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新世界の神話黙示録  作者: 白樹クロト
第1章 血塗れの淫魔編
2/5

高校生活の始まり

もし読みにくかったら申し訳ありません!少しずつ改善していきたいと思います。あと、誤字があったらすみません。

 俺こと、水火土(みずかど)フウライ、年齢15歳身長167cm、体重55kg、誕生日7月7日生まれは、現在幼馴染みの小陽菜と一緒に今年から通う学校、『私立星天学園』に向かっていた。学校は徒歩15分で着く近場の学校だが、俺の寝坊のせいもあり、小陽菜とともに走っていた。


「もう!フウ君が寝坊したから、入学式早々走ることになっちゃったじゃない〜!」

「悪かったって!でも眠いのはどう足掻いたって仕方ないだろ!だって眠いんだから!寝たいんだから!」


 走りながら会話していて、正直疲れるが、休んでいたら遅れるので気にしない事にした。


「フウく〜ん、わたし疲れたよ〜!遅刻したくないけどもう走れないよ〜!」


 小陽菜は女子の平均的な体力と比べて、かなりある方だが、朝から走るのは流石にきついらしく、走るスピードが落ちていく。


「はぁ、仕方ねぇか。小陽菜、()()使うぞ?」

「本当に〜?やったー!フウ君ありがとう!」

「まあ、遅れそうになったのは完全に俺のせいだからな。普段は使わないようにしているが、仕方ない」


 俺の言う()()とは、簡単に言うと転移(ワープ)である。俺の『固有能力(ユニーク)』の()()()超無限転移(インフィニットワープ)は一度行った場所、または見たことがある場所なら制限なしにいつでも何処でも転移出来るのだ。ちなみに俺に触れていれば、何人でも一緒に転移出来る。そして俺は、この学校に試験や面接で来たことがあるので当然転移出来る。


「本当はあまり使いたくないんだけどな。目立ちたくないし。『固有能力(ユニーク)』自体宿る人間は珍しいのに、取り分け転移能力なんて周りが知ったら、注目するに決まってる。それに、目立ちつ理由が()()()()増えたくないしな。」


「確かに、フウ君中学でもすごかったもんねぇ」

「ほら、小陽菜。転移するから俺の手をしっかり握ってろよ?」


 俺は小陽菜に左手を差し出し、握るように指示する。


「うん!フウ君の手、ちゃんと握ってるね!」

小陽菜は元気よく返事をすると俺の左手を握った。


「それじゃ行くぞ、転移(ワープ)!」

叫んだと同時に俺たちは転移して、無事に学校の校門前まで転移した。


「小陽菜、着いたぞ」

「うん!なんとか学校には間に合って良かったねフウ君。やっぱり凄いね、フウ君の『固有能力(ユニーク)』」


 小陽菜は俺の手を離し、俺の『固有能力(ユニーク)』に改めて感心していた。幸いな事に、他の登校者は少なく、おそらく俺の『固有能力(ユニーク)』を見たものはいないだろう。


「ほら、早く行くぞ小陽菜。転移までしたのにグダグダしてて遅刻したら、流石にキツい」

「うん、早く行こう。新しい教室楽しみだなぁ」


 そう言って俺たちは校門に入り、下駄箱で靴を履き替え教室に向かった。




 教室に入るとすでに何組みかのグループが出来ていて、みんな楽しそうに会話している。俺たちが教室に入った事に気付いたクラスメイト達は、俺と小陽菜に違う意味で注目した。小陽菜に対しての注目はと言うと。


「うお、おい見ろよ。あの子超可愛くね?」「マジだ、すげー可愛い」「ヤベェ、このクラスレベル高くないか?」「あの子、名前なんて言うんだろ?」「わたし、あの子と友達になりたいなぁ」「綺麗な髪、シャンプー何使ってるんだろう」

などの小陽菜についての会話が聞こえきた。一方、俺はと言うと。


「おい、あいつって確か」「ああ、あいつだよ」「まさか、あの」「間違いないわ、彼は」「あの有名な」「「「「「『神話精霊契約者(エレメンタルマスター)』だ!!!!」」」」」


(ああ、またか。めんどくせぇ……)


