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こちら異世界移民局!~転生・転移チートを許さない世界の物語〜  作者: ひろほ
第一章 明るく楽しい職場です。
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まずは世界のことを知ろう。

勇者が数多くの苦難を乗り越え、魔王と死闘を繰り広げて平和を取り戻す。

ありふれたおとぎ話。

私、レミリア・エイプリルの居る世界も、そのようにして現在の世界になったと伝えられる。

そして、その勇者も異世界から来た神の使いとも。


私たち人間と、魔力を生きる糧としている魔物。

争いあった歴史も何のことはなく、平和に共存していたりする。


豚のような二足歩行の生き物、一つ目目玉のコウモリ、霧のような体のもの……。

まぁ、バリエーションが多いけど、『魔王』は一括して治めているというのだから大したものだ。


かくいう私も人間と魔物のハーフ。

耳は尖っているし、目は赤い。

一目見て純粋な人間ではないと分かる分、魔物として扱われることも多い。

さて、そんなことは置いといて、私の仕事に取り掛かろう。

私の世界はどうも異世界と繋がりやすいらしく、移民は多い。

その移民を受けいれる事で、労働力、人口増加、技術の発展を促している。

私は窓口として、あーでもない、こーでもないと口八丁手八丁で移民を丸め込み、国に属するように仕向けるのが仕事である。


「えーと、まず、タナカさん。あなたが知っておかなくてはいけない知識について、こちらの資料をまとめてあります。お受け取り下さい」


数枚の紙をまとめて渡す。


「いかがです? 読めますか?」

「あ、はい! 不思議です。初めて見る字なのに読めるなんて」

「皆さんそうおっしゃいますねー。では、そちらをご覧になりながらお聞きください」



―――――読み飛ばしてもOK―――――――――――――――――――

1.あなたが転生・転移した国は皇国ディーン(以下国という)と言います。

1-1.年号は皇国記 現在は3500年となります。

1-2.通貨はルピーとなります。


2.国はあなたに移住の支援を行います。

2-1.これはあなたが望まないのであれば拒否することが出来ます。

2-2.あなたが国に対して被害をもたらす場合、国は通告無しに支援を打ち切ることが出来ます。


3.国はあなたの適性を判断した上で、職の斡旋を行うものとする。

3-1.派遣先へ損害を与えた場合、派遣先、または国、本人の判断によって転職・解雇を認めるものとします。

3-1-1.その際の損害賠償などは皇国裁判所の判断に依るものとします。

3-2.あなたは斡旋を拒否することが出来ます。

3-2-1.その際、毎月10万ルピーの消費を国内でしなければならないとする。

3-3.あなたへの賃金は国が住居、税金、保険の費用を差し引いた額が支給されます。


4.あなたは年に一度の審査、健康診断を行ったうえで住居、職の交渉を行えるものとします。

4-1.急な環境の変化や体調などが理由の場合、その限りではありません。

4-1-1.その報告に虚偽があった場合、国はあなたに対して裁判をおこせるものとします。

―――――――――――ココマデ―――――――――――――――――



「まぁ、大事なのはココくらいですかねー。あとは自分で読んどいてください」


これを読み上げるのは結構疲れる。

今回は読み書き、話せるという人だからまだマシだが、読めない人間だと全て読み上げなければならない。


チラッと壁の時計を見る。

定時まであと2時間か。

順調にいけば、この人の案内などを行っても少し書類仕事出来そうだ。


視線をタナカさんに戻して顔を伺う。

真剣に読んでいるようだ。

まぁ、そりゃそうか、いきなり異世界に来てるんだもん。

得られる情報は必死に得ようとするよね。


「何か分からないことあれば、聞いてくださいね」


沈黙もなんだか気まずいので、ありきたりなことを話しかける。


「あの……この世界のことなのですが?」

「はい? なんでしょう」

「この世界の名前は何ですか?」

「ありません」

「―――えっ?」

「あなたの世界には名前がありますか?」

「日本?」

「それは確か国の名前ですよね」

「地球?」

「それは星の名前ですね」

「宇宙?」

「海とか空とか、空間に対する名前ですね。私にはこちらの言葉でも宇宙と言ってます」


そういえば、国の名前・女神の名前で分類付けているけども、『世界』での分類はされていないな。

ふむ、今度上司に相談してみるか。

転生・転移者の元の世界にどれだけ『世界』に対して名前を付けているものが居るんだろう。

……おっと、仕事をしなくては。


「あ、読み終わって、疑問や不満が無かったらこのペンで名前をこの欄に書いてくださいね」


タナカさんの近くにペン立てを置いておく。

未だに真剣に文字を追うタナカさんを眺めながら、私は今日の夕飯のことを考えていた。

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