思い出。
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そしてジジイ―――もといおじいちゃんは初代勇者との思い出を語っていった。
一つ一つを愛おしむように、大切に、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
魔王軍残党から助けてくれたこと、魔界を支配せずに共存の道を気付かせてくれたこと、内乱に同族を殺めることを悔いていたこと、手取り足取り様々なことを教えてくれたこと、そして―――晩年のこと。
「そういえば、私はあまり初代の晩年を知らないわね」
「私は一族の記憶引き継ぎくらいですね。文献と同じような知識です」
「そうさの、『やったこと』は文献の通り。まぁ、細かいところはワシが死んだ後の世代に引き継がれるだろう」
ブックマンの記憶引き継ぎは、生まれてから成体になるまでゆっくりと行われ、死後、自分の経験と知識は記憶の書庫と呼ばれるところへ吸い出される。
そして、その記憶は死後に生まれた者へ受け継がれる。
「国政に関わってからは、そりゃもう大変だった。食事に毒を盛られたり、暗殺者が毎夜と言っていいくらい寝込みを襲いに来たりは日常茶飯事だった。まぁ、その当時の食事に混ぜられる毒も、暗殺者も初代を仕留めるには足らないものではありましたがね」
「それは、科学と魔法が発展した今なら分からないってことでもありますよね、キーヨさん」
「そういうことです。ですが、人を不審に駆らせるには十分でありましたな。そこに来て内乱、そして初代に比肩する者も出てきました」
「マリさんを見ていると、にわかには信じられませんね」
「―――転生者」
マリさんはポツリと呟いた。
その言葉を聞いて、目尻を下げながらおじいちゃんは頷いた。
「流石はミストラル様、ご明察です。反乱軍も転生者を用いてきたのです。これはディーンにも魔界にもあまり伝わってはいないでしょうな」
「確かに、私の記憶にも引き継ぎがありませんね……でも何故でしょう? 魔界の建国記や勇者の武勇譚に取り上げてもいいくらいの内容なのに」
一族の記憶にもない出来事、それはおじいちゃんだけの大切な記憶。
「転生者を神聖視する向きがあったからじゃないかしら? だから敵にも転生者居るとなると、勇者を祭り上げる人間にも都合が悪い、と」
「なるほど」
「左様です。皇国ではどのような流れがあったのかは定かではありませんが、魔界では反乱軍の転生者は積極的には語られませんでしたな。おっしゃる通り神聖を重んじたのでしょう。そして何より……」
重々しい口調に変わり、憎々しげに言い放つ。
「語ることすら忌々しい」
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