 これが俺の注目されている理由の一つだ。そもそも『神話精霊契約者(エレメンタルマスター)』とはなにかと言うと、俺の二つ名である。二つ名の通り、俺は精霊と契約しているが、そもそも精霊と契約する事自体、かなり凄い事らしく、普通の人間でも精霊と契約出来ても、一体か二体かのランクの低い精霊が限度らしいが、俺が契約している精霊の数は三十九柱であり、更には俺の精霊たちは、全て神話級の力を持つ精霊なのだ。注目されない訳がない。


 そして、精霊にはいくつかのランクがあり、ランクに応じた強さがある。そのランクは以下の通りでーーー


 一番下のランクの精霊は、この世界や『精霊神界(アストラル)』に無数に存在する、まだ粒子状の精霊達の事を『微精霊(アストロ)』と呼び、ランクはEランクである。


 次に、『微精霊(アストロ)』達が無数に集まり、さまざまな大きさになった精霊を『集合精霊(アストロフロウ)』と呼び、ランクはDランクである。


 そして、初めから『微精霊(アストロ)』ではなく、小動物くらい大きさの精霊を『小精霊アストラ』と呼び、ランクはCランクである。


 次に、『小精霊(アストラ)』よりも一回り大きい、または知性がある精霊を『大精霊(メラート)』と呼び、ランクはBランクである。


 次に、『大精霊(メラート)』よりも知性があり、大きさも大小さまざまで、強力な精霊魔法を使う精霊を『高位精霊(ファントム)』と呼び、ランクはAランク。


 そして、『高位精霊(ファントム)』よりも知性に溢れ、強力な精霊魔法や『限定魔法(レガリア)』を使用出来る精霊を『最高位精霊(ファンタズム)』と呼び、ランクはSランクである。


 さらに、『最高位精霊(ファンタズム)』が進化、または何らかの理由で突然変異し、より強力な精霊魔法や『限定魔法(レガリア)』を使用し、『ファンタズム』よりも知性がある精霊を『王位精霊(エゴリアス)』と呼び、ランクはSSランク。


 最後に、どの精霊達よりも圧倒的な力を持ち、精霊魔法や『限定魔法(レガリア)』も、威力・効果が神話級の力を発揮し、人よりも魔法に関する知識があり、さらにはどの精霊達よりも高い知性があり、人と同じように性別がある、最強の精霊を『神話精霊(パラディオン)』と呼び、ランクはSSS。


 以上が精霊のランクであるが、俺が契約している精霊は三十九柱。しかもランクは、最高ランクの『神話精霊(パラディオン)』なので、みんな驚かない訳がない。ちなみに神話精霊(パラディオン)クラスの精霊を数える時、体では無く柱で数える。


(まあ、そりゃそうだよな。少しでも平穏な高校生活を期待した俺が馬鹿だったよ……)


 俺は気をとりなおし自分の席を探し、そして自分の席を見つけた。俺の席は一番後ろの窓際で、席に向かい荷物を置いて、暑かったのでブレザーを脱ぎ、Yしゃつの袖を巻き上げ、席に座ってため息を吐いていた。すると、一人の女子が俺に近づいて来た。


「おはよう、フウライ君。またフウライ君や小陽菜ちゃんと一緒のクラスになれて良かった〜。この学校でも改めてよろしくね」

「ああ、おはようエリナ。この学校でもよろしくな」

「おはようエリちゃん!エリちゃんとまた一緒で嬉しいな〜!これからもよろしくね!」


 俺と小陽菜と一緒に会話している彼女は、エリナ・スプラティア。彼女とは中学時代からの友人で、種族は「森人族(エルフ)」だが、人間と「エルフ」の間に生まれた「ハーフエルフ」だ。耳は、普通の「エルフ」と比べて長くないが、それでも、人よりも少し長い。

年は15歳で誕生日は10月20日。

髪色はプラチナブロンドで、髪型はストレートロング。

目は少し大きめだがキリッとしていて、瞳は碧眼の美少女だ。


「相変わらずフウライ君と小陽菜ちゃんは凄い注目されてるね。みんな二人のことを話してるよ」

とエリナは素直に感心しているらしいが。


「いや俺としては、別に好きで目立ってるわけではないんだけどな。めんどくさいし。俺は人よりも魔法や『限定魔法(レガリア)』や『固有能力(ユニーク)』が使えたり、精霊と複数契約しているだけの、どこにでもいる普通の人間なんだがな。あと追加で使い魔もいるが…」

