マイナーな本を見つけると嬉しくなる
さて、次の予定が特に決まらぬまま歩いていると、書店が目に入った。
長期滞在する人や缶詰になっている先生業などには必要なのだろう。
立ち読みも時間を潰すには丁度良い。
足取り軽く、店内に入っていった。
「懐かしいなー」
実用書・学術書のコーナーでひとり呟く。
大学受験の際に、よく使っていた魔法の解説書が未だ現役という事にも驚いた。
そういえば、あれからどれだけ魔法を使えるようになっただろうか?
私の特性、アンタッチャブルを柔軟に使用できるのは間違いないのだが、キッチリと呪文を唱え、術式に沿った魔力の通し方をしたのは、訓練以外では思い当たらない。
つまりは、戦闘用のみだ。
「日常用とか、あれば便利系とかおさらいしてみようかな?」
そもそも魔法とは、思いと意思の力。
強い素養さえあれば、思っただけで魔力行使が可能である。
しかし、強引な使用は精神力と魔力をやたらと消費するし、効率も悪い。
なので、瞬時に呪文を唱え、効率的に魔力使えるのなら、省エネに繋がる。
正に、知識は力、という訳だ。
まぁ、そういうのをぶっ飛ばして、ほぼノーリスクで使えるのがマリさんなのだが。
「おや、これは珍しい……方術の書ですね……」
この世界では超ドマイナーな魔力行使のスタイルである。
ざっくり言うと、運命をこちらの都合の良い方に曲げていく事を主としている。
ちなみに、それの副産物として、未来予知や不老不死等々があったりもする。
「ふむ……おさらいよりも、新しい事を身につける方が、効率的かもしれませんね」
思い立ったら即行動、分厚い本をレジへ持っていく。
「お買い上げ、ありがとうございます」
「部屋に届けてほしいのですが、可能ですか?」
「ええ、もちろんです……少々お待ちいただけますか?」
黒髪の少女が、レジの奥に引っ込んでいく。
もしかしたら、登録されていないから、会計が出来ないとか?
「お待たせしました! 実は私、こちらの本の著者でありまして……コレ、特典です!」
「え?」
なんで作者が書店で働いているんだ?
本を出す程、魔法に精通している人間は大概研究者のはず。
そして、自分の魔法をひたすらに突き詰める変態ばかりだ。
「あ、不思議ですよね、研究機関に居ないなんて。ぶっちゃけた話、飽きてしまってですねぇ」
いきなり砕けた話し方になった少女。
まぁその方が色々とツッコミやすくて楽だけども。
「飽きたって、すごい事言いますね」
「ええ、実は私、大分年寄りでしてねー。千年くらい研究してると流石に他の職業に目が行くってもんです」
「大先輩なんですねぇ」
「なので、方術に興味があるって人を見ると、嬉しくなってしまいまして。という訳で、特典の奇門遁甲盤です。使い方は多分本に書いてあるのでー。あ、要はちょっとしたマジックアイテムですので」
人からマジックアイテムを貰う事って、結構怖い事なんだけど……?




