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「……スカーレット」
「は、はい……ですわ……」
改めて講義をする羽目になると思いませんでしたよ! ええ!
ざっくり言えば、一枚岩でないにしろ派閥問題ってのは根深い問題であるってことです。
現在、国王陛下の御子はお二人だけ。
王太子殿下と、プリメラさま。
現段階でお二人の仲は良好ですし、プリメラさまはバウム家に嫁ぐことが決まっておりますが……それでもまだそれは成立していない以上、まだまだ派閥が絡んでくるのです!
「プリメラさまを今になって擁立しようという輩はいないとは思いますが、それでも王太子殿下に対し反発する勢力と縁づく可能性が僅かでもあるのであれば、警戒される対象となるのです」
プリメラさまにそのおつもりがなくても。
スカーレットにそのつもりがなくても。
ただし、貴族令嬢の結婚は基本的に家長が定めるもの。
家の利を取るか、王家に尽くす姿勢を見せるかはどちらも両立できるとも言えますし、どちらかだけとっても現段階であればどちらも正解です。
なんせスカーレットがプリメラさまの降嫁に際しついていく、それは確定ではないのです。
そういう方向で話をまとめようかと思っている、程度なのですから!
スカーレットがだめならきっとデボラさんが、デボラさんがだめならやっぱり私で……って感じに王妃さまはお考えだと思いますよ。うん。
デボラさんは現段階では王女宮の侍女となっておりますが、将来的には王妃さまのところに戻って文官になる予定です。
でもあくまで予定。
本当に必要だということであれば、結婚しろって言われない限りなんでもしますよ! くらい肝が据わっている人なので……。
(デボラさんの家の派閥は王族派。軍部派とはいえ王族に忠誠を誓うバウム家に行く分には反対もしないだろうし)
ある意味で、プリメラさまを国防の要とも呼ばれるバウム家の女主人として支えるのにデボラさんは適しているとも言えますが……なんせ文官方向にも優秀だから王妃さまもできたら自分のところに置いておきたいでしょうしね……。
人事って難しい。
で、スカーレットですよ。
侯爵家の令嬢であり、プリメラさまから信頼を得た今であればついて行くに十分な資格があります。
でも、未婚。そう、未婚。
まあぶっちゃけ私もそうですが、スカーレットもこの世界の貴族社会に置いては行かず後家扱いですからね!!
まあ私は婚約が定まったので、晩婚扱いですけどね……。
世間って世知辛い。
私はまだ! ピチピチ! ですけど!?
(……まあそうやって思う人ほど年を重ねてるって言われるのよねえ……)
本当に世知辛いな!!
まあそれはともかくとして、私がもう一度説明したことによってスカーレットも思い出したらしく、しおしおとしてしまいました。
いいんですよ、反省して次は気をつけましょうね。
どうやらスカーレットのお母さまもそちらについて考えが及んでいなかったようで、目を何度か瞬かせてらっしゃいました。
スカーレットは全般に、お母さま似なのかもしれません。
「別にどこの派閥に属していようと、親しくしていようと、それは個人や家の自由だわ。実際、筆頭侍女であってもそういったものとはむしろ縁があるものだし……」
うちは弱小すぎて派閥はどこだよ? って問われたらお父さまが存在感を必死で消す姿しか思い出せません。
そのくらい弱小です。
領地持ち貴族って割とどこかの派閥に属しているものなんですけどね……?
まあ強いて言うならば、あの妖怪爺と縁づいたことを鑑みて貴族派……なんじゃないで、しょうかね……?
断言はできませんが。
それに内宮筆頭だってスカーレットを預かったのは縁故だからですし、他の侍女たちだってそれ相応にあちこちと縁があって当然なのです。
王城内にどれだけの貴族がいて、その家族がいるのかって話ですから。
ただそれを悪用しようとしたりする人がいるから気をつけなくちゃいけませんよってことです。
特に結婚となると非常に面倒くさいですからね。
今! 身を以て体感している私が言うのですから間違いありませんよ!!