「十分凄いと思うよ?普通の人間はSSSランクの精霊と複数契約出来ないし。『限定魔法(レガリア)』や『固有能力(ユニーク)』だって極限られた人しか使えないんだから。それにフウライ君それ()()でも有名だし」

「そうだよ!フウ君は凄いんだよ、自信持っていいと思うよ」


 二人はどうやら俺が自分の力に対して、落ち込んでいると思ったらしく励まそうとしているが。


「いや、俺が落ち込んでいる理由は力に対して不安なのではなく。目立ってしまった事に対して落ち込んでるのであって、つーかエリナだってかなり注目されているぞ?クラスにハーフエルフの美少女が来たって」

「え!?ほんとに?わたし、別に可愛くないと思うけど」

「そんな事ねぇよ、誰が見たってエリナは可愛いと思うぞ?俺はエリナこと可愛いと思うが?」


 俺は純粋にエリナを褒めると、エリナは顔を真っ赤にしてあわてふためいていた。何故だろう?


「そ、そんな!わ、わたし。別に、か、可愛くなんてないと思うけど///!」

「そんな事ないよ〜、エリちゃんは可愛いよ。綺麗だし髪サラサラだし。それにいい匂いするんだよ」


 そう言うと小陽菜はエリナの髪の匂いを嗅ぎ始めた。


「ひゃあっ!?ちょ、ちょっと小陽菜ちゃん!くすぐったいから匂い嗅がないで〜!それに恥ずかしいよ〜///!」

「クンクン、はぁ、やっぱりエリちゃんいい匂いする〜。なんかぁ、お花畑にいるみたいで、とっても落ち着く〜」


 小陽菜が幸せそうにエリナの髪の匂いを嗅いでいるが、エリナは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていて、俺と目が合うと助けを求めて来たので、仕方なく小陽菜を引き離す。


「小陽菜、そのくらいにしてやれ。エリナが恥ずかしさのあまり、半泣きになってるから」

「え?あ、ご、ごめんねエリちゃん!あまりにも気持ちが良かったら、つい」

「ぐすっ、うう〜。小陽菜ちゃんのばかぁ。凄く恥ずかしかったんだからぁ」


 エリナは小陽菜を引き離てもまだ半泣きになっていて、小陽菜はひたすら謝り続けていた。

(……何やってんだ、お前ら)


 すると教室のドアがガラッと開き、同時にチャイムが鳴った。ドアを開けたのは担任らしき女性の教員で、見た目は20代前半の美人教師だった。クラスメイト達は指定の席に着き、先生の号令とともに着席した。


「皆さん、おはようございます。今日から貴方達の担任となる、桜樹智香(さくらぎともか)です。皆さん、これからよろしくお願いします。」


 桜樹先生の第一印象は母性に溢れ、優しそうな性格で、職員や生徒達に好かれそうな印象の先生だ。


「では、改めてこの学校のカリキュラムについて説明いたしますね。学校説明会やパンフレットにも書かれている通り、この学校では、普通教育の他にスキルや魔法教育、『限定魔法(レガリア)』や『固有能力(ユニーク)』の教育などをメインに授業を行います。それに伴い、この学校に所属している限り、学校授業とは別に「冒険者」となり「クエスト」を受けてもらいます」


(ああ、そう言えば言ってたな。そんな事)

正直、冒険者やクエストの事は頭から抜けていた。俺は近場であるこの学校に通いたかったのと、もう一つの目的しか、頭に入ってなかったからだ。まぁでも、今後の為にも冒険者は色々と都合が良いので、ちょっと得した気分だ。


「冒険者とは皆さんもご存知の通り、15以上の年齢から登録して働ける職業の一つで、地域の社会貢献、アルバイトの様な内容、行方不明の人や動物などの捜索、あとは、魔物の討伐や捕獲、犯罪組織の監視や調査、治安組織と連携での討伐依頼などが、冒険者のクエストの内容です。

もちろん、クエスト報酬はあり、高難度のクエストであればあるほど、高い報酬が貰えます。

ですが、それらのクエストは直ぐには受けられません。それらのクエストを受けるためには、同ランククエストの特定回数達成、又は受注可能ランククエストの指定回数達成しなければなりません。また、Aランク以上のクエストを受けるためには、同ランククエストの特定回数達成、又は受注可能ランククエストの指定回数達成と実技試験に合格しなければなりません。

ちなみにランクは下から、F・E・D・C・B・A・S・SS・SSSランクの九段階まであります。それらのランクのことを『冒険者ランク』と呼びます。実技試験はそれぞれのランク担当の試験管と一対一でスキルや魔法、『限定魔法(レガリア)』、『固有能力(ユニーク)』を駆使して戦います」


(なかなか長いな先生の話。いつまで続くんだ?)

