親の心子知らず
とてつもないイレギュラーだった。
まさかバカンスに来てまで、移民の取り扱いをするとは思わなかったなー。
それにマリさんをご指名なんて、まるで皇国での出来事のようだった。
「出鼻をくじかれてしまった形だけど、切り替えていきましょう」
「そうですね、片付いた事ですし。ですが、アレックスも離れてしまいましたし、護衛という面ではど薄くなってしまいましたね」
「確かにね。失策だったかしら?」
「いえ、他に無かったと思いますが、少し周りを気にしながら楽しみましょう」
「そうね。早速だけど、何処か見て回りたいところはあるかしら?」
「あ、そういえばなんですけど、此処でこういった催し物があるみたいです」
言いながら、案内板を指し示す。
「魔界物産展……こっちでも似たようなものをやっているのね」
「文化や政治なんかは皇国をお手本にしているものですから、こういったものも似てくるのかもしれませんね」
「むしろ親しみやすくて助かるわ。じゃあ、そこに行きつつ、何かしら見て回りながらいきましょう」
「そうしましょう」
人々の目線を浴びながら、ショッピングモールの中を歩く。
まぁ、あれだけの大捕り物をしたのだから、仕方がないだろう。
ちょっとした雑貨屋や服屋を覗いても、チラチラとこちらを見てくるのはやめてほしいものだ。
「ちなみになんですが、マリさん、さっきから尾行しているのって、お知り合いでしょうか?」
ここ二、三年の魔界で人気になったキャラクターのショップに入りながら尋ねる。
先ほどの公安職員をぶっ飛ばした失態を思い出し、とりあえず聞いてみた。
「そうね、多分だけど父が寄越した護衛じゃないかしらね?」
「お父様の……なら心配はいらないですね」
「監視の意味合いも多いだろうけどね。今さっき辿り着いたってところかな? 転移者の時には居なかったし」
「でも、よくも見つけたものですね」
「あー、多分それは……衛星のせいね」
「衛星?」
「そ、私、常にロックオンされてるの、監視衛星に」
「はぁ~……衛星とは、凄いですねぇ」
「親バカも此処に極まれり、ってとこね」
点と棒で描かれた顔のぬいぐるみを、弄びながらため息混じりにそう言った。
過保護、なのだろうか。
それとも国の言うなればお姫様には、この程度が適当なのかは判断がつかないが、とんでもない事なのは間違いない。
「昨日の一件があったから、仕方ないのかもしれませんけど……息苦しいのはお察しいたします」
「ありがとう。話変わるけど、このキャラクターって、魔界物産展にも居るのかしら?」
「おそらく、節操なく居ると思われます。だって、ほら」
いかにも土産物! といった商品が並ぶコーナーを指さすと、水からちょっとした家電まで『魔界』の二文字と共にそのキャラクターが鎮座している。
どう考えても、関係が無さそうなものなのに、商魂たくましいとはこの事である。
「色々あるのね。私、ちょっとこれ気に入っちゃった」
ほほう、これは良い事を聞いた!




