入国審査とか色々しましょう。
空港に車両が降り立つ。
そのまま格納庫のような場所に停車し、直ぐに制服姿の係員が駆け寄ってくる。
「ようこそ魔界へ。旅券を確認いたします」
運転手さんが私たちの分も含めて三冊の旅券を提出する。
それと引き換えに書類を渡され、私にも配られる。いわゆる出国カードだ。
それを私はさらさらっと書いていくが、先輩は筆の進みが遅いようだ。
いったいどうしたのだろうか? まだ調子が優れない?
「ねぇ、レミちゃん、これって魔界の文字で書かなくちゃダメ?」
ああ、そういうことか、国が違えば言語も違う。
言葉は言霊を魔力に乗せて、変換さえすれば通じる―――いわゆる翻訳魔法だ。
しかし、視覚情報や筆記などの自分の体を動かすもの関しては、相手が居ないため通じない。
「あれ? 先輩って魔界語ダメでしたっけ?」
「読むくらいなら大丈夫だけど、私の名前とか仕事とかをこっちの言葉で書くには語彙力が足りないわね」
「なるほど、そうしたら私が書きましょうか?」
「じゃあおねが……いえ、教えてくれるかしら? 自分でやらないと進歩しないものね」
「かしこまりました」
こういう向上心を常に持っているって、やっぱり先輩は凄いなぁ。
「これは…この文字で、ここはこう書いて……」
先輩にスペルを見せながら書き方を教える。
魔法の詠唱スペルに似た様なものがあるから、飲み込みは速そうだ。
「書けたわ!」
子どものように喜びながら、私に見せる仕草がとても可愛らしくもあり、美しくもある。
運転手さんに私のものも一緒に渡すと、職員は下がっていった。
ついでに旅券も返してもらう。
入国のものはもちろん、出国のスタンプも押されている。
へー、魔界にも皇国のスタンプがあるんだなー、なんて思った。
「久しぶりにあの言語書いたわねー」
力を入れて書いていたせいで手が疲れたのか、右腕をプラプラさせながらシートに沈み込む先輩。
「まぁそうですよね、普段生活してて使わないと思いますし」
「レミちゃんはこっちのご家族とは、手紙とかはあの文字でやり取りするの?」
「はい、そうですね、正直書くとしたら、こちらの文字の方が書きなれている節がありますし」
あとは、おじいさんが皇国の言葉がからっきしというのもあるけども。
「それで、皇国の言葉もすんなりかけるんだから、やっぱり凄いわね」
「ありがとうございます。まぁ、私の場合はハーフですからね。どちらも学ぶ機会が沢山ありました。そういえば、話す方は如何ですか?」
「んー、なるべく話してみるけど、魔力使うことがほとんどね」
ですよね。先輩の魔力と特性なら大概のことは力押しでいけるし。
だけど……。
「でしたら、旅行中は私が通訳しますよ」
「え? いいの?」
「ええ、折角の旅行中ですから、その魔力ももったいないです」
「じゃあお言葉に甘えようかしら。ただ、私も出来る限り自分で頑張ってみるわね!」
ふふふ、これで旅行中は通訳としてずーっと帯同できるな……。
「レミちゃん? まーた顔が崩れてるわよ?」
―――しまった!




