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 楽しい時間というのはあっという間に過ぎていくものだ。

 確か前世でちょっと齧った程度の心理学的には、“時間の経過に対する注意の度合いによって長く感じたり短く感じたりする”とかだった気がする。要するに退屈だからって時間ばっかり気にするから余計に時間が経たないんだってことですね。分かります、社長とか偉い人のお話とか延々と聞いている気がして、たかが15分とか30分くらいがものっすごく長いんですよね、実際の時間で考えたらまあ我慢できない程度じゃないはずなのに。ところが家でただだらっとしてテレビとか見てたらあっという間に時間が過ぎちゃってたりとか……あー、そんな日々ありました。


 まあ、転生なんかしちゃって侍女になってからは色々充実して忙しいからでしょうか、気が付くと夜になっていることが多い気がします。

 それはこの避暑地に来てからも変わりませんでした。


 まあね、メッタボンとレジーナさんに任せた蜂蜜に関しては心配してなかったですよ。なんだかんだ2人で仲良くちゃんと買い物してきた上に、レジーナさんの耳元に可愛らしい薔薇のピアスがあったのを私はしっかり見てましたよ。よしよし、ちゃんと恋人らしい時間も持てたようで何よりです! なんでも質の良い養蜂をする農家さんを見つけたらしく、薔薇の種類に合わせて手広くやられているので今後そこから定期購入することになったようです。え、事後報告なの? いや、ちゃんと書類を書いてから私に報告に来る辺り相当自信があるようですが。

 勿論、認可するかは上司である私ですから棄却される可能性も考えてはいたようですが、自信たっぷりでした。その目利きを信頼してますから構いませんけどね、そこは注意をいたしました。だって事後報告は困りますよ、事後報告は。

 あと量に関してはちょっと訂正させてもらいました。あんまり蜂蜜ばっかりあっても困りますし、財務官に色々言われちゃいそうですからね! 流石にお取り寄せとなるとちょっとお高くつきますから……定期購入だから色々安くはなるようですけど。メッタボンは残念そうにしていましたが、そういうところはシビアなのですよ! ちゃんと農園の方には量の訂正の件で謝罪に向かわせました。こういうところはちゃんとしておかないと後々に響くのです。

 ……前世、それで苦労していた営業さんを思い出したりなんかしてないのです。


 それと、カトラリーを任せたダンに関しては予想以上の働きを見せてくれました。私の好みを把握しているかのような素晴らしいカトラリーを作る工房を見つけて来てくれました。いくつか工房にアタリをつけてこれれば上々と思っていたので、やはりメッタボンの弟子ですね、素晴らしいです。

 ちょっと緊張しやすい性格をもっとコントロールできるようになれば、きっと様々な才能を芽吹かせることでしょう。

 これで次のディーン・デインさまをお招きしてのお茶会の準備は盤石の備えと言ってもいいでしょう! 陶磁器は王女宮に今あるもので十分ですから、そこに新しい薔薇のカトラリーと高山産の紅茶、それに薔薇の新作スイーツ!! あとはプリメラさまがディーン・デインさまに贈り物をなさりたいわけですから、そこはちょっと考えましょう。


 ローズオイルとローズウォーターに関しては私が欲していることを知った侯爵邸の侍女頭さんが専門店を案内してくれました。ちょっと値が張りましたけれども、とても良い香りのものを購入できました!! ……ローズウォーターはともかく、オイルの方は大事に大事に使って行こうと思うくらいお値段が立派でした。


 あとの変化と言えば、プリメラさまが侯爵さまを『おじいさま』と呼ぶかお悩みでした。


 義理の祖父であることは事実ですが、侯爵さまが社交界をお好みでないことや城にも呼び出しがない限り滅多に顔を出さぬ御方なので実は面と向かってお会いするのはこれが初めてだったのです。侯爵さまもどう接していいのかちょっと戸惑っていたらしいですが、今ではすっかり打ち解けたように思います。

 侯爵さまが祖父としての態度を強く見せられないのは、ご自身が独り身であることと、ジェンダ商会の会頭ご夫婦のことを思ってのようです。友人として、祖父母と名乗れぬ友人を差し置いて自分が祖父面していいのだろうかと悩まれたこともあったのだとか。

 私からすると素敵な祖父が2人もいるんだってことでいいと思うんですが、まあそこは個人で感じることが違って当然なのでしょう。


 特に、外戚という立場を得て侯爵さまがプリメラさまと親しくなさるというのは余計な邪推も呼びかねないという現実問題も含まれているのですが……少なくとも国王陛下が侯爵さまを外戚としてそれなりに大事になさっていることは私にもわかります。大切な王太子殿下と王女殿下を侯爵さまのところへ預ける、それは相当な栄誉なのです。国王陛下が信頼していると明言されたといっても過言ではないのです。

