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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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「……そう、ふぅん。なるほどねえ」


「放置しておりました私どもにも問題はあると自覚しております。その点については反省もしておりますが……」


 扇子で口元を隠した王太后さま、ちょっとだけ呆れた空気を感じますね……。

 いやわかってますって!

 わかっていますし反省もしてますから!!


(いや違うな……これは私に対する呆れって言うより、他の誰かに対してだわ)


 王太后さまはやはり淑女の中の淑女、その中でも歴戦の淑女ですから心の内を上手に隠されますが、ある程度付き合いの長い人間には隠さなくても良いと思っていらっしゃるのです。

 ええ、ええ、光栄なことに私もそのうちの一人に含まれているようです!

 これは針子のおばあちゃんから教えてもらいましたよ!!


 まあ貴族の中には使用人は生きている家具くらいにしか思わないから取り繕わない……なんて噂もありますが、それはレアケースですからね?


「……そうねえ」


 パチンと扇子が閉じる小さな音。

 王太后さまはにっこりと微笑んでいらっしゃいましたが、目は笑っていません。


「今回の社交は諦めて結婚式に集中なさいな、ユリア。今のうちに準備を終えて、生誕祭の際にわたくしが(・・・・・)貴女たちを適切な相手に紹介しましょう。それで補えるはずだから」


「は、はい」


「気になることがあれば後宮筆頭に相談するといいわ。あの子はそういうところに詳しいから」


 笑顔が、怖ぁい……。


 確かに後宮筆頭はそういうことに詳しいですよね。

 王宮において後宮は生活の要。

 なんといっても国王陛下がお休みになるのですから!


 そのため、後宮筆頭は私たち以上に多くの貴族たちからの接触があるのです。

 ちなみに私が見習いの時に既に後宮筆頭だったわけですから、そりゃもうあの柔和な笑顔の下は……ね?


(……何かあったら頼りにしようそうしよう)


「とりあえず今回の件についてはわたくしが対処します」


「はい、ありがとうございます」


 王太后さまがなんとかしてくれるってんならそれで大丈夫でしょう!

 今夜にでもアルダールには伝えておけばいいですしね……苦笑される未来が見えますが、まあ長いものには巻かれろって言いますし……なんか違うな!


「詳しく聞かないのね?」


「私ごときでは対処しきれない話かと思いましたので」


「まあその通りなのだけれど……察しが良くて助かる反面、手がかからなすぎて心配だわ」


「そう、でしょうか……」


 かなりご面倒をかけてますが?

 私が小首を傾げると、王太后さまは困ったように右手を頬に添えられました。


「いくら宮仕えが長いからって、理不尽なことをされたら怒ってもいいのよ? 勿論、誰彼構わずそれを言うことはできないとわかっています。特にわたくしやプリメラに言うなんてできるはずもないでしょうからね」


「それは……」


 なんせ王族の方ですものね!

 そんな尊い方に気軽に(?)相談させてもらっちゃってるだけでも図太いと思うんですが!!


 とはいえね、怒ってもいい……と言われても正直困るんですよ。

 王城内に暮らす私や、近衛騎士であるアルダールに届かない手紙。

 それで苦情も何も出ていないってことを考えるなら、ある程度予想もできようってもんですから。


(それにその状況を理解して、私もアルダールも忙しさにかまけて放っておいてしまった)


 もう大丈夫ですよと言いたいところだけど、結婚式の準備に追われているのも事実。

 なんせ年末から年始にかけて王族の公式行事続きですから、その準備に大忙しなわけですし……。


(とはいえ、いつまでもせき止められていては私たち自身のためにならないということを王太后さまも理解してくださっている。生誕祭の折に紹介してくださる方々は、きっとミスルトゥ子爵家にとって良い関係を築ける相手ということ……)


 だったら怒る必要はないかなと思います。

 怒るのって意外とエネルギーが要るので、疲れちゃいますからね!


「確かに、思うところがあるのは事実です。しかしそれを理解し、こうして優しいお言葉をかけてくださる王太后さまを始め、私たちに手を差し伸べてくださる方々が大勢いることを考えれば十分でございます」


 満点回答でしょう!

 まあ本音ですけどね。


 私は恵まれているのです。

 プリメラさまと共にあれたらそれでいいと思いながら、プリメラさまのおかげで私の世界は広がった……これは揺るぎない事実。


 そして私が一生懸命に、誠実にプリメラさまにお仕えしてきたことを評価してくださっている方々は、困ったときにいつだって手を差し伸べてくださいました。

 今もこうして王太后さまは、私の心について心配してくださっているのです。


 こんな素敵な人たちに囲まれて、どうしてたかが手紙をせき止めた国王陛下と多分実行を命じられた宰相閣下と近衛騎士隊長さまを咎められましょうか!

 おっと……誰が犯人かはわからないんでした。

 勝手に決めつけちゃだめですね。ふふ。


「ですから、大丈夫です。まずは王太后さまが仰るように、生誕祭以降の社交に注力できるよう結婚式とお披露目式の準備を済ませようと思います」


 まあすぐに社交しなくてよかったって、ちょっぴり思ったことは内緒ですよ!!

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― 新着の感想 ―
「手紙を止める事が出来る」「王太后様があきれる」となったらそうですよね(おそらく)そこですよね…… 王太后様も筆頭様もかっこよくて好き……
さすが陛下、いつも誰もがあきれる方向へ大鉈を振るわれる
王太后様イケメンだわぁ
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