教育機関訪問4~カティア・マクドナルド~
つつがなく?フランツ・ハイデルベルクとの面会は終了した。
魔力量以外は特におかしいところは感じられなかった。
「どうだった?」
「魔力は私たちでもビックリするほどでしたね。転生者とみてもいいかもしれません」
「ふふ、そうね。ただ、ハイデルベルク家、ってことを考えるとおかしくないのかもしれないわ」
「そうなると、除外と見ていいのでしょうか?」
「いえ、そういう可能性もあるってだけの話よ。おおむねその方向であっているわ」
「分かりました。では、次に行きますか?」
「そうしましょう、校長先生、お願いします」
「分かりました、すぐに連れてまいります。次はご指定がございますかな?」
「レミちゃん選んでいいわよ」
「なんか、商品を注文しているみたいですね。ええと、そしたら、カティア・マクドナルドをお願いします」
「ふむ、カティアですな」
その子が来る前に、カティアのデータを見直す。
カティア・マクドナルド、年齢は9歳の女の子。
特に怪しいところのない両親との間に生まれている。
しかし、幼いころからプログラミングに関しての才能を発揮し、フリーで仕事をこなすほどだ。
魔力の素養はあまり感じない成績だが、コントロールに秀でている模様。
さて、この子は一体どうだろう?
「何か狙いがあるのかしら?」
「男が嫌いってだけです」
「……レミちゃんらしいわね。つっても、全員面談するんだから、嫌なものはいずれ来るわよ?」
「えーとじゃあ口直し?」
「結構あなたもたいがいよね」
「それは自覚があります」
「尚更タチが悪いわね」
けらけらと笑い声を先輩が立てていると、扉が開く。
そして、威風堂々と女の子が入ってきた。後ろをついていく校長先生を従えているかのようだ。
長い黒髪に切れ長の目、とても少女とは思えない。
「初めまして、マリ・ミストラルよ。今日はお話を聞きに来たの。よろしくね」
「……話とは?」
足を組み、ひじ掛けで頬杖をつきながら、大層偉そうに聞き返す。
おい、お前、先輩に向かって何て口の利き方だ。
「あなたが優秀だからね、勉強についてとか、プライベートとかを聞きに来たの」
「私が優秀? なるほど、移民局か」
「大正解。というか、あなたはきっと最初から分かっていたでしょう?」
「……そうね、確信を持てた、というべきか。なかなか分かっておる、気に入ったわ」
「………」
「あら、ありがとう。なら単刀直入に言うわ、あなたは転生したのかしら?」
「この学校の連中と違い、平々凡々な家だ。 ならば移民局に出向き、恩賞と収入を得るのが道理ではなかろうか?」
「それをしない理由があるとすれば?」
「質問を質問で返すでない。もし、私が転生者だとして、やはり、移民局に行かぬ理由が見当たらぬな。一つ、私が前世の記憶を持ちうるならば、子どもとの世界よりも大人の世界を求めるはず。二つ、自身の両親でもない者と生活するのは苦痛である。三つ、先も言ったが収入の件だな。ここまで言わずとも、分かっていたはずだな」
「…………」
「ただ、今の居心地がいい、という考えもあるのでは?」
「そういうこともあるか……。しかし、それでも申し出る理由には弱く思うな。あと一つ、聞いてくれぬか?」
「あら、お願いかしら?」
「ああ、そこの娘の殺気を抑えさせてくれ、ちと怖いぞ」
「だって、レミちゃん」
「無理ですね。あなたが言葉遣いを改めない限り」
「ふむ、これは生来からのものでな、なかなか急には難しいのだ。物を知らぬ子どもの致すこと、と思えば、腹も少しは収まるのでは?」
「魔力も開放しましょうか」
「待てい、分かった、すまん。少しは気を遣うことにする」
「それでいい」
「じゃあ、話を続けるわね。プログラミングは何処で覚えたの?」
「……本で、覚えた、覚えました」
「あら、じゃあ独学なのね」
「ああ、その後、近所にそういうのに強いのがいてな、そやつに手ほどきを受け……ました」
「レミちゃーん、目が光ってるわよー」
「はい、しっかりと見張ろうと思いまして」
「ということらしいわ、危害を加える気はないみたいだから、気にしないで?」
「気にするわ! 何か稲光まで目から迸っておるぞ!」
「何だその口の利き方はぁぁぁぁ!」
魔力を少し解放する。
私の赤い瞳はさらに輝き、魔力の奔流が流れる。
「ギャー!すみませんでしたーー!」
「それでいい」
「ほんとに! ほんとに転生してないのっ! ねぇ、怖いから! こーーーーわーーーーいーーーかーーーーらーーーーー!」
ついに本格的に泣き始める。
ふむ、こうしてみれば、子どもらしいところもあって、なかなか可愛いと思う。