの空気。林のおっさん、小陽菜、なんとかしてくれ。


「フウライ選手!銅羅言選手!いい加減早くジャンケンして下さい!!?あんたらの見つめあってるシーンなんて誰も見たくありませんから!!誰得ですか!?」

「フウ君〜。早く勝負して早く勝って早くお昼食べようよ〜。お腹減ったよ〜」


 俺の心の叫びが聞こえたのか、俺とおっさんの空気を壊してくれた。よしっ!早く勝負して早く勝って早く昼飯を食べよう!俺もいい加減腹減ったからな。


「それじゃ、今度こそ行くぜおっさん」

「おうよ!行くぜ坊主!」

「「最初はグー、ジャンケン、(グー)(チョキ)ポン!!」」


「っしゃあああぁぁぁぁ!!!また俺の勝ちだぜおっさん!!」

「クッソオオォォォ!!?またかよ!?今日はついてねぇぜ!?」

「フウライ選手またしても勝利しましたーーーー!!フウライ選手、あと一勝で銅羅言選手に勝利します!対して銅羅言選手はと言うと、もう後がなーーーい!!この崖っぷちを乗り切る事は出来るのだろうか!?ゲストの小陽菜ちゃんはどう思いますか?」

「そうですねぇ。フウ君凄いですね〜、この調子で後一勝頑張って欲しいです!フウ君〜、後一勝だよ〜!!頑張って〜!」

「はい!小陽菜ちゃんは相変わらずのフウライ選手推しですね!分かります!それでは次で最後か!?それとも続くか!?3回目のジャンケン開始したいと思います!両者準備はよろしいでしょうか!?」


(林のおっさん、小陽菜のコメントに対して完全にスルーだな。そして小陽菜、応援は嬉しいが普通に恥ずいから、せめて心の中だけで頼む!マジで!っと、とにかく後一勝すれば野菜が無料だ!俺にとっては最後の勝負だ、勝ってやるよおっさん!)

(後一勝で坊主が勝っちまう。もう後がねぇ!何とか勝たねば!それにしても坊主は羨ましいぜ嬢ちゃんみたいな可愛い子に応援して貰えてよ〜。俺なんか応援してくれるのなんて商店街の爺さん婆さんくらいだぜ……)


「フウ坊頑張れーーーー!」

「フウライちゃん後一勝よ〜!」

「フウライの兄貴ーーーー!漢を見せてくれーーーー!!」

「おにいちゃん頑張れーー!」

「勝てーーーー銅羅言!商店街の意地見せてやれー!!」

「銅羅言!テメェ、負けんじゃねぇぞ!?」

「銅羅言ーーーー!!お前三敗したら分かってんだろうな!?」

「あんた!また変な賭けをして!負けたらどうするんだい!?」


(おっさん……。あんた商店街の人たちから応援と呼ばれるような言葉を言って貰えないとか、悲しすぎるだろ。しかも最後の八百屋のおばさんじゃねぇかよ。また言い忘れたのかよ。って言うか、俺の応援をしてる人はいろいろいるな。つーか兄貴ってなんだよ?最後のおにいちゃんはなんとなくわかるけど)


 そうこうしているうちに、俺もおっさんも勝負の準備は整った。


「悪いなおっさん。最後の一勝頂くぜ。俺と小陽菜の昼飯のためにな!」

「坊主、悪いが昼飯はまだお預けだぜ。何故なら今回は俺が勝つからだ!それにあいつにまた賭け事で怒られたくねぇしな。まぁ、勝てばいいんだよ!勝てば!」

「あんた!聞こえてるからね!勝負に勝ってもあたしゃの機嫌は安くないよ!」

「わ、悪かったって!でもよぉ〜、仕方ねぇだろ?坊主達が来るとつい、ね?」

「つい、ね?、じゃないわよ!?それで困るのは私なんだからね!?分かってのかい!?」

「うっ、す、すまん……」

「おっさん、頼むから夫婦喧嘩は別の時にやってくれ。まるで俺が悪者みたいじゃないか」

「ごめんねぇフウライちゃん、主人がいつも変な賭けをして〜、迷惑してないかしら?」

「いやそんなことはないですよ。俺もおっさんの賭けに悪ノリしてますし、迷惑はしてないので大丈夫ですよおばさん。寧ろなんかすいません。俺も悪ノリして」

「あらっ!良いのよ〜フウライちゃん。わたしもフウライちゃん達が来てくれると嬉しいもの〜。フウライちゃん達は小さい頃からこの店の常連なんだから主人もそれが嬉しくてつい賭けをしちゃってるんだから!主人はともかく、フウライちゃん達は気にしなくて良いからね〜。これからも主人の悪ノリに付き合ってあげてね〜?」

