表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

478/642

475

 可愛い後輩たちと過ごす時間っていうのは大事だね……!

 そう思った夕飯でした。

 ちょっと食べ過ぎたかもしれない。


 私は二人がそれぞれ宿舎に戻るのを見送って、私も自室へと戻るために廊下を歩きながら今日のことを考えました。


 夕飯時にいくつか話をしている中で、いずれプリメラさまが降嫁なさった後のことなんかまで彼女たちがすでに考えていると言われました。


 いえ、いずれは……決めないといけないのですけれどね。

 それでもまだあと数年は先の話。

 そう思っていたから少し驚いてしまいました。

 まだこの子たちはそこまで考えていないだろうと思っていた私は、別に彼女たちを侮っていたわけではありません。


 学ぶこともまだ多く、公務に連れて行くことや私の代わりに行事でプリメラさまの後ろにつくこと、それらをまだ経験させていないのです。

 それらを終えてから……とそう私の中では思っていたので、あの子たちはあの子たちで未来へのビジョンがちゃんとできていて偉いなあと思いました。

 勿論、まだまだ漠然としたものではありましたが……私の結婚、これからの貴族の情勢、それらを踏まえてのものだったことにはびっくりです!


 というかまあ、実はスカーレットのところにハンスさんが来ていたって話なんですけどね。

 それで当然のことながら詳細は明かせないけど……って形で色々あって(・・・・・)ハンスさんはいずれ近衛騎士を辞職し、アルダールの侍従になるって話まではしてあるんだそうです。

 その際、私たちは忙しくなるし貴族たちから色々と注目されているからって話をされたんだそうです。


 うん、ハンスさん余計なことを吹き込まないでくれるかな?


(いずれは必要かもしれませんけど、今話すことでもないと思うのよね)


 将来的にプリメラさまが降嫁する時に誰が侍女としてつくのかとか、他のメンバーはどんな道があるのかとか。

 あと数年の間で学んだことによって、彼女らの選択肢はどんどんと変化していくものだと……そう私は思っているのです。


 だから早くから情報を得ることも大事ですが、逆に早すぎて視野を狭めるようなことは必要ないようにも思えました。


 とはいえもう話したって事実は消えないし、彼女たちを指導する私がきちんと監督していけば良いという話なのでしょうが……頑張ります。


(そういえば、婚約式を早めなければいけないわね)


 家名だとかハンスさんの話だとかで色々と悩みはありますが、目下のところそちらに関しても話を進めていかねばなりません。

 本来ならば貴族議会から許可を得てそこからのんびり(・・・・)二人で招く人を決めたり会場について話し合ったりと共同作業をするのですが、今回はもう異例中の異例ですもの。


 陛下による婚約の許可、早く結婚してしまえというお言葉。

 少なくとも三ヶ月以内には婚約式の体裁を整えないといけなくなったような気がします。

 下手したら半年後には結婚しろとか妙な圧がかけられるとか……ないよね? さすがにないよね?


(そうするとドレスも今から注文しておかないとだめかあ……)


 私個人としては地味なもので十分ですけど、さすがに子爵夫人となるのです。

 ハンスさんによればいずれは伯爵に陞爵してもらいたいってことですから、きっと『期待され』ているのでしょうね……いらんよ、そんな期待。


(アルダールに今のうちに話しておかなきゃ)


 アクセサリーもドレスも贈らせてって言われているんだからちゃんと相談しますよ!

 どうせだったら共色にしたいですし。

 うーん、でもアルダールはきっと騎士服だろうからスカーフか何かだけでも共色にしてもらえばいいのかしら。


(こういう時、私も侍女服でいければいいのになあ)


 いやあ、さすがにそれは許されないでしょうね!

 笑いは取れると思いますがその後、色んなところからお説教の雨あられが降ってくる未来が見えました。

 見える気がするんじゃない、見えたんです。


 それから家探しも並行してやらないといけないわけで……なんだっけ、宰相閣下のところの公爵家、あるいはバウム伯爵家、いずれかの町屋敷が近いことでしたね。

 

 あそこ一等地ですけど?

 一介の子爵家が借りるような土地じゃないですけど?

 はあーなんでこう偉い人って下の人の気持ちがわかんないかなあ!


(なんてね、心配してくれているだけよね)


 何かあったら助けに行ける距離にいろって意味でしょう。

 おそらくそこは王家の意向などないはずですから。


(……あと、こっそり援助とかを考えていそうで怖い)


 ビアンカさまとアリッサさま、方向性は違うけどお二方とも情に厚くて身内思いだから……ちょっとやり過ぎになりそうなところがあるのよね。

 というか、双方から援助が来そうで怖いなって正直思っていますよ!