 それが貴族位にあって、滅多に社交場に顔も出さない人物だとしてもです。

 もし侯爵さまが国政に口を出されることがあれば、国王陛下は一度は耳を貸すであろうことも間違いありません。実際はそのようなこと、侯爵さまはなさらないでしょうけれども。余程国王陛下が誤った国策でもなされない限りは。


 プリメラさまには私の考えを述べて、ジェンダ商会の会頭もとても素敵な人であることを隠さず伝えました。その身分から、プリメラさまは本当の祖父母にはお会いしたことはありませんし、もっと言ってしまえば母親であるご側室様のお顔も覚えていらっしゃらないので……絵姿でどのような女性であるのかは見たことはありますが。勿論、国王陛下と私からもどのような人柄であったのかお伝えはしましたけれども、祖父母に関しては身分差が立ちふさがるのでこればかりはどうしようもありません。

 色々悩まれたようですが、プリメラさまは侯爵さまを非公式の場ではおじいさまとお呼びして敬うことに決めたそうです。侯爵さまも畏れ多いと言いながら、プリメラさま、とお名前でお呼びするようになりました。親族ですからね、お名前を呼んでも問題はございません……が、プリメラさまの方が立場は上ですのできちんと敬称は必要になります。たとえ非公式の場所でも。


 王太子殿下は……うん、なんだか自由に過ごされたようですが最も生き生きしていたのはプリメラさまとの遠乗りでしょうか。確かにあの方、万能ですね。

 ゲームの中の王太子殿下しか知らない私からすると、妹への愛情が同情とかでなくなった以外に、どういう変化が起こっているのかまでは正直よくわかりません。

 なにせ王太子殿下の王子宮とプリメラさまの王女宮は同じ城にあっても近くはなく、接点がありませんからね……まあ聞こえてくるお話を聞く限りは“優秀な王子”で“威厳があり王族らしい”振る舞いを心がけているようですが。そこんとこはゲームで見たのとあまり変わりないような……? いや、プリメラさまのことを大事な妹と見るようになったことが最大の変化か。プリメラさまの命運に関わってくるわけですからね!


 彼はゲームでの最大最愛の攻略対象者と製作者が語る大本命キャラです。私は特にこれといって本命っぽいものはいなかったんですが。いやあ、色々楽しむタイプなので本命とかそういう考えは私特になかったんですが……少なくともこのゲームに関しては色んな意味でぶっ飛んでいたとしか言いようがないので、本命云々なんてなかなか考えられなかったんですよね……。

 まさかここまでとは思わなかった、がプレイしての感想でしょうか!!


 この世界に関しての私の考えは、限りなくゲームの設定を踏襲している現実世界という認識ですので未来はいくらでも存在するのだと思います。だってまんまゲームだとしたら、私の人生が奇妙なものとしか言いようがないでしょう。ゲームには私のような存在は一切出ていませんが、今のところ思いっきりプリメラさまの侍女としてがっつり働いてますし、望んだわけではありませんが王太子殿下とも接触してますし、筆頭侍女なんて肩書までいただいてますが……それで何かバグだとかリトライエラーみたいなことは起こってませんし。

 ということはゲームそのものではない、と考えていいんじゃないかなと思ってます。

 まあゲームはやる専門なのでそれ以上のことはわからない、というのが正直なところですが。


 ちなみに王太子殿下とプリメラさまの遠乗りには私も付いていきましたよ!

 ええ、勿論騎竜でね……今度は酔いませんでした。というかあの日、王弟殿下との強行軍がやっぱり異常だっただけですね。王太子殿下とプリメラさまの安全運転 (?)と護衛騎士の方たちのおかげかもしれませんが。あと連れてきた軍の騎竜が穏やかな性格だったのも良かったのだと思います。

 シャイナは思いっきり走りたそうでしたが、ちゃんと大人しく軽い走りだけでも従ってくれてました。厩舎に戻った際はたくさん褒めてあげましたよ!


 教えていただいた野ばらの群生地はそれはそれは見事なものでした。

 良い思い出になりましたねー……プリメラさまはディーン・デインさまとまた来たいと仰ってましたよ。恋愛感情に関しては未だ疑問符がつくところですが、好感度は着々とあがっているようです。うんうん、可愛いですね!


 あとは薔薇ジャムですが、本格的に研究して商品化するらしいです。

 あれっ、もしかしてそうしたら私作らなくても今後買えるようになるってことかな……?!

そろそろプリメラさまと主人公の夏休み(?)は終わりが見えてきたようです。

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