手品師が種明かしをするメリット。
「マリさん……一体なぜアレックスが暗殺を───アサシンだと思ったのですか?」
「匂い、ね」
「匂い……」
「その前に、お身内に失礼なことを申し上げてしまいました。ここに非礼をお詫び申し上げます」
と、深々と頭を垂れた。
「いえ、そんな、事実だったようですし、お気になさらず……。それよりも、匂い、とは?」
「暗殺、といっても手段は色々よ。毒、銃や刃物とかの道具に頼ったもの。徒手空拳、魔力行使などの自身の力によるもの。あとは、知識と環境によるもの───って、これはどちらかというと、計画的な殺人事件の方が近いかしらね」
学校の先生なんかもお茶目で似合うんだろうなぁ、なんて振る舞いと声を堪能していると、キリッとした表情で言葉を続ける。
「その中でも、徒手空拳での暗殺は異質よ。やり方によるけれど、流れる血、吐しゃ物や排泄物……人の―――生き物の死にざまなんて、大概汚いものなの。その間近に居るのだから、少しは匂い移りもするわね。それに多くの種族を相手にしていようものなら、混ざりあって更に異様な匂いになるでしょうね。彼女からは、それを感じられたの」
「血の匂い……」
「そう考えると、彼女の身のこなしも納得が出来るわ。一つだけ、確証を得てないところもあるけれど」
「確証……疑問……何故―――何故アレックスがそれを明かしたのか? 正確に言えば、それを匂わして、尚且つ私たちに正解してほしかったのか? でしょうか?」
「ご明察」
と、アレックスの口調をマリさんは真似る。
そこには蛇のような不気味さなどは微塵も感じさせない爽快ささえ感じさせる。
話を本題に戻せば、恐らく、あの手合わせは無関係ではないはず。
あれが有ったからこそ、アレックスは自分のことを匂わせた。
きっと、ここは間違えていない。
なら、自分のことを分かってほしかった、バラしたかった理由とは?
アサシンが自分のことをさらけ出すメリットとは? そこまで目立たないといけなかった、興味をひかなければいけなかった理由とは?
もしかして―――
「陽動」
その二文字を思いついた時には、口から洩れていた。
マリさんは私の顔を驚いた表情で見ている。
「レミちゃんもそう思う!? やったわ!」
私の手を取り、上下にブンブン振る。
えへへ、手を握ってしまった。よくやったぞアレックス。
「きっと、そうだと思うのよね。で、何故、陽動をしなければいけなかったのか? まぁ、多分、標的は私なのよねぇ……」
「そんな……」
「まぁ、私は慣れてはいるけれどね、勇者なんてやっていると。レミちゃんを巻き込みたくはないなぁ……」
「私は自分の身は自分で守れますから! そして、マリさんはアサシンに負けるはずがありません! ということは、何も問題ありません!」
自分でも、勢いに任せてとんでもないことを言っているのが分かる。
が、私はマリさんの足手まといになりたくない。
横に並ぶことは難しくても、後ろに隠れているだけの存在にはなりたくない。
マリさんの、勇者ゆえの孤独を私は和らげられる存在に、私はなりたい。
「ふふ、ありがとう、心強いわ。そうね、アサシンなんかに負けていられないものね。さて、今夜のパーティーが楽しみね」
「あ、そうだ、パーティ! って、そんな場で仕掛けてくると思いますか?」
「もちろん。『魔界で倒される勇者』なんて、とてもセンセーショナルじゃない? どうプロパガンダにするのか分からないけど」
「そういうものですか……」
「退屈だと思っていたけれど、レミちゃんも居て、特別ゲストも居てとなると、なかなか楽しそうになってきた、かな?」
「マリさーん……それは楽しむところではないのでは……? あ、アレックスには手加減しなくていいですからね」
「りょーかい!」
マリさんの命を狙う輩なんぞ、微粒子レベルまで潰されてしまえばいいのだ。