俺は先生の話が長すぎて、眠くなっていた。


「また、試験で不正をしない限り、試験で不合格になったとしてもランクが落ちる事はありません。また不正行為を行った場合はランクを強制的にFランクに降格します。

それから、入学したての皆さんは一番下のFランクに認定されています。又、昇格条件はーーー


FからEに上がるためにはFランククエスト20回達成。


EからDに上がるにはEランククエスト15回達成。又はFランククエスト30回達成。


DからCにはDランククエスト12回達成。又はDランク以下のクエストクリア40回達成。


CからBはCランククエスト10回達成。又はCランク以下のクエストクリア50回達成。


BからAはBランククエスト9回達成+実技試験で合格。又はBランク以下のクエストクリア60回達成+実技試験で合格。


AからSはAランククエスト7回達成+実技試験で合格。又はAランク以下のクエストクリア70回達成+実技試験で合格。


SからSSはSランククエスト5回達成+実技試験で合格。又はSランク以下のクエストクリア80回達成+実技試験で合格。


SSからSSSはSSランククエスト3回達成+実技試験で合格。又はSSランク以下のクエストクリア90回達成+実技試験で合格。


ーーーの以上がランクを上げるための方法です。

そして、冒険者の実技試験は1ヶ月に3回開かれます。開催日はランダムですが、一週間前には事前に報告いたしますのでご安心ください。それから実技試験は普通の学生成績には影響しませんが、クエストには影響するので気をつけて下さい。

それから、スキルや魔法、『限定魔法(レガリア)』、『固有能力(ユニーク)』については、学校側からには特に制限はしませんが、自己責任ですので、学校側は一切の責任を負いません。

あと、クラスは一つの学年で4クラスあり、一クラスあたり約37人ます。実技試験とは関係なく、たくさん友達を作って下さいね!」


(おっ、先生の長い話もやっと終わるのか?)

俺はやっと説明が終わったのかと思い、伸びをしようとしたその時。


「最後に、」

(まだあるのかよ!)

俺は全力で頭の中でツッコミを入れた。


「皆さんもご存知の通り、毎年この学校や、それぞれの学校で選ばれた、8名の代表生徒達がチームを組み、仲間と協力し、他校の生徒達とスキルや魔法、『限定魔法(レガリア)』、『固有能力(ユニーク)』で戦い、学校を勝利に導く祭典、『神話大祭典(ワールドフェスタ)』が開催されます。『神話大祭典(ワールドフェスタ)』で勝利した学校はその年の優勝校となり、学校側は勝利報酬と莫大な報奨金を授与されます。また生徒側も勝利報酬として、多額の報奨金をもらえる他、一人につき一回、何でも一つ願いを叶える事が出来ます」


(……まぁ、多くの生徒が説明しなくても分かるだろうな。大体の奴らが『神話大祭典(ワールドフェスタ)』に出るためにこの学校に来たようなもんだしな。それに、俺もその一人だしな。俺も、叶えたい願いがあるからな)

確かに学校自体は近場にしたが、それだけが理由ではなく、『神話大祭典(ワールドフェスタ)』に参加するためでもあったのだ。


「そして、『神話大祭典(ワールドフェスタ)』への参加条件は、毎週行われる『星天試練(スターバトル)』に参加して勝利し、スターポイントと呼ばれる物を獲得してランキングを上げて行き、スターポイントが多い上位64名が『 神話大戦祭典(ワールドフェスタ)』への参加資格を求め、新たな校内ランキング戦を行います。そして、その校内ランキング戦の事を『神話試練(ワールドバトル)』と言い、『神話大戦祭典(ワールドフェスタ)』が開催される1ヶ月前に開始し、最終日は『神話大祭典(ワールドフェスタ)』が開催される一週間前に終了します。

また、『神話試練(ワールドバトル)』はトーナメント制で行われます。そして、『神話試練(ワールドバトル)』で勝ち上がった上位8名が、この学校の代表生徒となります。それから、これも特に成績には影響しませんが、進路には大きく影響すると思うので、皆さんも是非参加してくださいね。

