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魔王と勇者

その昔、勇者は魔王との死闘を制し、世に平和をもたらした。

幼い頃に何度も聞いたお話だ。

では、その後の物語はどうなったのだろうか。


まず、事の発端は魔界の侵略行為だ。

それに皇国は国を挙げて防衛に回った。

しかし、戦いが長引くと兵の損耗、兵站の維持、国に対する国民の不信感、国費の増大と、このままいけば国家運営が出来ないレベルにまで陥った。

それの打開策として、一か八かの電撃作戦が決行された。

少数精鋭の部隊によって、一気に敵司令部を落とすというものだった。


で、当然選ばれたのが初代勇者、神の加護を受けた転生者ユーキ。

そして、その作戦は予想以上の成果を収めた。

まさか魔界の司令と国家元首が同じとは……。

それによって、一気に魔界も軍勢も乱れに乱れた。

この混乱に乗じ、皇国は魔王軍を撃退し、争いは終わった。


主を失った魔族の一部は何故か勇者を崇め始める。まぁ、実力行使での代替わりが常だからなぁ……。

で、勇者はその付き従う一部の魔族を率いて、瞬く間に国を復興させていく。

それと同時に魔界も国としての機能を持たせるために、法や制度の整備を行う。

―――そう、勇者とは魔王でもあったのだ。


また、皇国の名家であるミストラル家の令嬢と婚姻を結び、ミストラル家の当主ともなってしまう。

これも領地を良く治め、皇国で一番栄えたといってもいいかもしれない。

そして、領主ともなれば、皇国の政治にも関わり始める。

戦争を終わらせた英雄、領地を豊かにする名君、神の加護を受けた神性、そのどれもが強い影響力を持つ。

いかに外様といえども、その存在は無視できないものとなってしまっていた。

それを面白く思えない者がいるのは当然のこと。

反勇者派、魔界植民地推進派が手を組み始め、内戦が起こった。


その内戦にも勇者ユーキは駆り出され、圧倒的な戦力で戦場を駆け回る。

魔王と慕う魔族も参戦すれば、あちらは他国からも純粋なる人間種が世界を支配すべしという勢力も参戦する。

ただの一国の内戦が時が経つにつれ、世界を二分した大戦にまで発展してしまったのだ。

数に勝る反勇者軍に、皇国は領土の半分を失い、度重なる戦争で疲弊したこともあり、皇国からの離脱、独立を認めることでこの戦争は終結した。

新しい独立国は魔界と皇国の間に誕生し、両国を分断するような存在となった。


皇国から航空機で行った方が断然早い理由もそこにある。

魔族のハーフである私は間違いなく入国禁止だろうし、ミストラル家の令嬢なんて言ったら、何をされるか分かったものではない。


さて、勇者はその争いが原因なのか、ミストラル家の当主、議員、そして魔王を辞任した。

しかし、彼が居なくなった後も皇国と魔界の交流は続く。

その交流役は勇者の家系であるミストラル家の者が行うことが慣習となっているそうだ。


マリさんの今回の目的は、ミストラル家の代表で魔界に外交に来ている。

きっと、そういうことだろう。

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