流行り廃り
ヘルポートに辿り着くと、まず真っ先に館内の見取り図を確認した。
マリさんの好きそうなもの、興味がありそうなものはないかと思案しながら、一つ一つお店のジャンルを見る。
お昼をご一緒するので、飲食店のラインナップはまず最初にチェックしなくてはならない。
これは至上命題である。
やはり、多少値が張るものの、こちらで流行っているものをチョイスした方がいいのだろう。
観光っぽくもあるし、こう……その……デートっぽいし。
しかし、それには大きな問題が有る。
私は流行に疎いのだ。
新しいもの、変化したものに対して、興味は有る。
が、一度知識として手に入れてしまうと、私にとっては既知のものになってしまうのだ。
そして、人の趣味嗜好という理論立てて説明できない感情に対して、とやかく言うつもりもないので、結局のところ「あー流行っているんだー」の域を出ない。
体験したとしても、よっぽど自分のツボに入らない限りはそんなもんである。
故に、自然と流行のものには疎くなる。
そして、普通ならば忘れることで、新たな流行に目が行くのだろうが、私はバッチリ覚えてしまっているので、廃りが分からないのだ。
「困ったなぁ……」
分からない事が出来た場合、学ぶか真似るかだ。
さっきから横でイッチャイチャしてるカップルを参考にする事にしよう。
都合よく何を食べようか話している最中だ。
とはいえ、有用な情報とは得てして出てこないもので、やれこの間のレストランがどうだの、作ってくれた手料理がどうのといった爆発してくれないかな? と思う内容が多い。
しかし、そこを焦ってはならない。
「そういや、コレ流行っているらしいねー」
「あ、この間、会社の人とこの手の店行ったわ」
「えーホントに会社の人ー? 違う娘と行ったんじゃないの?」
「いやいやそんな事ないって!」
コレ、とは一体何だろうか。あと、会社の人っていうのは大体アウトだ。どうでもいいけど。
案内板を指差すところを確認してみる。
そこには確かに『各地の地ビール』と書かれていた。
昼間からビールか……。
いや、昨日も昼間に飲んではいたけれど。
それでも、ビールというのはちょっと違うかもしれない。
何というか、マリさんのイメージにそぐわないというか……。
ただ、魔界各地からのビールというは、観光風情が大きいかもしれない。
とりあえず候補に入れておこうか。
では、その地ビールの店は、何が食べられるのだろう?
「えーと、ギョーザ、からあげ、ハンバーガー……」
流石魔界だ、節操がない。
とはいえ、異世界の料理をこれでもか! というほどに提供しているのは、店としての付加価値を求めての事なのだろう。
しかし、こんな浮ついたメニューがマリさんに果たして気に入ってくれるだろうかが懸念材料ではある。
そんな事を考えていると、カップルはいつの間にか何処かに行ってしまっていた。




