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白昼ガールズトーク2

顔を赤らめてうつむいてしまったレイさん。

見た目は大人の女!って感じなのに、恥ずかしそうにしている様は少女のように思える。


「えええ、ええと、せや、二人とも、ご飯まだやろ? ウチは席取っておくから、頼んでおいでや。な?」

「んー、仕切り直させてあげるから、反対にレイが行ってきたらいいんじゃないのかしら?」

「あ、う、まぁ、そうさせてもらおかな? あは、あははは」


何度もイスに当たりそうになりながらフラフラと食券機へと向かっていくレイさん。

大丈夫かな? 汁物頼んでこぼしたりとかしないかな?


「ふぅ……あの混乱癖が無いと、もう少し恋愛も進展するのにねぇ」

「むしろ、あれを係長相手にも出してもらっていいのかもしれませんが」

「やっぱり、ああいう方が男心に響くのかしらね?」

「どうなんでしょう? 私は同性のレムさんだからカワイイと思ってしまいますが、興味の無い異性にやられたら心底ウザいと思います」


それに私は先輩一筋だから。


「そうよねー。そしたらレミちゃんはどういう仕草がモテ戦術なの?」

「モテ戦術ですか……。あまり意識したことがありませんけれど、片手で行動するのは、あまりモテないって話を聞いたことがあります」

「そういうんや! そういうんを聞きたいんや!」


食事の乗ったトレイを机に荒々しく置きながら、物凄い勢いでレイさんが食いついてきた。

よかった、カレーだ。これならこぼれない。


「で、片手で行動するとモテないっていうのは、どういうことなのかしら?」

「ああ、どちらかといえば、両手で行動すると、キレイに丁寧に見えるから、ガサツっぽく見える片手行動よりも相対的にモテるって話だったかと」

「両手行動って、なんなん?」

「私も詳しくは知らないですが、例えば物を渡すとかも、両手で渡すとか。お水のグラスを持つにも片手じゃなくて両手で持つようにするとか」

「そういうことね。そういえば、マナー講座とかも片手で行動するととても怒られたことがあるわ」

「やっぱ、片手っちゅうのは、あまり印象良くないわなぁ」

「ふふ、そしたらレミちゃんに色々教わったら? レミちゃん、私取ってくるから、何が良い?」

「ああ、いえ、私も取ってきますよ」

「いーのいーの、この恋愛暴走機関車にレールを引いてあげて」

「せやせや、他のやつは無いんか?」

「じゃ、同じのを持ってくるわ」

「ああああ、すす、すみませーん!」


片手でヒラヒラと手を振って、後ろ姿で応える先輩。

何だか申し訳ない。


「……あいつ、変わったなー」

「先輩がですか?」

「せや、あいつ、無口でぶっきらぼうで野蛮なタイプの人間やったで」

「……にわかには信じられませんが」

「まぁせやろな。あの移民局に入ってからや。あんだけ人当たりが良くなったんも。学生時代にはホンマ誰も近寄らんかった。唯一私くらいなもんや」

「レイさんは人気がありそうな気がしますけどね」

「まぁ、『ある意味』有ったわな。さ、他のモテテクを教えてや!」


少し、気になる発言があるが伏せておこう。

あまり人の過去など掘り返していいことは無い。


「んー……人の仕草をマネする、とかですかね?」

「ほう?」

「ミラーリングって言って、相手と同じ仕草をすると親しみを持ちやすいそうですよ」

「なんか、マネっこみたいなことなら、ちと嫌な感じするなぁ」

「それがそうでもないみたいなんですよね。私も狙って試したことがないので、効果のほどが分かりませんけども」

「まぁ、騙されたと思って、機会があればやってみよか」


普段、部署が違うのだから、いつ機会が来るのかは分からないのですけども。


「はいレミちゃん、お待たせー」

「ああああ、ありがとうございますー!」


すぐさま立ち上がり、最敬礼のお辞儀をする。


「まぁまぁ、そんなにかしこまらないで、ね。で、どうかしら? この子はモノになりそうかしら先生?」


優しく私の前にトレイを置いてくれた。

その上にはふわふわのオムライスが乗っている。


「これ、好きだったでしょ? 気分が分からなかったから、好きなものにしちゃったわ」


この人は天使か何かだろうか? いや、勇者の末裔ではあるので、神の加護はあるんですけども。


「いえいえ、そんな気を遣わせてしまって……。それに先輩の食べたいものもあったでしょうし……」

「ふふ、レミちゃんが何食べたいか考えていたら、私も食べたくなっちゃったのよ」

「なるほどなぁ、こういう気遣いがモテるんやろなぁ……」

「別に私は気を遣ってはいないわよ」

「あ、そうだ、先輩、お金払ってないです!」

「いいのいいの、奢りだから」

「いや、昨日も奢ってもらいましたし!」

「ああ、そういうことなら安心よ。私じゃなくて、レイの奢りだから、心おきなくどーぞ」

「えっ?」

「はっ? ってマリ! アンタいつの間に!」


先輩がスッと掲げた右手には、私も持っている端末。

その端末にはレイ=ホワイトという文字が。


「相談料として後輩にくらい奢ってくれてもいいハズよ」

「いや、せやけどなぁ」

「まぁ、その方が負い目作れて、レミちゃんに本題切り出しやすいんじゃないのかしら?」

「むむむ、まぁ、そうか……そうやんなぁ……」


本題? まぁ、何となく予想はつくけども。


「単刀直入に言うで、サイジさん、怒ってない?」


ですよね。

まぁ、解せぬという顔つきではあったけど怒ってはいない……とは思う。


「大丈夫だとは思いますよ。というか、どんなやり取りしたんですか?」

「せやなぁ、保護局に送るってゆーとったけど、話も通じん、文明的な要素も感じられないじゃあ、こっち送られても何にもならんぞ、って」

「ああ、目に浮かぶわね」

「しよったら、こっちは正規の手続きや、って引かんのや」

「これも目に浮かびますね」

「まぁ、恥ずかしい話な、こっちもまぁ、普通の人相手なら平常心で言えるんやけど、好いとるもんやからテンパってしもうてな。ついなじってしもうた」

「あ、そこまで行きましたか」


“つい”でなじるのがよく分からないけど、踏み込んではいけない世界だ。突っ込むのはよしておこう。


「レイは好きな子のことイジメたがる節があるからね」

「やかましい。けどな、保護局もボランティアじゃないから、研究機関に送った方がええと判断した場合、そのようにせぇとお達しがあるわけや。こっちは戦闘に慣れとる局員ばかりやない。せやから、『こっちも規則で決まっとんのや。嫌なら制度変えてみいや下っ端!』って」

「あら、なかなかのけっこう思い切ったわね」

「もう自分でも色々頭が沸騰しとってな……」

「係長は何て?」

「『むっ! しかし、こちらもお願いしたいのだが……』って困った声出してたな。いやもう、その声と態度が可愛くてなぁ……」

「あの、いきなり色々とレベルの高い話始めるのやめてくれます?」

「ただ、マイナスな評価は貰っとるよなぁ……。はぁ……」

「気にしてないと思いますけどねー」

「まぁ、レイなんかはスタイル良いんだから、体で迫れば誰でも落ちる気がしそうだけどね」


確かに。

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