マリさんの目的2
移民での親衛隊。
史上最強とも目される、マリ・ミストラルの側近として、公職に就くとなれば、移民への感情は和らぐだろう。
マリさんの言う通り、まだまだ移民への理解は進んでいない。
まぁ、それは私のような魔族の血が入っている人間からしても同じ事だけど。
とにかく、移民や魔族といった、皇国の人間からしてみれば『よく分からないもの』は、興味の対象でもあると同時に、恐怖の対象でもある。
確かに、能力を持ち、色々な修羅場を経験した移民は多い。
しかし、その恐怖、脅威を頼れる存在としてしまえば、不安も解消される事だろう。
マリさんにしか出来ない業だと、私は思った。
「親衛隊、なんかカッコいいですねぇ」
「あらそう? まぁ、名前とかも後世に残るのなら、ちゃんと考えないとね」
「ちなみに、継承はされていくんですか?」
圧倒的な実力を持つマリさんの下に集う人間は少なくないと思うが、それ以外の人間には……と考える人間は如何ほどだろうか。
「あー……そんな先の事は考えていなかったなぁ……。やってみて、良いものだと思えば、続けさせるとは思うけれど。本来なら、そんな機関を作らずに、平等な世になってくれるのがベストだけどね。ぶっちゃけた話、私の代で、皇国の世襲制度は終わりにしたいもの」
「これはまた、ぶっちゃけますねぇ……今だって、議会とか選挙もあるので、独裁とは言えないような気がしますけどねぇ。どんなお話合いをしているのかは分かりかねますが」
「まあ、国会の審議は放送されているけど、物事の駆け引きはそれの外で行われているものだからね。さて、それはそれとして、だけど……レミちゃん?」
「はい、何でしょう?」
「移民局を辞めるつもりはない?」
「え?」
思考がフリーズした。
それを察して、係長が助け舟を出してくれる。
「いくらなんでも端折り過ぎだ。もう少し丁寧に伝えてやれ」
「ほら、レミちゃん、察しが良いからつい、ね。親衛隊とは別に、魔族の部隊を作るのよ」
「魔族の部隊……?」
「ええ、それも、後方支援に特化した部隊をね。魔族が前線に立つと、やっぱり野蛮な生き物だ、とか言われかねないからね」
「そこに、私が入るって事ですか?」
「ええ、魔族と人間の間に産まれた貴女なら、架け橋になってくれるんじゃないかな、って」
「架け橋……」
「そう、私は強欲な人間でね、全ての人間が幸せになってほしいの。少なくとも、私の国ではね」
「私達魔族も、ですか」
「こうやって、人種やルーツで括って場所を用意するのは、差別って言われるだろうけどね」
「そこの線引きはデリケートですからねー」
「私は区別のつもりでも、捉えられ方はどうしようもないから諦めてるわ。それに、私がこうやって、平等に公平にと是正しようってのも、差別の意識だと言われれば、確かにそうだしね」
「んー、差別を肯定する訳ではないですが、王族っていう存在はある意味ランク外の殿堂入りですから、王の下に平等、公平、平和、っていうのは悪くないんじゃないですかね?」
「ベターよりもベストを目指したい、子どもっぽい思考なのよ、私」
純粋な思考が自分の事のように嬉しい。
「どうしたって管理しなくちゃいけない人間って出てきますし。もちろん、独裁の悪政ってのは止めてもらいたいですけど。個人的に言わせてもらうと、トイレやお風呂で男女が分かれているように、これは区別だと思いますけどねー」
「で、どうかしら? 私の直属機関への転職は?」
どうしよう、何故だか分からないけど、即答できなかったのである。




