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 その後も陛下のお言葉が続き、ディーン・デインさまはなんと騎士に叙任されました。

 といってもどこかに属するわけではなく、プリメラさまの婚約者として相応しい身分を一つ新たに加えたってことですね。


 同い年からは頭一つ抜きん出て、国王陛下がお認めになっていると……国内外に示すおつもりでのことでしょう。

 プリメラさまもキラキラした眼差しでその光景を見ていらしたので、陛下のどや顔も三割増しですとも。


 ディーン・デインさまは肝が据わっていらっしゃるのか、今日という日に向けて覚悟を決めてきたのかはわかりませんが堂々たる振る舞いに周囲の貴族たちからも賞賛のため息が漏れていました。


 かっこいいですよ!

 ゲームでも見られない光景に私も興奮を隠せません!!


「よかったわね、アルダール」


「……うん」


 隣でアルダールも弟の晴れ姿に感無量といったところでしょうか?

 とても優しい眼差しでしたよ!

 

 そうして若き二人の記念すべき日だから……と陛下が言葉を結び。割れんばかりの拍手が贈られたのでした。


 その後は舞踏会の開始を陛下が宣言なさって、最初のダンスをプリメラさまとディーン・デインさまが踊られました。

 初々しいお二人の様子はもうね。

 絵画に残すべきです。ええ、その絵画を是非私にもいただきたいところ。

 とはいえさすがにそれは無理な話なので、脳内カメラで連写ですよ。


(ああ、プリメラさま……とっても嬉しそう)


 ディーン・デインさまと一緒に、仮面なしでホールを華麗なステップで踊るそのお姿はきっと忘れられません。

 これからもたくさんのよい思い出を残してもらいたいものです!!


 そうして二人のファーストダンスが終わったのを皮切りに、多くの人が踊り始めるのを見て私もアルダールを見上げました。


「踊っていただけますか、マイレディ」


「勿論、喜んで。私の騎士さま」


 どうだ!

 このくらいの切り返しはできるようになりましたよ!!


 いつまでも私がやられてばかりだと思ってくれるなよと笑みを浮かべれば、アルダールはくすりと笑って繋いだ私の手を持ち上げたかと思うと指先にちゅっと音を立てるようなキスを一つ。

 それからかしりと爪先を囓って、笑いました。


 あれっ、なんか私間違えた……?


「ユリア、忘れているかもしれないからもう一度伝えておくけど」


「は、はい」


「きみの婚約者は、嫉妬深くてことのほか婚約者に関してのことは心が狭いんだ」


「アルダール……」


「……今日ダンスを踊るのは私だけ、なんてさすがにそんな無茶は言わない。だけど、私に集中してほしいな」


 色気の! 暴力ゥ!!


 確かについさっきまでプリメラさまに全集中しちゃってたところは認めます、認めますけども。

 アルダールだってディーン・デインさまの晴れ姿に目を奪われていたくせにぃ!!


 そのままエスコートされてホールに足を踏み出した私の顔はきっとまだ赤かったと思いますが、幸いにも周囲の楽しそうな雰囲気の中ではバレずに済みそうです。

 きっとダンスを踊り終わった頃にははしゃぎすぎたせいだと思ってもらえることでしょう。


 それはそれで恥ずかしいのですが。

 ついでにそういう意味での運動不足は否めないので実際息切れしたらどうしようって不安もあるんですけどね!


 ダンスの練習はしてきましたが、それでも公の場でステップを失敗したらどうしようかなとかそういう不安もあって緊張していたことを思い出しました。


(……もしかしなくても、私の緊張をほぐそうとしてくれたのかしら)


 アルダールを見上げれば、いつものように蕩けるような眼差しが私を見つめています。

 うーん、私の婚約者は本当にいつまで経っても私に甘すぎる気がしますね。

 世の中のカップルってみんなこんな感じなのかしらと少しばかり疑問に思いましたが、私の周囲の人たちを考えるに……まあ、円満なら、いいのか……?


 緊張しつつ踊り出せばやはり楽しいものは楽しいもの。

 勿論慣れないことをしているので失敗しそうになることは多々あるのですが、我が婚約者の運動能力の高さに助けられて失敗せずに踊れています。


 そうして踊っていると、踊っていない人たちの中にミュリエッタさんの姿が見えました。

 どうやらリード・マルクくんと一緒に挨拶回りをしているようです。


「どうかした?」


「あちらにミュリエッタさんたちがいたわ。……踊り終わっても、別のところにいれば問題ないかなって」


「なるほどね」


 位置さえわかれば避けられるってもんですよ!

 ずるいって言わないの。これも処世術です。


 あちらだって私たちと顔を合わせるのはちょっとばかり気まずいでしょうし……って思ったらなんだか見られているような気がして、またターンをした時にぱちりと視線が合ってしまいました。


 じっと見つめてくる、ミュリエッタさん。

 ちょうど曲が途切れたのをいいことに、私は視線をそらしました。


 なんとなく無視したみたいで心が痛みますが……いえ、実際無視したと言っても間違いではありませんから、なんともこう、複雑な気持ちですが。

 

 でも私たちからは決して近づかないって決めたんですから、ブレてはいけないのよユリア!

 そう自分を鼓舞して、私はアルダールと一緒に彼女たちから遠離るのでした。

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