それでは皆さん、改めてよろしくお願いします。以上で説明を終わりますね。それじゃあ、皆さんの自己紹介をお願いしますね」


 先生の長い長い説明がやっと終わったと思ったら、ついに来てしまったか、自己紹介。

(長い説明が終わったと思いきや。参ったなぁ、俺あんまり得意じゃないんだが)


 俺は頭の中でなんて言えば良いのか、ひたすら悩み続けていだ。何を話せば良いのか?どうやったら普通に話せるか?そんな事を考えているうちに、ついに俺の番が来てしまった。


「は〜い、それでは次の人、どうぞ〜」

先生が優しい口調で、俺に向かって合図をした。

俺は意を決して席を立った。


「……あー、水火土フウライだ。まぁ、なんて言うか。これからよろしくな」


 ざわざわざわ。教室中がクラスメイト達の驚きの声で溢れた。桜樹先生は少し驚いた顔をして、「あの子が…」と呟いてるように見えた。


(……まぁ、そりゃそうだよなぁ。覚悟はしていたが、ここまで目立つことになるとは。はぁ、しんどいなぁ。帰りてぇ)


 俺は自己紹介を終え席に着くが、クラスメイトや先生がまだ俺に注目している。すると一人のクラスメイトの女子が俺に質問して来た。


「あの〜。水火土君って、あの水火土君?有名な」

「……まぁ、他に俺みたいな名前は他に聞かないし、恐らく俺で間違い無いと思うぞ?多分」


 ざわざわざわ。再び教室中がざわめいた。

すると今度は別の女子が俺に質問して来た。


「えっと、あの。水火土君が腕に巻き付けている、その包帯と、指ぬきグローブは、なんで付けてるの?」

「えっと、そうだな。簡単に言うと、俺の手と腕には精霊達との「契約刻印」が付いてるんだが、あまり他人に見られたくなくてな。だから指ぬきグローブや包帯で契約印を隠してるんだよ。それに、俺の契約印はかなり目立つからな。俺は目立つのが苦手なんだよ」


 契約印とは、使い魔や精霊と契約した証として、契約者は自身の身体に契約の印が刻まれる。その印のことを契約刻印と呼ぶのだ。ちなみに俺は両腕や両手に契約刻印が刻まれている。別に見られても不味いものではないが、見られるとかなり目立ってしまうので、こうして隠しているのだ。俺は決してイタイ人ではない、絶対に違う。


「そうなんだぁ、水火土君も大変なんだね」

質問をして来た女子は、何処か納得したらしく

席についた。すると、また別の女子が質問して来た。


「水火土君って、普段何やってるの?やっぱり毎日キツイ練習とかやってるの?」

「そうだなぁ。普段は自主トレもやるけど、読書や音楽を聴いたり、テレビを見たり、料理をしてるな。俺自体は、別にどこにでもいる普通の人と変わらない生活をしているから、出来ればみんなも普通に察して欲しい。まぁ、朝とか少し苦手だから、朝は料理しないけどな」


 俺が説明を終えると、クラスメイト達は俺に対してとても意外そうな顔をしていた。そして今度は男子が質問していた。


「はいはい〜!水火土君ってどんな自主トレやってるの?教えてくれよ」

「……えーっと。基本的には、大きい公園の周りを20周回ってるな。公園の周りの距離が確か3kmで、一周あたり3分のペースで走ってるから、60kmあたり一時間ぶっ通しで走ってるな。その後は俺のオリジナルのトレーニング法と、精霊とスキルや魔法、武術で戦って、その後は新しい技の開発や精度の判定とかをやってるな。合計で大体4時間くらい自主トレしてるな。それがどうした?」

「ま、マジかよ……。凄すぎだろ!?」

「そうか?この自主トレ内容は平日用で、休日はこれより6時間くらい追加してるから、大体10時間は自主トレしてるな。内容もこれより多いし。たまに一日中自主トレと言うか修行してるしなぁ」


 俺は特に気にせずに説明すると、教室中がさらにざわめいた。なんでだ?別に普通だと思うんだが。現に俺は師匠と毎日この内容でやってたし、師匠も普通だと言ってたんだが。すると今度は別の男子が質問して来た。


