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座学

呑気に二人を観戦していると、いきなり係長が私達へ向かって大きく跳躍する。

マリさんを回避する行動の一つではあるけれど、そのままステップを踏みながら、さらに近づいてくるではないか。

しまった! と思った時には既に手遅れ。とにかく散ろうと、二人で別々の方向へ駆けていくが、純粋なスピードで勝てる訳が無い。

さらに、ヤスモトさんと二人で固まっていたので、誤爆を避けるために罠も設置していなかった。

ザックリ言えば、油断していたのである。


「はい、ターッチ」


ポンとヤスモトさんの頭に手を置き、余裕しゃくしゃくといった様子でタッチした。

く、その場所を変わってくれはしないだろうか……。


「ふむ、ヤスモトが鬼か。それなら、ヤスモトの鬼が終わり次第、今日は切り上げよう。明日は座学だ」


座学、座学ねえ……過去問くれればぶっちゃけ要らない気もするんだけれども、そういう種族ですし私。

とはいえ、対策を講じておくのに越した事はない。

さて、ヤスモトさんの鬼ではあるが、速攻で私を何重にも重ねたカメレオンで作った檻によって捕まえて、あっさりと終わってしまった。

まあ、ちょっと疲れたし、サクッと終わるのはまあ、良い事だ。


「――――――で、こういったケースで関わる法律が、住居侵入罪だ」


というわけで、明くる日の終業後、会議室を使っての座学を行っている。

講師はもちろん係長だ。


「え、現行犯の場合、そういった法律は無効というか、許可や承諾なんかはいらないんじゃないんですか?」

「勘違いされやすいが、これはあくまで警察が令状などを取らずに捜査、取り締まり、検挙が出来るというだけで、俺達の移民局や軍隊には適応されない」

「えー……ならどうしたら良いんですか?」


今は移民を確保するにあたって、法令順守の授業である。

『私有地に突然現れた移民を、その場に居たので迅速に確保した』といった問題で、〇か×かで答えるといったものだ。

当然〇だと思ったが、どうやら違うらしい。


「とにかく、私有地の場合、所有者に許可を取らないとならん。書面がベストだが、音声データでも構わんから」

「そういえば、私もレミリアさんも、そういった承諾の手続きは取った事ないんですけど?」


ヤスモトさんの言う通り、所有者とやり取りすらしたことがない。


「それは移民局へ通報があった場合か、予兆や予言を計測した上で、即座に警察や消防から所有者に連絡をしている場合だからだ。俺達が初動という事ではない、というのも併せて覚えておいてくれ」

「ちなみになんですが、公共の場なんかは特に必要無いですよね?」

「そうだな。しかし、そこが商業施設だと問題が発生する場合がある」


そういえば、魔界のショッピングモールで移民をやっつけた事があったけど、それも皇国の外だからセーフなのだろうか? それとももっとアウト?


「商業施設だと何か問題が?」


ちょっと緊張しながら問い返す。


「ああ、もしかしたら業務妨害などにかかるかもしれないんだ」

「転移した奴によっては、業務どころじゃなくなると思うんですけども……」

「よし、そこも併せて解説するか。さっきのようなケースも含めて、許可も何も無しに、俺達がどうこう出来るようになるのは、何かしらが起こってからだ。殺しや破壊、汚染とかな」

「じゃあ、そういったものが無ければ、手出しは出来ないって事ですね?」

「……そうとも言えんのだがな……」

「へ?」

「これは形あるものに限った話ではない。例えば、精神を侵してくる奴も居たりするだろう? そういう事にしておけばいい。これは試験には出てこないが、抜け道として覚えておくと良い」

「なーるほど」

「そして、業務妨害の件だが、無害な移民かもしれないのに、予兆だけで依頼も無しにあれこれするんじゃない、って話だな。反社会的勢力が転移を仕掛けて、俺達を出動させ、店舗などを営業できないようにしていた事もあったからな」

「そっか、そういう事もあったんですね。納得はイマイチできませんが、理解はしました」

「うむ、よろしい」


と、こんな感じで仕事に関わる法律を学んでいく。

今まで私達は好き放題していたが、よくもまぁ始末書だけで済んでいたものだ。

などと、変なところで安心してしまった。

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