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「ユリアには以前話したと思うんだけど、私たちの師匠さまは剣聖と呼ばれるほどのすごい剣士であることに間違いはないんだ」


「その腕前をいかほどかと表現するならば、おそらく俺とアルダールが二人で斬りかかったとしても勝てるかどうかと言ったところか」


「それは……すごいですね」


 お二人が強いことはわかってますからね!

 以前、秋の園遊会で飛行型のモンスターを危なげなくやっつけていたことを考えると……えっ、お師匠さますごい。


 剣聖って本当にすごいんですね!?


 いえ軽んじていたわけではありませんが、実際のところがどうなのかとかさっぱり私みたいな内勤の侍女にはわからないわけでして……。

 軍部棟の侍女だったらまた違うかもしれないですけどね。


 ちなみにあの時のことは正直いっぱいいっぱいだったので、二人がすごいんだなあとは思いましたがそのすごさはよくわかってませんでした。

 でも周囲から聞こえてくる『すごい』『さすが』って声があったので、普通の兵士だと手間取るとか戦いにもならないとかそんな感じらしいってことは知っています。


 そんな二人がですよ?

 揃って斬りかかっても勝てるかどうか、ですって!


(アルダールが小さい頃お世話になったっていうんだから、当時すでに剣聖だったって話を考えたらもう結構なオトシじゃないのかしら……?)


 前世の感覚で言うとスポーツ選手だってピークがあるわけですし。

 ああでも、よく映画や漫画では老兵の中にこそ熟練の強者が……ってありますものね。

 ってことはそれなのか。


 やだ、すごい。

 よく考えたらセバスチャンさんだってイケジジイですけどあの人どう考えても強いですもんね! ありだわ!!


「師匠に関しては二年ほど前にふらりとシャグランの古巣に戻り、旅立つ様子もなかった。変わらず酒を浴びるように飲み、歓楽街へと足を向ける姿は確認されていたんだが……」


「そうだったのか」


「アルダールの婚約の話は、どうやら師匠を未だに抱き込もうとする貴族たちの誰かから聞いたようだ。それ自体はまあ、いいことなんだが」


 脳筋公爵が困ったような顔をするだけでなく、アルダールまで似たような表情をするからなんていうか……えっ、そんなに?


「そもそも貴様も知っているとは思うが、モンスターというのは大型の肉食獣よりも更に上位の危険生物。一般的には命知らずの冒険者や軍などが対処するほどの危険生物であるが同時にその皮、血、肉……全てが加工可能だとされている」


「はい、聞いたことはあります。ただ全てが加工可能というのはあくまで理論の問題だとか」


「うむ。錬金術師たちがそのように言っているだけで実際にはそこまでモンスターそのものが狩れるわけではないからな!」


 ハハハと快活に笑うけど、それだけ危険な敵ってことですよね?

 ゲームだとヒロインと学生生活を送るヒーローたちが交流を兼ねたイベントを重ね、ギルドに出入りしてお金を稼いだりもできるわけですが……。


 ああ、あれって迷惑なモンスターを退治するってのと素材とのダブルの収入だったんですね……今更ながらに納得してしまいました。

 道理で普通にアルバイトするよりも高額だと思いましたよ!


 ええ、勿論あのゲームでは負けてしまうこともあってその場合は体力が減って収入ももらえず数日無駄になるというペナルティーがありました。


「えっ、ということはお二人のお師匠さまが、私たちの婚約祝いでもしかしなくても大物を獲ってくる」


「そうだね。王侯貴族のために狩る……なんて話もどこぞの英雄譚なんかにはあるみたいだけど、それをやられそうってこと」


 アルダールが遠い目をしてふっと笑みを浮かべましたけど、ああー、これどうにもならないんですね!?

 脳筋公爵も頭抱えちゃってますしね!?


「ち、ちなみにバルムンク公爵さまの結婚式の時はいかような……」


「俺か。俺の時は特別な酒だった」


「お酒……」


「俺の結婚式では王も参列する。しつこく部下になるよう命令してくるからと師匠は顔を出さず、祝いの品だけを商人に届けさせて後日改めてお言葉はいただいた」


「そう、なんですね……」


 あらまあ、王さまにも望まれていたんですか。

 剣聖って本当にすごいんですね……それを断って許されているってのもびっくりですけども。


 いえ、許されているっていうかのらりくらりと逃げている、が正しいのかしら。


(……しかしその場合はあれですね、いただいたモンスターの扱いを間違えるとクーラウムとシャグラン、どちらの面目にも関わってくるってことですね……!?)


 そう……お師匠さまは確かシャグランの人間。

 その方が『弟子のために』と言いつつも王侯貴族から再三請われているにも関わらず放浪者な生活を送っているところに他国の下位貴族に見たこともない大物をプレゼントした……なんてなったらシャグラン王家は悔しくてたまらないことでしょう。


 そして同じくクーラウム王家も現役の剣聖が王家に手土産なしで大物のモンスターなんてすごいものを新興貴族が手に入れる、なんてなったら面目ってものが立ちません。

 かといって断れというのも狭量と思われるでしょうし、受け取ったモンスターを寄越せとも言えないでしょう。


 さらに新興で下位の貴族である私たちにとってそのモンスターはとてつもない財産になり得る可能性があって、それはそれでいろんな人たちが寄ってくる可能性が……。


(うわあああ)


 めんどう! くさい!!


 いえ、でもお祝いですものね。

 お師匠さまのお気持ちも受け取りつつ丸く収める方法を考えねばなりません!


「まずモンスターを狩りに行っているかどうかが問題ですね。そしてそれがいつになるのか、でしょうか」


「……おそらくモンスターを狩りに出たのは確かだ。師匠の動向を探らせている際に馴染みの酒場でそんなことを話していたらしいからな」


「シャグランあたりで大物のモンスター、クーラウムに持ってくることまで考えると生け捕りの可能性もある、か……?」


「ええ……」


 生け捕りはちょっと。

 いえ、とんでもなく大物とか希少種とかを持ち込まれても正直困るっていうか、食材としてだけならメッタボンが喜んでくれる気がしないでもないんですけども。

 あれっ、メッタボンってモンスター捌けるのかしら。

 捨てるところがないとはいえ、美味しくいただけるかどうかってのも問題でした。


 私も混乱していますね!


「とりあえずは今も動向を探る中で、モンスターをどうのということであれば……」


 男性二人を見ると、私の方を見ていた。

 いやそんな期待に満ちた目をされても困りますからね?


「すまんが細かいことは苦手でな!」


「悪いけれど何か妙案があるならそれを聞かせてもらいたいな」


「……すごくいいってわけじゃないですよ」


 そう、ありきたりにこの場にいる全員であちこちに対していい顔をするだけです。

 八方美人さながらに!!


 うん? それだとちょっとなんか響きが悪いですかね……。

 まあいいんですよ、平和にあちこち、経済回す。

 それがきっと一番なのですから!

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