「あはは〜、はい。分かりました、これからもおっさんの悪ノリには乗らせてもらいます!なので出来ればおっさん事、ほどほどにしてあげて下さい」

「坊主……。ありがとうよ、俺の方持ってくれて」

「気にすんなよおっさん。それよりも早く始めようぜ?」

「おう!行くぜ坊主!」

「さぁ!いよいよ三回目のジャンケンが始まります!勝つのはフウライ選手か!?それとも銅羅言選手かーーーー!!?フウライ選手が勝てば野菜無料です!銅羅言選手が勝てば何とかフウライ選手の無料は一つ遠ざかる!では両者、拳を構えて下さい!!」


 俺とおっさんは拳を構えた。俺にとっては最後の一勝。おっさんにとっては崖っぷちからの離脱。だが悪いが昼飯を食いたいからこの勝負で終わらせる!


「「行くぞ!最初はグー、ジャンケン、(グー)(チョキ)ポン!!!」


 お互いに出した手を見る。少しの沈黙、そして……。


「よっしゃあアアアァァァァァ!!!!勝ったどーーーーー!!!野菜無料だーーーー!!!!」

「クッソオオォォォ!!!完敗だーーーー!!何でだーーーー!!!!」

「終了ーーーー!!フウライ選手まさかの三連勝です!!!!そして銅羅言選手まさかの三連敗ーーーー!!銅羅言選手これは悔しいー!!そしてフウライ選手はホックホクです!!まさに損得ゲーム!!これこそが!商店街名物の損得ゲームです!!!!今日の商店街八百屋の勝者はフウライ選手です!!おめでとうございます!!」

「フウ君ーーーー!!やったね!これで野菜無料だよ〜!!流石フウ君は凄いね〜!おめでとう!フウ君!」

「それではこれにて損得ゲームを終了致します!皆さまご視聴ありがとうございました!!」

「やっと、やっと昼飯に近づいたぜ。それに野菜も無料だし今日はついてるな〜」


 林のおっさんはプロ野球の解説者顔負けのようなテンションで俺を持ち上げ、小陽菜は俺を祝福しながら俺の腕に抱きつきながら手を握る。当然小陽菜の身体の感触が制服越しで伝わる。特に胸の感触がよく分かる。小陽菜の胸は決して小さくなく、かといって大きい訳ではない。それに恐らく、生は流石に見た事はないが腕に触れているからこそなお分かる。小陽菜の胸は俗に言う美乳というやつだ。制服越しでも小陽菜の胸ははっきりと形が分かる。そして感触も悪くない、以上の事から小陽菜は美乳だ。ふむ、悪くない。役得だ。


「フウ君?なんか鼻の下伸ばしていやらしい事考えてなかった?」

「そんな事はない。ただ俺は勝利の余韻に浸っていただけだ。決してやましい事は考えていないぞ?それよりも早く野菜を貰おうぜ?いい加減腹減った。早くお好み焼きが食いたい」

「うん、そうだね!早くおじさんから野菜を貰お〜!」


 俺は小陽菜に悟られないように野菜の方へ話題を変えた。それに早くお好み焼きが食いたいのは嘘じゃない、本当だ。……本当だぞ?


「負けたぜ坊主、完敗だ。清々しいほどの完敗だぜ、ハハ……」

「おっさん、悪いが約束通り野菜は貰うぜ。安心しろよおっさん別に無料だからって幾らでも貰っていくわけじゃない。これは俺たちの勝負の世界では暗黙のルールだろ?」

「まぁ、そうだよな。坊主がそんな事はしないのは昔から分かりきっているんだが、その、嬢ちゃんがな?分かるだろ?」

「ああ、安心しろ。小陽菜のブレーキはちゃんとかけるからさ」

「本当に頼むぞ?坊主?嬢ちゃん無料って言葉に昔から目がねぇんだからよ?」

「まぁ、努力はするよ。努力は……」

「坊主!?」

「フウ君〜、早く野菜貰おうよ〜!せっかく無料なんだから出来るだけ多く貰わないと!何から貰おうかな〜?どれくらい貰おうかな〜?フンフンフン〜♪」

「坊主……」

「努力はするよ……」


 こうして無事勝利を収めた俺は、小陽菜の無料テンションでおっさんの顔を青くするのを見て、小陽菜のブレーキをかける努力は出来るだけしようと思うのだった。ただし、出来たらだけど……。






 八百屋のおっさんの名前は銅羅言(どらごん)さんです。

 精肉店のおっさんは林さんです。

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