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あ~~~~~~~~~~~~可愛い~~~~~~~!!
試着をなさったところも拝見しておりますし、我ら王女宮の総力を挙げてプリメラさまが最高に輝ける一日を送れるようにと日々お手入れも頑張ってきた結果がここに!
元より大天使としてそのお心の美しさが表に出ていたプリメラさまですが、今日の美しさは! 神がかっておられますとも!!
輝く金の髪にはオレンジの薔薇を模した髪飾りと真珠を飾り、ドレスは白を基調としたレースの下に淡い色合いが見えるというふんわりと可愛らしくもありながら清楚かつその華奢さも相俟って儚さもありつつ、年頃の少女としての溌剌とした雰囲気に加えて以前よりも成長したそのお姿は王女としての気品に満ち溢れ輝くばかりです。
女の子の一年という成長は、なんとあっという間なのでしょう。
昨年は天使や花の妖精かと見まごうばかりでしたが、今年はもう……女神降臨なのでは?
年々輝きを増すプリメラさまのその目映いお姿に、感動を禁じ得ません。
(あっ、こっちに気がついた!)
ふわっと微笑みを浮かべるプリメラさまに心の中で大きく手を振り返しつつ、私はただただ感無量です。
(昨年はまだ仮面があったからお化粧も控えめだったけれど、今年はばっちりアイメイクもして……メイナ、また腕を上げたわね……!!)
プリメラさまが元々素晴らしいってのは大前提ですが、メイナのお化粧の技術、スカーレットの髪結いといった積み重ねが今の輝きとなっているのです。
なんと誇らしいことでしょう!
(私が最後まで携われなかったことが悔やまれる……!!)
ああでも安心して仕事を託せるまでに成長した後輩たちに対するこの喜びも味わえたのだからどちらがいいなんて選べません。
上司としても先輩としても、誇らしいの一言ですよ!!
「……ユリア嬢の視界にお前はまるで入っていないみたいだけど、大丈夫か?」
「隣は私の指定席ですから大丈夫ですよ、先輩」
「ちょ、何仰ってるんです!?」
小声でぼそぼそとキース・レッスさまとアルダールが変なことを言っているからつい突っ込んでしまいましたが、私は小さく咳払いして他の人々と同じように王族の皆さまが所定の位置についたのを見計らってから頭を下げました。
これは一つの決まりごとみたいなもので、入場の際は頭を下げる必要はありませんが所定の位置についてからご挨拶をいただき許しを得て頭を上げるといった儀礼的なものですね。
なんで所定の位置につくまでなのかとか、過去には細やかな理由もあったのでしょうが……今となっては特にそれを記されたり伝えられることもなく、ただなんとなく有事があった時には近くの貴族が肉盾になれるよう周囲をお互いに監視しろよってことなのかなって侍女たちの間ではそんなことが語られているのです。
騎士隊とかだとまた違う話かもしれませんね!
アルダールはそういうのに興味がなさそうなので、聞くならキース・レッスさまかハンスさんですかね……。
国王陛下のお言葉の後には……そう!
待ちに待った、プリメラさまへのお祝いと共に婚約発表なのですからね!!
「皆の者、顔を上げよ。今日は第一王女プリメラのために集まってくれたことをまずは感謝しよう」
陛下のそのお言葉に、私たちはみんな顔を上げます。
壇上では誰よりもニッコニコの陛下が傍らに立つプリメラさまの肩を抱きつつ、祝辞を述べられました。
ありがたいお言葉を右から左に聞き流して……なんてことはいたしませんが、まあ要約すると『うちの可愛い娘が健やかに成長して亡き妻の面影もありつつ自分と似ているところを見つける度にデレデレしちゃうけど親なんてそんなもんだよね』って感じの内容ですね。
若干、後方で王太后さまが遠い目をしていらっしゃる気がしますが気のせいでしょうかそうであってほしいですね……!
「そして我が娘プリメラは今日の良き日を機会に、これより本格的に社交を行うこととする。また同時に皆に伝えたいことがある」
陛下はそこで言葉を切り、会場全体を見回すようにして微笑みを浮かべました。
なんとなく強張っていたのは気のせいですよね。うん。
「バウム伯爵家のディーン・デインを我が娘プリメラの婚約者として正式に認めることと相成った。この喜ばしい発表を今日、この場で諸君らと分かち合えることを余も嬉しく思う!」
陛下のお言葉に、ディーン・デインさまが人々の前に進み出ました。
そして膝をつき頭を下げるその姿を、みんな、ただ見守るしかできないのでした。




