鬼ごっこ2
「まさか、やられるとは思わなかったなぁ……」
「私もビックリしています」
「特性使っても、もしかしたらやられてたかもしれないわ」
「いえ、そんな事はないですよ。それに、先輩は何でブレイブを縛ったんですか?」
「係長も言っていたけど、私の能力を子どもの遊びに使うのは、凶悪過ぎるでしょ?」
「まあ、確かに凶悪ですけれど、私だったら禁じられていないのなら使っていましたね」
「大人げないわねー」
ジトっとした目をこちらに向けるマリさんの背後から、ヤスモトさんと係長の二人が歩み寄ってきた。
「ふむ、よく捕らえたものだな、レミリア。このまま継続でもう一回くらいやってみるか」
「えーと、先輩が鬼って事ですか?」
「ああ、逃げる判断も必要だからな。俺達移民局が手に負えないとなれば、警察や軍の仕事になる。その連絡や報告をする為に、何としても生き延びる事を優先しろ」
「なるほど……」
「あの、お二人でも撤退した事あるんですか?」
少し怯えたようにヤスモトさんが聞く。
「俺はそこそこある」
「私は一回ね」
「お二人でもあるんですね、そんな事が……」
「俺の場合、どうしても対応できない相手も居るからな」
「係長が相手出来ないっていうと、不定形や霊体とかですか?」
「あまり聞いてくれるな、人にペラペラと話す事ではないからな」
「あ、すみません」
確かにデリケートな問題だしなー。
だって、自分の弱点を晒すのと同意でもあるし。
ちょっと私も不躾過ぎた。
「私は、ちょっと巨大なアレが出てきたのよね」
「アレ?」
「その、汚い所にいるアレ、よ」
「ああ、アレですか……虫の」
「そう。他の虫はまだ大丈夫だけど、アレだけは……」
私もとても苦手なアレの話を、二人で顔を引きつらせながらしていた。
「こんな風に、苦手なものっていうのは誰にだってある。さっきも言ったかもしれないが、そういった時は全力で逃げろ」
「わかりました!」
この二人でも勝てない移民が居るのは驚いたが、やはり相性というのは大切だ。
私のアンタッチャブルも、実体のないものは不得手だし。
「さ、二回戦目、やっていきましょう。数えますよー、いーち、にー」
「え、ちょ!」
慌ててマリさんから離れる。
逃げる時の手段を考えておかないと。
障壁を展開しながら、走って逃げるのが常とう手段としておこう。
「あ、そんなに二人は狙わないから安心して! 行きますよー係長」
「む、お前が相手なら、特性を使いたいところだが」
「ダメですってー、たまには平でやりましょうよ」
「仕方がない、か……」
実力者二人が、出てくる作品間違ってんじゃないかっていう動きでお互いの動きの裏をかき合う。
私とヤスモトさんは、二人で固まり、その様子を眺めていた。
ちなみに、二人なら、最悪一人は逃げられるだろうという算段の下、集合したのである。
残像を出したり、宙返りで頭の上を越したり、映画や漫画を見ているようだ。
あー、ポップコーンとか売ってないかな?