「なんか相談することが山積みじゃない……?」


 思わず口からこぼれ落ちるのがため息ばっかりになるんですけど、どうしたらいいのかしら。

 いや一個ずつ片付けるしかないんだけども!


「あれ、ユリア?」


「……アルダール? えっ、どうしたの、こんなところで!」


 今日は夜勤だと聞いていたアルダールが、私の前に現れたのです。

 驚いて思わず声を上げてしまいましたが彼も驚いた様子で目を丸くしていました。


「いや、ちょっと急に警備の入れ替えがあって……同僚の一人と替わったから、今終わって部屋に戻るんだ」


「そうなのね」


 そういや騎士はそういうことがよくあると聞きますし、近衛騎士隊でもそれはおんなじなんだなあ、なんてちょっと感心してしまいました。

 アルダールは当たり前のように私の方に歩み寄って、一緒に歩き始めました。


 部屋まで送ってくれるつもりなんだなと気づいて、ちょっぴり嬉しくなったのは内緒です。


(こうして当たり前にやってくれるんだから、本当に紳士よねえ)


 そりゃモテるわ、なんて思いました。

 でもこれが私だけに……とかだったら、どうしよう顔がにやけちゃいそう。


「ユリアはどうしたんだい?」


「今日はメイナとスカーレットと一緒に食事をしてきたの」


「なるほど」


「あの子たちに、アルダールとばかりいないで自分たちとも……って言われてちょっと嬉しくなっちゃった」


「ユリアは慕われているからね」


 私はアルダールの言葉に笑顔を向けるだけにしました。

 なんだか肯定するとちょっと恥ずかしいし、謙遜でも否定するなんてそれはメイナとスカーレットに失礼な気がしたから。


「あ、そうだアルダールに相談があったの!」


「うん?」


「次の休みを合わせて町まで一緒に行ってもらえないかしら。その……婚約式をどうしても早めないといけないでしょう? この状況だと」


「……そうだね」


「とりあえず何も決まってはいないけど、ドレスとアクセサリーだけは先に注文しておかないといけないと思って」


「ああ、そうか。それもあった……家名の件でまだ決定が下りなくてそちらばかりに気を取られていたよ」


「しょうがないわ、私たちにとっても経験のないことだし」


 こればっかりはしょうがないよね。

 とりあえず、それこそ本当に一個ずつ片付けていくしかないのです。


 次の休みは幸いにも三日後に合うのがあるとか本当にラッキーです!

 今回急に警備の順が変わったりしたので、アルダールの方でお休みをもらえたのだとか。


 ……いえ、多分ですけどお願いしたら合わせるくらい、どちらの部署でも許してくれると思いますけどね?

 絶対、みんな生暖かい笑顔で『行ってらっしゃい、良い休日を!』とか言うんでしょう!?

 知ってるんだからな!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもよろしくお願いします!

魔法使いの名付け親完結済
天涯孤独になったと思ったら、名付け親だと名乗る魔法使いが現れた。
魔法使いに吸血鬼、果てには片思いの彼まで実はあやかしで……!?

悪役令嬢、拾いました!~しかも可愛いので、妹として大事にしたいと思います~完結済
転生者である主人公が拾ったのは、前世見た漫画の『悪役令嬢』だった……!?
しかし、その悪役令嬢はまったくもって可愛くって仕方がないので、全力で甘やかしたいと思います!

あなたと、恋がしたいです。完結済
現代恋愛、高校生男児のちょっと不思議な恋模様。
優しい気持ちになれる作品を目指しております!

ゴブリンさんは助けて欲しい!完結済

最弱モンスターがまさかの男前!? 濃ゆいキャラが当たり前!?
ファンタジーコメディです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ハンスさんって結局のところ、スカーレットのことどう思ってるのかなあ。好意があったのかな……お役目のためにスカーレットに幻滅(?)されたならちょっと可哀想かも……。 [一言] 侍女服はダ…
[良い点] パーフェクトコミュニケーションな職場環境 [一言] そういえばスカーレットは侯爵家の七女だから、王女の降嫁にくっついていくには適当そうですね。 一方でメイナは個人としては問題ないけれど出自…
[気になる点] あれ?待って?スカーレットって、ハンスが好きだったよね? わざわざ、スカーレットに説明しにくるとか、実はちゃんと両思いだった? って事は、将来スカーレットはハンスと一緒に、ユリアを主…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