「それじゃ、次俺ね。水火土君は間宮さんとスプラティアさんと、どう言う関係なの?」

「小陽菜は俺の幼馴染みで、エリナは中学時代からの友人だけど、それがどうかしたか?」

「水火土君の彼女じゃないの?なんかすごい仲よかったからさ。みんな気になってたんだよ」


 俺は周りを見渡すと、確かにみんな気になってるようだ。俺はともかく、確かに小陽菜やエリナは中学時代からモテていたからな。他の男子が気になるのは当然か。


「俺と小陽菜やエリナは、別に付き合ってないぞ。さっきも言った通り、小陽菜は幼馴染みで、エリナは中学時代からの友人ってなだけだ」

「そっか。ありがと水火土君!」


 質問して来た男子は俺の説明を聞き終わると、拳をグッと握って席に着いた。

(つーか本人に聞けよ。ここにいるんだから……)


 俺は頭の中でツッコミを入れていた。ちなみに小陽菜とエリナはと言うと、二人とも顔を真っ赤にして下を向いていた。確かに、この質問は恥ずかしいよな。実は俺も少し恥ずかしかった。

今度こそ俺に対する質問は無くなったようだ、と思いきや。今度は先生が質問して来た。


「水火土君、私からもいいですか?私も知りたいことがありまして」

「まぁ、別に良いですけど」

俺は素っ気なく答えた。


「水火土君の契約している精霊様達は、今何処にいるの?」

「今は『精霊神界(アストラル)』にいますよ。呼べばいつでも出て来ますけどね。それに昔から、用もないのに勝手に出てくることがいつもありますしね」

「そっかぁ。もし、水火土君さえ良ければ、精霊様も一緒に授業を受けられるようにしてあげるけど、どうする?」


予想外の質問に、俺は少し驚いた。一緒に授業を受けられる?どう言うことだ?


「先生。精霊と一緒に授業を受けられるって、どう言うことですか?いや、質問の仕方が間違ってるな。なんで精霊が一緒に授業を受けられるんですか?少なくとも精霊は、生徒じゃないと思うんだが」

「水火土君の言う通り、確かに精霊様は生徒じゃありません。ですが、この学校では生徒は自分と契約した使い魔と授業を受けられる校則になってるので、使い魔ではないけれど、もし水火土君さえ良ければ、使い魔と同じように一緒に授業が受けれますよ?」


 なるほど、そう言うことか。精霊も契約対象であるので、使い魔と同じように主人と共に一緒にいられるように出来るのか。まぁ、この人の目的は恐らく、俺の精霊達に対して興味があり。是非、研究対象にしたいのだろう。何故なら、この学校の職員は大学教授と同じで、研究成果をまとめたレポートの提出が年に一回あるからな。興味をそそられない訳がない。


「なるほど、そう言うことですか。ありがとうございます。先生の提案は嬉しいの、で・す・が!もし俺がお願いしたら恐らく、いえ確実に授業どころではなくなりますよ?だってあいつら、学校で言うところの問題児デスカラ……」


 俺は、明後日の方向を向き、あいつらが学校にいる光景を目に浮かべ、俺は断る結論に至った。


「……やっぱり、遠慮しときます。想像しただけでも、ロクなことになりませんからーー」


 と言いかけたその時、俺の右手の契約刻印が光ったと同時に、至る所から光の粒子が集まって来た。それは次第に大きくなっていき、光の粒子は縦180cm、横100cmくらいの丸みを帯びた形になった。これは、精霊が『精霊神界(アストラル)』からこの世界に来るために必要な次元トンネルであり、俺たちはこれを『境界門(ゲート)』と呼ぶ。そして、噂をすれば何とやらと言わんばかりに、『境界門(ゲート)』から出て来てしまった。ただし、俺の契約している精霊の中ではかなりまともな奴だが。


「おはようございます、マスター。突然ですが、先程のお話聞かせて頂きました。使い魔と同列に扱われるのは不愉快ですが、マスターと共に居られるのであれば、私「達」も是非、そのじゅぎょうとやらに参加させて頂きます」


「……おはよう、アテナ。それからダメだ。お前達が授業を受けたら、絶対ロクなことにならない」

俺は流すように否定して、この話題を終わらせようとすると。


「何故ですかマスター!私達がいれば、マスターを勝利に導くことも、お護りすることも!そ、その。ど、どんなご奉仕だって、致しますのに///!」

「最初の二つはともかく、最後のやつはいらねぇよ!俺はお前らに何もしねぇよ!俺はそんな下衆野郎じゃねぇよ!誤解を招く言い方をするな!」


 俺は必死でアテナの言ったことを全否定した。

(だから嫌だったんだよ、こいつらを授業に受けさせるのは……)


