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 プライベートも充実、仕事環境は部下兼後輩たちが可愛いしお仕えするご主人さまは大天使だしで人生最高潮に幸せです!

 ……やたらと忙しいことを除けば!!


(プリメラさまの誕生日だから毎年陛下が張り切るのはわかる、わかるのよ……)


 ええ、そりゃもう毎年のことですからね。

 パーティーを開くようになってからはより一層、周囲に対して溺愛する娘を自慢したくてたまらない! ってのがありありと分かっていましたし……。


 もっと幼い頃は人見知りだったプリメラさまのことを慮って、ごくごく少数の高位貴族を集めたパーティーでしたが……年々その規模が大きくなっているんですよね。


 基本的に王族のパーティーとはいえ、主役であるプリメラさまのご希望を聞いた上で企画を立てて、それを担当部署に回して仕様書が届いて、それを確認していただいてまた変更点や疑問を解消した上で改良して……というごくごく普通の工程なんですけども。


 そこに陛下が絡んでくると面倒が増えるっていうか……。

 去年はカーテンについてはお任せでってプリメラさまが仰ってくださったので担当部署の方々が張り切って可愛らしい花柄のカーテンを用意してくださったんです。

 昼には日の光が透けて輝き、夜には蝋燭の光を受けてその色味が違って見えるという一風変わった品でしたが……その現物が届いて飾ったところ、陛下が王女の誕生日を祝うのだからもっと華やかなものにしよう! とか前日に言い出して大変な目に遭ったと後に聞きました。


(あちらの文官さんたちがお疲れだったものね……)


 話を聞いてそっと労いの気持ちを込めたお菓子を届けたことは記憶にあります。


 あの頃はほら、私も自分の社交界デビューで忙しかったですし? お手伝いできませんでしたからね!

 とはいえ、そもそも飾り付けの段になると王女宮の手は離れておりますので、できることはほぼないんですけども……。


 で、今回はケーキに注文が入ったんだそうです。


 今回のパーティーは軽食的なものを用意する予定ですが、そこにミニサイズのケーキを準備する予定でした。

 以前メッタボンが試作で薔薇を入れたゼリーを作ったんですが、それを是非お客さま方にも召し上がっていただきたいとプリメラさまが仰るのでそちらを。


 そして別に大きなケーキを用意しております。

 こちらは主役であるプリメラさまとご家族である王族の方々、そして婚約者としてディーン・デインさまが召し上がる用です。

 

 で、陛下がもの申しているのはこちらのご家族が召し上がる用ケーキの方ですね!

 プリメラさまの愛らしさと婚約のお祝い、それを彩るためにも特別なケーキであるべきだとか言い出しちゃったんだとか。


 毎年!

 特別ですけど!?

 プリメラさまの誕生日なんだから当然でしょう!?

 我らが大天使プリメラさまの誕生日ケーキに込める想い、毎度毎度特別ですけど!?


 ……と声を大にして言いたいところですが、勿論そこはみんなお利口さんに笑顔です。

 結局特別なケーキとは言われたらしいんですがそれ以上具体的な話もなかったそうで……えっ、どうしろと?


(いっつも丸投げなの、なんなの)


 今からケーキを考えろって言われた料理人のみなさん、お疲れ様です……!

 特殊な素材なんてことは今からでは難しいと思いますし、どうなることやら。


 けれどうちはメッタボンがむしろ張り切っていたので、楽しみにしておきたいと思います。


「メイナ、宝石類のチェックはどうなっているかしら」


「こちらになりますー!」


「スカーレット、王女殿下が直接送る招待状のリストは?」


「できておりますわ!!」


 少なくともこの公式行事であるパーティーは三ヶ月前に招待状を出すことになっています。

 つまり今、王女宮ではこの少ない人数で前よりも多い招待客への……いえ、でも人員が増えてますし!? やれますけど!?


「……ライアン、当日の警備予定について再度会場の位置確認とシャンデリアの変更を連絡してきてくれる?」


「承知いたしました」


「セバスチャンさんは……」


「はい、引き継ぎましょう。我らが筆頭侍女さまは少し休憩に入っていただきましょうぞ」


「……ありがとうございます」


 普段の業務がスムーズな分、こうした時はバタバタしてしまいますが……いやあ忙しい中にもきちんと休憩とお休みはあります。

 我が王女宮筆頭は常にホワイトですよ!!

 

 さて、休憩室に入ったならば私は私で個人的にすべきことがあります。


(そう……プリメラさまへのプレゼントよ!!)


 プレゼントする品は靴に決定しましたが……どんなデザインがいいでしょうか。

 サイズ? 勿論知っておりますからそこは無問題です。


 ちなみに噂によると国王陛下は馬車をご用意しておられるという話ですね。

 いずれ降嫁するにも持って行けるような特注の品だとか……とんでもないものじゃなきゃいいんですけども。


 王妃さまと王太子殿下はわかりませんが、王太后さまはパラソルをプレゼントすると仰っていました。

 それで今年は一緒に避暑地に行きたいとも仰ってましたね。素敵!


(……きっと今頃ディーン・デインさまも悩んでいるんだろうなあー)


 プリメラさまへのプレゼントですものね。

 気合いが入っちゃいますよね。

 しかも婚約発表して堂々とこれからは婚約者です! って名乗れるんだもんね!!


 あの初々しい二人が、今回ばかりは仮面もなしで発表の場に臨むのです……脳内カメラをフル稼働させねばなりません。


 本当に、切実に、誰かカメラを開発してくれませんかね……。

 ここは主人公補正もたっぷりなミュリエッタさんが突如閃いて、とかないかなあと思ってしまいますが……さすがにそれはないですね、はい。


 それよりも私が用意すべき靴ですよ。

 フルオーダーメイドですと通常は一年ほどかかってしまうものなので、今回はさすがに時間がありません。

 それに特別なものではありますが、それはあくまで〝お揃い〟という特別ですからね。

 むしろ重要なのは機能性。


(……乗馬用の編み上げブーツなんてどうかしら)


 既存のデザインに手を加えてもらう形ならば、三ヶ月ちょっとという短い期間でも準備できることを知っています。

 それなりに職人さんと親しくないとオーダーできない仕組みではありますが、幸いにも私は町の工房とは親しい……!

 それもこれもジェンダ商会に足繁く通っていたおかげですけどね!!


 ジェンダ商会に通い始めて、すっかり常連さんたちとも顔見知りになった頃に紹介していただいたんですよ。

 王城内で働いていた私はあまり外に行くお出かけ用の靴なども持ち合わせておらず……いやはや、あの頃は色気より食い気でしたしね……。


(……懐かしいな)


 ついつい勿体ない精神で実家から持ってきた靴を使い倒していた私を見かねて、ジェンダ商会の会頭さんが一緒に靴屋のおじさんのところまで行ってくれたんですよね。

 その時に、靴屋のおじさんから『まるで親子の買い物だなあ』って笑われて……。


 娘さんとよく買い物に来ていたんだよって、私は靴屋のおじさんに教えてもらったんです。


(オリビアさまも、きっと同じように買い物をしたのよね)


 王宮に納められるような高級なものとは言えませんが、品質は確かで履きやすさ抜群。

 それは〝王女殿下〟に贈るには相応しくないかもしれませんが、それでも〝プリメラさま〟に贈りたい。


「そうと決まれば、さっそく相談に行かなくちゃ!」


 乗馬用のブーツも流行り廃りがありますが、良いものは長く使えますからね。

 是非とも私とだけでなく、ディーン・デインさまとも乗馬に行くことを考えて愛用していただける品を作ってもらえるよう靴屋のおじさんに相談したいと思います!!

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