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コミックス3巻発売となりました!
いつも応援ありがとうございますー!!°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
幸いにもデザイナーの件以降、キャンセルした内容について問題は起きておりません。
はー! よかった!!
さすがにある程度日数も経って連絡も行き届いている中、なんの連絡もないということはきちんと滞りなくキャンセルができたということです。
そんな中、統括侍女さまからようやくお話を伺うことができました。
王太子殿下のご婚約者さまはフィライラ・デルネさまと仰って南方に位置する国の第三王女で、王太子殿下と同い年の現在十四歳。
大変社交的な方という話でした。
今回お忍びでお越しになるのは特に深い意味はなく、本当にプリメラさまと親睦を深めたいというあちら側からのお願いなんですって!
(いやあ、とんでもないごり押しだけどね!!)
まさか婚約者の妹であるプリメラさまの初公務に押しかけるってどんだけ……と思いましたが、それはご存じなくタイミングがちょうどそこだったというだけの話なようです。
本来ならずらすべき……というか、お忍びで王城にきていただいて親睦を深め、公務は最初の予定で行うのが一番だったのでしょうが、ミュリエッタさんの件もありましたからね……。
それに、どうやら王女さま側も今回の公務で向かう町……つまり貿易に関して色々考えがあるようだということでしたので、国としての利害関係もあるのでしょう。
なので、王女さまには幾人かの侍女と文官、それに外交官がついてこられるそうです。
そして、王太子殿下もご一緒なさるために現在お仕事を調整中なんだとか。
(私は接待に関与しなくていいとは言われましたが……)
基本的に王女さまは王太子殿下と行動を共になさるということで、王子宮筆頭がお世話などそちらを担う予定だと統括侍女さまは仰っていました。
だから気にするなと言われているのですが……。
とはいえ、外交官殿のお考えはともかく王女さまはプリメラさまと親睦を深めたいわけですし、私がまるっきり関与しないというのは難しい話なのでしょうね。
(とりあえず、王子宮筆頭にはどんな風におもてなしするつもりか聞いておいた方がいいかな)
折角だからクーラウム王国の特産品でお出迎え……なんてのが続いたら新鮮味に欠けるし、飽きちゃうかもしれませんよね。
表面上は喜んでくださるでしょうが、それではプリメラさまの侍女失格です!
(……南方のお菓子も、後で学んでおこうかな)
メッタボンなら色々旅をしていますから知っているかもしれませんね。
逆にあちらの国でも庶民的なお菓子などがあれば、王女さまも珍しがって喜ぶかもしれませんし。
いくらあちらのお国柄的に民衆と距離が近いとはいえ、庶民のお菓子を口にする機会は少ないのでは?
その辺りも含めて情報収集すべきですね!
(それに、インクの件も忘れないようにしないと)
途中外出できそうな時間帯はすでに確認済みです。
公務のタイムスケジュール的にいくつか候補を挙げてあるので、後はあちらに行ってみて状況判断次第でしょうか。
当然、護衛騎士隊の方には連絡済みですよ!
あちらに着いてから「実は買い物に行きたくて」なんて予定外のことを申し出るなんてできませんからね、社会人として……なんといっても、私も責任者の一人ですし。
(アルダールにもなにか、お土産のようなものを買ったらだめかしら)
公務先でお土産なんて不謹慎でしょうか。
一応、プライベートの時間帯だから許されるかな……?
プリメラさまにもなにか、日中の公務で視察で気になる品などがあるようだったら買って差し上げたいとは思っているんですけどね。
そういうものがあるといいなあ!
