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園遊会を前に忙しいのはどこも一緒……なわけですが、うちは少数精鋭なおかげで教育は十分ですし、去年よりも人数が増えているおかげで仕事も分散できましたから楽勝です。
プリメラさまのおそばには今回デボラさんとライアンを控えさせ、メイナとスカーレットは今年も給仕に回ってもらうことにしました。
私とセバスチャンさんは見回りと挨拶回りの両方ですよ!
何故デボラさんとライアンなのかってところですが、この配置にも勿論意味があるんですよ……。
まずデボラさんですが、高位貴族出身と言うことでやはりプリメラさまのおそばで来客対応に一日の長があるという点。
そういう意味でのフォロー役は必要ですからね!
昨年は王太后さまがお隣にいらっしゃいましたが、今年は社交界デビューも果たしたということでお一人での対応となるのです。
だから高位貴族に対して顔の広いデボラさんが適役というわけです。
とはいえ、王太后さまもお近くで見守ってくださるそうなので心強いですよね!
次にライアンですが、将来的にフィライラ=ディルネさま付きの執事になることが内定しているとはいえ現在は王女宮の執事。
彼に対しての内示を知る人はまだいないはずですが、一部の高位貴族の間では彼がそうなるのでは? という予想が立てられているらしく、今のうちから声をかけて未来の王子妃に取り入るための布石としようとする動きが見られています。
まあ別にそれはいいんですよ、ある意味で想定内ですから!
(でも忙しい時にやらないでほしいのよね……)
こっちはボーナスが! かかってんですよ!!
ってことでライアンなら上手くやれることはわかっていますが、王太后さまの目もある場所なら下手なことをする人もいないだろうし……という配置です。
まあそれ以外にもプリメラさまに対して怪しげな言動の輩がいたらチェックと調査までがライアンのお仕事です。
そんな人はいないと思いますけどね。
念のためにね! 私は王女宮の責任者ですから……!
で、メイナとスカーレットに関しては去年の二人の活躍がありましたし、そこでお友だちも増えたらしくて……一緒に給仕をやりたいって本人たちからの希望です。
今回はスカーレットもお客さまとの会話も業務に含まれています。
今の彼女なら大丈夫でしょう!
というわけで、園遊会に向けての準備は着々と進んでおります。
当日のプリメラさまのドレスも三パターンほど準備済みですよ!
まあ、その前にフィライラ=ディルネさまのお茶会なんですけどね……。
顔出し程度とはいえ、今回はライアンと私がお供につくことになっております。
(もうミュリエッタさんがいてもわざわざこちらに突っかかってくることもないでしょうし……)
それどころじゃないでしょうからね。
でも助けを求められたらお優しいプリメラさまのことです。
どうなさるおつもりか……いえ、お茶会の責任者はフィライラ=ディルネさまですから、こちらがあまり気にすることではありませんが。
「それにしても慌ただしいわね……」
「そうですね、五日後にお茶会だなんて」
私の呟きにメイナが同意しました。
そう、なんとフィライラ=ディルネさまは五日後にお茶会を開くと招待状を送ってきたのです。
日中のお茶会だから気軽な格好でお越しください……といった趣旨の招待状でしたね。
表向きとしては『園遊会を前に準備も慌ただしい中開くので、みなさん気にしないでね』って感じでしょうが……裏では『見た目を着飾るよりも将来王子妃としての自分に対し中身で勝負してください』って意味合いもあるんじゃないかな、なんて邪推しております。
果たしてこの招待状に対して、ご令嬢たちはどう出るのか気になるところですね……!
(まあ何をしてもうちのプリメラさまが最強に可愛くて美しいのは変わらないんだけどね!!)