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「そういやアルダールにも相談するんだったな」


「え? ええ、そうですね」


「なら呼ぶか」


「は?」


 何言い出すんですかねこの王弟殿下。

 アルダールは近衛騎士だから王城詰めなのは確かですけど、ホイホイ呼び出すようなもんじゃないでしょう。


 そんな風に思って呆れる私をよそに、王弟殿下はちりりんとベルを軽やかに鳴らして伝言を一つ、二つ事務官に伝えるとついでにお茶のおかわりまで申しつけていた。

 えっ、長いお話になるんですかね?


「誤解も受けない方がいいだろうし、あいつだってあれこれ手を回してるかもしれないし、こういうのは話し合っといた方がいいだろ」


「そういうものですか」


「そういうもんだ」


 まあ確かにアルダールも割と私に負担を掛けたくないからとかそういう理由で、こっそり片付けていたりするからなあ。

 それに王弟殿下が脅迫関連を片付けてくださるといっても、アルダールも動いていたらオーバーキルになるということ……?


 あっ、それはさすがに可哀想ですね!


 そうこうしている間にも軍事棟の侍女さんが来てお茶をティーポットごと、それから何故かお茶菓子を置いて去って行きました。

 えっ、自分で淹れろってことですか?

 困惑していると王弟殿下が笑いました。


「俺がそうしろって言ったんだ。気兼ねしなくていーだろ?」


「はあ……」


「ここじゃああんまり王族として堅ッ苦しいのは公的な客が来た時だけとしてンだ。肩が凝っていけねえ」


 なるほど、できるだけダラけたいと。

 わかるようなわかっていいのか? これ。


 そして私がお茶を淹れて少し経った頃合いで、アルダールがやってきました。

 入室して私がいることに驚いた様子の彼に、王弟殿下はにやりと笑います。


「悪いな、ちょいと相談事があってよ」


「相談事ですか?」


「ああ。まあ座れ」


「では、失礼します」


 私の横に座ったアルダールに私がお茶を置いたところで、王弟殿下が口を開きました。

 お行儀悪くソファの背もたれに思いっきり腕を乗っけていますけど。


「ユリアから相談を受けてな、俺の方でも少し動こうと思っているんだが……お前がどうするか、どうしたいか聞いておこうかと思ってよ」


「……どの件でしょう」


 どの件って。

 いやあむしろアルダールはどれを把握しているんですかね!?


 私はまだ相談していなかったので、私も知らないことなのか、それとも……。

 あらやだドキドキしちゃいますね。


「そうだな……ユリア、何が来てるか話してやれ」


「承知いたしました」


 結局こっちに話振るんかい!

 まあそりゃね、後ほど話すつもりだったから別に隠すわけでもなし、手間が省けたと思って私は先ほど王弟殿下に話した通りのことをアルダールに告げました。

 私の愛人志願の人たちのどこが彼に勝っているのだろうと疑問に思った点については黙させていただきましたけどね!


「……概ね、知っている内容です。いえ、実は同じようなものが私のところにも届いているので。脅迫めいたものはほぼありませんが……」


「まあそりゃそうだろう、お前相手に直接喧嘩を売るのはなあ」


「彼女に売るのもそう大差ないと思いますが」


「表面上しか物事を見られないやつってのはどこにでもいるんだよ」


 ハハハと乾いた笑いを浮かべる王弟殿下、今までに何があったんでしょうね。

 まあ偉い人には偉い人の苦労がありますからね!!


 それはともかくとして、アルダールが若干不機嫌そうですね……王弟殿下に相談していたってことを不満に思うよりは、私の愛人志願の人たちの話題あたりからなのでその辺でしょうか。

 うーんやきもちを焼いてもらうのは嬉しいですが、そんな人たち相手にされても微妙なこの乙女心はどう説明したら伝わるのでしょうか。


「それにしても、陛下に認めていただいた仲だというのに……これは結婚しても続くんでしょうか?」


「そうだなあ。愛人志願の連中には手っ取り早く、お前ら同棲しちまえば?」


 ケロッととんでもないこと言いましたね?

 アルダールもびっくりしてますよ?


 おそらく私は渋い顔になっていたことかと思いますが、王弟殿下はそんな私たちを見て笑いました。


「何も今から毎日暮らせって意味じゃあない。新居に二人がそれぞれ好きなときに泊まって、ああいや、勿論二人で泊まったっていいんだが……二人がほぼ結婚しているも同然だと見せつけてやりゃいいんだ」


「でもそれは婚約をしている段階でそうなのでは……?」


「まあなあ。兄上が仲を取り持ったんだ、結婚する以外の道はない。だがそれをプリメラのためだと未だに信じ込んでいる連中がいる。だからお前らに付け入る隙があると……まあ王都住まいの連中は知っていても、地方の連中は諦めがつかないんだろう」


「そういうものですか」


「そういうもんだ。町中でデート以外でも準備をしにあの家に通うお前らの姿を見たとなれば、お喋り雀どもが好き勝手に(さえず)ってくれることだろうよ」


 面倒だなあ、こっちだって仕事の都合があるから王城にいた方が何かと便利なんですけど!?

 そう言いたいところですがグッと堪えました。


 確かに王弟殿下の仰ることには一理ある、そう思ったのです。

 私たちは王城で行動を共にすることが多く、外に出る際もデートで少し。

 穿ち過ぎた物の見方しかできない人からすると『定期的に仲睦まじく見せている』だけだという風に捉えられなくもない、のかしら?


(でも旅行もしてるんだけどな……?)


 まあそういったものと、これから暮らす家に仲良く出入りをしている、個人的に利用しているというところを見せるのは『対外的なだけでなく、ちゃんと一緒に暮らすつもりである』と見せつけることに繋がるのでしょうか。


 それで愛人志願の人たちが減ってくださるならいいんですけども。

 いずれにせよ新居の準備はしなくちゃいけないものですしね……それは別に一緒に行かなくたってできることですから。


「お前らを今から新居に住まわせたら三日は出てこないだろ」


「え」


「そうですね、それは確かに」


「え」


 なんですかその物騒な監禁宣言!

 止めていただけますか恥ずかしいし怖いわ!!

 

 や、今ならきちんとその内容も理解できてますけどね?

 だからこそそういうのを本人を前にやらないでいただけますかね。


 というかアルダールも乗らない!


 私がジト目で彼らを見るとアルダールは素知らぬ顔を、そして王弟殿下は大笑い。

 まったくもう、笑いごっちゃないですよ。

 セクハラでビアンカさまに訴えるぞ!?


「まあ脅迫に関しては俺の方で受け持とう。愛人志願の連中はアルダール、男どもはお前の方でなんとかしろ。さすがに実力行使に出るようなバカはいねえだろうが、念のためな」


「承知いたしました」


「お前の方のは当分消えないだろうが、一応ビアンカに対処を頼んでおく。侍女に関しては必要としてないなら、このまま放っとけ。どうせユリアが統括侍女のバアさんあたりに報告するんだろ?」


「はい」


「それでもまだ突っかかってくる連中がいたらそれはどこの誰か確認して、そうだな……それぞれ上司に報告でいい。それで解決するようオレの方で整えておく」


「ありがとうございます」


「まあ新居の準備も忙しいだろうしな。婚約式は気が向けばオレも覗きに行くから頑張れよ」


 笑う王弟殿下は楽しそうでいいですね!

 ……でもまあ、確かに言われた内容は一つずつ片していかなければならないことなので、アルダールと私は顔を見合わせて小さく苦笑するのでした。


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