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621 誰にも必要とされなかった日記(抜粋)

今回の話はあまり本編に関係なく、またちょっと暗めではあるので飛ばし読みして大丈夫です!

――○月×日

 なんでこの世界にいるんだろう。

 帰りたくてたまらない。



――○月▲日

 愛してくれる人を愛して幸せなはずなのに。

 憧れた世界にいるはずなのに思い出すのは前の暮らしばかり。

 旅行先を楽しむような気持ちはもう消え失せた。


 自分が自分じゃなくなるみたいで怖い。



――▲月○日

 どうして無邪気でいられたんだろう。わからない。

 彼に、今の自分はもう前の世界の自分とは違うんだって言われた。

 そんなことない、自分は自分だ。何も違わない!



――▲月×日

 以前言い合いしてから彼と上手くいかない。

 わかっている、自分が悪いことくらい。

 でもこの世界は自分が暮らしているものではない、仮のものにしか思えない。

 気持ちが悪い。

 どうして未来現れるかもわからないヒロインのために(字が汚くて判別不能)



――●月▼日

 いつかじぶんがじぶんでなくなるきがするからにっきはかきつづける



――●月×日

 にげだしてしまった。彼にはあんなに良くしてもらったのに。

 お店の名前までつけさせてくれて、結婚や、将来子供を持ったら……なんて未来の話までしてくれたのに。

 でも、そんなの……まるで自分が、戻れなくなるみたいで怖くなってしまった。



――●月▲日

 目が覚める度に自己嫌悪に陥る。

 逃げ出したところで元の世界に戻れるわけでもなく、あの誠実な人を捨てた愚かさに苛まれる日々だ。

 けど、これまで生きてきたあの日々を鮮明に思い出せるのに、どうしてこの世界を生きることを選べるだろう。

 ゲームの世界に生きるには、未練が多すぎた。帰りたい。



――◎月●日

 あの人のお兄さんに見つかってしまった。

 連れ戻されるかと思いきや、王都にほど近い土地に家を用意したと言われた。

 この村から出ないなら身の安全を保証すると言われた。

 あの人に連絡を取るなと、強く、強く言われた。



――×月▲日

 どこから間違えたんだろう。

 最初からか。



――×月×日

 王都に流行の店があると、夫がチョコレートを買ってきてくれた。

 箱の印字はミッチェラン。

 ああ、あの人は成功したのだと思うと、申し訳なさから涙が零れた。

 夫は喜びの涙と勘違いしてくれたのが幸いだった。

 なんて自分が愚かなのだろうと再び泣けた。泣く資格なんてないのに。



――×月▲日

 約束を破って王都に行き、こっそり店を見た。

 遠目にだけれど、一緒に作り上げたあの店はあのままだった。

 あの人の姿を一目見たかったけれど、それはできなかった。

 あの人のお兄さんに見つかってしまったから。

 安全の保証なんて言ったけど、恐ろしいことは何もされなかった。

 いっそ罰して欲しかった。



――×月●日

 お兄さん経由であの人が今も独り身で、今も探し続けていると聞いた。

 結婚して、子供まで生まれている自分がどこまでもずるくて汚い存在に思えた。

 どうして戻らなかったんだろう。

 結局この世界に生きている。



――×月(掠れて判別不能)

 ヒロインのための世界なんて存在しない。

 作り上げたのは、勝手な思い込みをした自分だ。

 いつまでも前世とやらに囚われて、周りを巻き込んで、何をしているのだろう。

 結局今も元の世界には帰れないのに、やっぱりあの世界が恋しい。

 けど、この世界でであったあの人や夫、子供たちのことを愛しているのは事実で自分の身勝手さに反吐が出る。

 いつかヒロインに会えたら幸せか聞いてみたいと思った。

 ヒロインは、誰にも言われずとも、あのシナリオのような道を通って幸せになるんだろうか。



――(日付判別不能)

 かえりたい

帰りたかったのは、どこにだろう?

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