予定を決めましょう
「レミちゃん、今日は何か予定があるかしら?」
アレックスの件がひと段落したようで、マリさんはこちらに顔を向けながら切り出した。
「いえ、そもそも帰省しただけですから、魔界にこれと言って予定は有りません」
「じゃあ、バカンス中は暇なのね? そしたら、午前は少し用事があるのだけど、それ以降付き合ってほしいわ」
「はい! 喜んで! ちなみに何をするんですか?」
「別に目的なんてないのだけれど、強いて言えばショッピングかしら? この辺に何か大きめの商業施設ってある?」
「そうですねー、ヘル・ポートが近くに……いえ、それだと庶民的過ぎるか……うーん、シカタマ屋あたりならいいかな? うーん……」
ヘル・ポートはショッピングモール、シカタマ屋は百貨店だ。
子どもやフードコートなどを備えているヘルポートはちょっとマリさんのイメージにそぐわない気がする。
「そんな迷わなくても、むしろ庶民的なところが見たいわ。ヘル・ポートにしましょう?」
「分かりました。午前の用事はどのくらいに終わりそうですか?」
「遅くともお昼には。ついでにご飯も一緒に食べましょう? 朝ご飯食べているときにお昼の話をするのもなんだけれど」
「分かりました。なら、午前中は私も何処か行こうかなー?」
「えぇ、このホテルを見て回るのも良いし、付き合わせちゃった分、羽を広げて自由にしてて」
「そんな……羽を縮こめてなんてないですよ」
そういえば、ここのホテルの施設を使わせてもらうっていうのもいいかもしれない。
お店も入っているし、見ているだけでも時間を潰せそうだ。
マリさんとショッピングをするのだから、冷やかしになるのだけれども。
「なので、終わったら連絡するわ。と、そうそうアレックス」
「なんでしょう?」
身じろぎ一つせずに、苦痛の回避を行っているアレックスは、そのまま声だけで返答する。
「体を治してあげるから、その足で職場に説明してきなさい。皇国の本家からある程度偉い人たちには伝わってるだろうけど、別れの時間は必要でしょう? 私の休暇が終わったら、そのまま皇国へ共にしてもらうわよ?」
「ははは、公安諜報部にそんな感傷は無いけれど、私物くらいは取りに行かせてもらおうかな?」
「にしても、アレックスも皇国ですか、変なこと起こさないでくださいよ? 公人なんですから」
「まぁ、なるべく善処するよ。うん、幼馴染のお願いだしね」
「幼馴染のせいで命が危険になったんですけれども」
「その件に関しては申し訳ない。けど、ボクも命がけではあったのは理解してほしい。とはいえそれで許される訳ではないのは確かだから……本当にごめんさない」
アレックスの謝罪に幼いころを思い出した。
「まぁ、話を聞けば、アレックスはギリギリの立場で、結果的には私の命を救うために動いていた。公安の任務というのも分かります。ですが」
「ですが?」
「マリさんへ私を投げつけたのはマジで死ぬかと思った」