「ユリアさん、今よろしいですかな?」
「あらセバスチャンさん」
「こちらの件なのですが、プリメラさまが是非未来の義姉上さまに贈り物をなさりたいということで、追加で発注をしたいとのことなのですが……」
「わかりました。まだ間に合うはずですから、手配いたしましょう。どのような品ですか?」
「今度の公務でおつけになる予定のブローチを、石と意匠に手を加えたものが作れないかというお話でして」
セバスチャンさんもそこはさすがに熟練の執事さんだけあります。
きちんとどのようなものかということを伝えてくれるので助かります、まあ当たり前のことと言うかもしれませんけどね。
人によっては「上の人が贈り物がしたいと言っていた」ということしか伝えてこないとかありますからね……。
それに、この『石と意匠に手を加えたもの』という具体的な案。
おそらくプリメラさまの為に宝飾品を作っていただいた工房に、一から案を起こしていただくのではなく小さな変更点だけお願いするという形で工期を早め、間に合うように仕立ててもらってくださいという意味が込められているのです。
はい、ちゃんと誠心誠意お願いしてきますね!!
プリメラさまもきっと『似たデザインならお揃いになる』と思っておられることでしょう。
……いいなあ、プリメラさまとお揃い。
「素敵なブローチですね、きっと喜んでいただけることでしょう」
「さようですな。クーラウム王国の意匠をお気に召していただければ幸いでございます」
「それでは、そちらはすぐに注文することにいたします。そうプリメラさまにお伝えください」
あれこれ準備がある中で、プリメラさまの意向に添うことも忘れてはなりません。
私たちはプリメラさまにお仕えしておりますので! お給金は国から出てるけど!!
「かしこまりました」
「私はもう少々、予定について考えたいことがありますので給仕とあの子たちのことをよろしくおねがいします」
「承知いたしました」
私の言葉ににっこりと微笑んだセバスチャンさんは一礼して去って行きました。
うーん、相変わらず優雅ですねえ。
(それじゃ、ちゃっちゃと発注書を書いてしまいましょう!)
勿論工房だって王室御用達の一流どころですし、急なお願いに対応はしてくれても手を抜くこともないので工期をただ早めてくれの一点張りでは角が立つでしょう。
それに、いくら一度作ったことのある意匠であろうとも変更点がある以上新作とある意味変わらないのです。
その辺り、職人さんにも納得いただいた上で……と考えるとただ発注書を書くだけではなく、手紙も添えた方がいいのかなと思いました。
(あの職人さんは昔気質だからなあ……気に入る作品ができるまで出してくれないかもしれない。となると、オーナーさんにもお願いしておくべきよね……)
そんなことを考えながら手紙をしたためていると、ノックの音がしてひょっこりとキース・レッスさまが顔を覗かせたではありませんか。
「キース・レッスさま! まあどうなさったのですか」
「いやすまないね、ほんの少し時間をもらえるかな? 手間は取らせないから」
「勿論です。どうぞ中へお入りください」
珍しく困ったように笑いながら聞いてきたキース・レッスさまに私も笑顔で出迎えることにしました。
なんといっても未来の親戚ですしね!
決して、彼の手元にあった手土産っぽい箱に釣られたからではありませんよ。
それが城下で今噂の、フルーツタルト専門店の箱だからとかじゃないんです。
「こちらはユリア嬢に。この間はうちの妹が大変失礼をしたようで、お詫びにね」
「まあ、お気になさらずともよろしいのに」
でも喜んで受け取りますけどね!!
内心ほくほくなのは、ナイショですとも。
「そのお詫びがタルトだけではなんだからね。折角だから外交官である私から、かの姫君のお国についてお話しさせてもらえないかと馳せ参じたわけだ!」
にんまり。
その表現がよく似合う笑みを浮かべたキース・レッスさまですが、なるほどなるほどベストなタイミングを見計らっていらしたというわけですね。
「さようでしたか。ではただいま、お土産にいただいたタルトに合うお茶をご用意いたしますね」
おそらくキース・レッスさまにとっても、外交的に今回の公務であちらの方々に良い印象を持っていただきたい。
そのためにはプリメラさまとの親睦を深めるだけでなく、私たちの対応も不可欠……そういうところですかね!
いいじゃないですか。
燃えてきました! おもてなし、成功させてみせますよ!!