 精霊達は俺に対して快く接していて、俺の事をとても信頼しているのだが。一人一人の精霊達がすごく濃い性格、またはとんでもない行動を起こすため、特に注意しているのだが、原因となる理由が俺のためという事から、ただ空回りをしているだけなので本気で怒れない。なので、俺は学校に迷惑をかけないために断ろうとしたのだが、その前にアテナが出て来てしまったのだ。


「マスター、そんなに私達は、お邪魔ですか?私達のことがが嫌いになってまったんですか?」


 アテナが今にも泣きそうな顔をしている。流石に精霊とは言え、女の子を泣かせるのは良くない。周りからも、何か言われるのは嫌だしな。


「安心しろ、アテナ。俺は一度だってお前達を嫌いになった事はない、本当だ。それに、お前達が俺の為を思って授業を受けようとしてるのはちゃんと伝わってるから大丈夫だ。まぁ、仕方ないからお前達も一緒に授業、受けていいぞ?ただし、この学校の校則や先生の言うことには従ってもらう。これが俺と一緒に授業を受けるための条件だ。守れるな?」

「!?ハイ!マスター!マスターとの約束ちゃんと守ります。ですので、どうかよろしくお願いします!」


 アテナはとても嬉しそうな笑顔で返事をした。

(まぁ、俺との約束を守ってくれればそれで良いからな。……約束、守るよな?)


「と言うわけで先生、お願いしても良いですか?先程断っておいて何ですが」

「ええ、もちろん!それじゃ、後で申請書を持ってくるので、一緒に書きましょう。精霊様、これからよろしくお願いしますね」

「ハイ、他の精霊達に変わって挨拶させて頂きます。私共々、どうかよろしくお願いします。」


 こうしてアテナや他の精霊達も一緒に授業を受ける事になった。


 アテナは桜樹先生に対し礼儀正しく挨拶をした。


「えっと、では精霊様、大変恐縮なのですが自己紹介をして頂いて宜しいですか?」

「ハイ、マスター以外に挨拶をするのは本当は癪ですが、マスターと約束したので、従いましょう。私の名はアテナ。好きな事はマスターと一緒に修行をすること。マスターと一緒に本を読むこと。マスターと一緒にご飯を食べる事。マスターと一緒にお昼寝をする事。マスターの衣服を嗅ぐ……いえ何でもありません。

嫌いなものは、マスターを馬鹿にする者。マスターを傷つける者。マスターを狙う泥棒猫です。以上」

「おいちょっと待て。俺の衣服が何だって?」

アテナが好きなもの紹介の最後にとんでも発言をした気がしたのでツッコンでみたが、あいつ顔を明後日の方向に向けて無言を貫こうとしている。


「アテナ、帰ったらさっきの事について『詳しく』聞かせてもらうからな」

「……!?」

アテナの顔がこっちを向いた。マズイ!?みたいな顔をしていた。


「ええっと、あ、ありがとうございました。アテナ様」


 先生は困った表情をしてアテナの自己紹介を終えると同時に、終了のチャイムが鳴った。


 今日は入学式だけだったので、午前中で学校は終わった。俺は精霊達の申請書を桜樹先生と一緒に書き、書き終えると、先生に渡して教室を出た。アテナはあの後、自己紹介を終えると、すぐに『精霊神界(アストラル)』に戻った。アテナのやつ逃げたな。


 階段を降り下駄箱の所に行くと、小陽菜とエリナが待っていた。二人とも俺に気付いて近づいて来た。


「あ!フウ君お疲れ様。少し時間かかったね?エリちゃんと一緒に帰ろ?」

「別に待ってなくても良かったんだぞ?二人でも良かったと思うし。ガールズトークとか出来たんじゃないか?」

「そんな事ないよ。フウライ君と一緒に帰った方が、わたしも小陽菜ちゃんも嬉しいよ。みんなで帰った方が楽しいもん」


 二人は俺と帰るのを嬉しいと言ってくれた。嬉しいと言われると、俺も少なからず嬉しくはある。


「そっか。ありがとな、待っててくれて。それじゃ帰るか」

「「うん!」」


 こうして、俺たちの新たな学園生活が始まった。

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