セレブの意味とは何でしょう?
さて、お昼のニュースは、今回のテロで持ち切りである。
当然、マリさんの事も大きく取り上げられ、私もチラっと映っていた。
アレックスは上手い事隠れていたようで、見切れもしていない。なんだその特技は。
「セレブの人は大変だねぇ」
「アレックス、もう終わったんですか?」
「ああ、ようやく公安から何から、連絡と報告を取り合えたよ」
別室から出てきたアレックスは、ちょっと気疲れしている。
「セレブねぇ……」
「そういえば、セレブってどういう意味ですか? 異界の言葉ですよね? 何となく、お金持ちっぽいイメージですが」
「名士とか有名人って意味だね。あと、お騒がせ人って意味もあるそうだよ、移民の知り合いの話だと。知名度はお金を生み出すから間違ってはいないけどね」
「あら、貧乏な有名人だって居るでしょう?」
「確かにね、ま、ともかくお嬢様は有名人でお金持ちだ」
それを聞いて、マリさんは大きくため息を一つ。
「はあぁ~~……そのイメージってホントやなのよねぇ」
「けれども事実だ」
アレックス、自分の雇い主にけっこう言いやがるな。
まぁ、そこら辺も気に入っているんだろうけど。
「セレブってイメージより、セレブから来るイメージが嫌なのよ、『絶対悪い事してる』とか、『態度が横柄だ』とか、『成金趣味だ』とか」
「そういうのが少なくないのも事実だからねぇ」
何が面白いのか、クックックと笑いながらアレックスは相槌を打った。
「横柄な態度って言ってもね、儀式や式典である程度偉そうにしておかないといけないじゃない? 極端な話、馬鹿みたいな話し方より、偉そうな話をする方が良い場合もあるって事を、皆分かってほしいなぁ」
横柄とは、偉そうという事で、そもそも偉い人間が偉ぶって何がおかしいのかと。
ただ、それが気に食わない人間も居るのは確かだ。
「確かに、私の家も名士ではありますが、やっぱり大仰な言い方をするのを求められているのは、見てきています」
「あのおじいちゃんが、真面目に話しているのって、ちょっとおかしかったよね」
「キーヨさんが? とても落ち着いて忠義に厚い好人物じゃない?」
「あの、マリさん、私ブックマンの所業を、空からご覧になりましたよね? つまりまぁ……そういう事です」
「その例に違わず、って事なのね、ちょっと意外。あと、贈り物っていうのもあるじゃない?」
「ありますねぇ」
「それも、厄介なのよね。気持ちは嬉しいけど、趣味が悪かったりするものがあったりして……」
「その結果が『成金趣味』呼ばわりですかね」
「もうねー、不可抗力で言われるって、嫌ー」
子どもっぽく言うマリさんはとても可愛かった。
そんな可愛らしい人も、どんな意味でも正しく通る、セレブな人、マリさんでもある。
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