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転生しまして、現在は侍女でございます。  作者: 玉響なつめ


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 それからは、色々と準備が始まりました。

 プリメラさまの初公務、それについてはプリメラさまの誕生日の直後予定ということで移動のルート、途中で寄る町での予定、今回の目的である視察の内容……そういったものが順々に組み上げられて都度、こちらにも連絡が来ています。


 大きな計画は政務の一環と言うことで宰相閣下の手配ですが、そこから生じる物事はそれぞれ警護や先触れ、金銭の動きと受け持つ部署が違うので私が行うのはそれを理解した上でプリメラさまが過ごしやすくするにはどうしたらいいのかということを考えるのです。


(うーん、今回はスカーレットを連れていこうかしら……)


 王女宮でも王城側に何人かはやはり残さねばなりません。

 長期というほどではありませんが、主であるプリメラさまがご不在の間も当然誰かが残って掃除等、保全作業はありますから。

 指示書には私の他にセバスチャンさんの同行が決定しており、他に必要であれば侍女を連れて行くことを許可されています。


(去年の避暑地の時はセバスチャンさんが残ってくれたし、園遊会も頑張ってくれたし……あの子も色々と見聞を広めるのにいい機会かしら)


 メイナにとっても、王女宮の侍女としてちょっとした責任ある仕事を任せてみる良いチャンスではないでしょうか。

 スカーレットの方が貴族的なあれこれを知っている分任せやすいところはあるし、書類関係はもう完璧です。

 しかし人間関係の構築や、気遣い的な面ではメイナの方が優れていると言えるでしょう。


(二人が今後も協力し合ってくれれば怖いものなしですけどね)


 とはいえ、今後も二人がずーっと一緒というわけにはいきません。

 プリメラさまのお輿入れ後のこともありますし、人事異動がないとは言い切れませんから……優秀であれば優秀であるほど、他の宮だって欲しがるでしょうし。

 ましてや、これからは王太子殿下のところに嫁いでこられる姫君のことも考えればむやみに増員するより他の宮から優秀な者を王太子妃殿下の侍女に据え、その分他の宮に新人を迎えるのが現実的。


(少数精鋭だけに、うちの宮でそれをされるととても痛手ですが……)


 上からの指示が不当でない限り、こちらで拒否もできませんしね!

 そういうところ、宮仕えの悲しいところです……でも前向きに考えるなら、メイナとスカーレットにとってそれは昇進への道とも言えるのでお話が来たら検討してほしいなとも思っております。


「はい、どうぞ」


 ノックの音に顔を上げて、重要書類だけ机の引き出しにしまい込みました。

 ドアが開いて入ってきたのはクリストファで、小首を傾げながら私に歩み寄ってくる姿に立ち上がって出迎えると彼も僅かに笑みを浮かべてくれて……おおう、どうしたデレ期ですか!? クリストファの微笑みとはまたレアな!


「クリストファ、久しぶりです。どうかしましたか? ご機嫌ですね」


「ユリアさまのところに、最近来られなかったから。嬉しい」


「まあ!」


「でも、これ。宰相さまが先に知っておけって」


「……なにかしら」


 クリストファから差し出された書状に、嫌な予感を覚えます!

 とはいえ、受け取り拒否をしても『先に』って言ってるあたりなにか決定事項の先出し情報なのでしょう。

 文官を通してではないあたりが、一応公式通達でなく宰相閣下個人からの優しさってところなんでしょうか……。


 書状を受け取ってその場で開封してみると、そこにはプリメラさまの公務が予定よりも早くなることが書かれておりました。


(な、なんですってーー!?)


 早まると言うこと、つまりそれはこれからの季節等を想定して準備をして発注していたあれこれすべてをキャンセルしてやり直しということです。

 プリメラさまの学業に関することですとか、お茶会のスケジュールも勿論変更。

 そして私やセバスチャンさんが不在の間におけるマニュアル作成についてもやり直し!


 そう、全部です、全部!!


 そりゃまあ、まだ半年後ということでね? 発注したてのものも多いですからそこが救いっていうかなんだってまたそんな……。

 思わず膝から崩れ落ちそうになりつつもそれをぐっと堪えて、私はなんとか笑顔を浮かべてみせました。クリストファが悪いわけじゃないしね。


「……大丈夫?」


「え、ええ、大丈夫よクリストファ。宰相閣下に、承りましたと伝言をお願いしてもいいかしら?」


「うん」


「ああ、すぐ戻るのよね? ちょっとだけ待っていて」


 私はクリストファに待っていてもらって、戸棚から琥珀糖を紙に包んでラッピングをし、クリストファに持たせました。

 一つは宰相閣下用、もう一つはクリストファ用。

 量と包装用紙が違うということで大目に見ていただきましょう。


「閣下にこちらをお届けしてね。こっちはクリストファ用だから、休憩時間にでも食べて。甘いお菓子だから」


「ありがとうございます」


 はあ、クリストファはお礼を言えてイイコですね……!!

 本当はもっとお菓子とかお茶とか準備してあげたいところですが、彼もまだお仕事の最中でしょうし私もそうです。


 っていうか、この変更についての公式通達はいつ来るのでしょう……先に知らせたというだけで、コレは決定事項なのでしょうからすぐにでもキャンセルしたいところですが……。

 やはり公式決定を待たずに行動をするのは控えたいところですので、準備だけでもしておかねば。


(予定が……予定が狂っていく……!!)


 早まると一口に知らされたってそれがいつなのかってのも一緒に教えてもらいたいものですよ!

 そこは決まってないんでしょうけど!!


 端々で予定を組んでそれに対して行動しているこちらの身になっていただきたいものです……いや、わかってくれているんだろうなってわかっちゃいますけどね。

 わかってない人も中にはいるから苦労をする人もたくさんいるわけで……私はまだ恵まれている方だとなんとなく自分を慰めつつ、クリストファを見送ってから私は大きなため息を吐きました。


(アルダールと連休を合わせるって約束をしたのが再来月でしょ? 公務の予定が前後したならずらしてもらわなくっちゃ……ああ、申し訳ないなあ)


 彼の方が連休をとれるなんて、次いつになることやら。

 勿論、私たちは王家にお仕えしているので公務が関連しているとなればお互いそれに対して不満を持つことはありませんが、急にこういうことがあると申し訳なくなるじゃないですか。


 きっとアルダールは理解してくれて許してくれるんだろうけど……はあ、もう。

 公式通達が出たら、アルダールに相談かしら。

 被る時期じゃなきゃいいんですけどね、多少バタバタしちゃうかもしれませんけど……。なんだってこんなことに……。


(まあ、仕方ない。こういうこともあるある!)


 時期が早まる以外、やることは変わりません。

 とりあえず変更になる可能性が出てきたということをセバスチャンさんと共有して、下準備だけ進めることにいたしましょう。


 しかし、キャンセルの下準備。

 衣類にリボンに帽子にと、今年の流行色を押さえてプリメラさまが喜んでいただける、なおかつ人々にとっても愛らしい王女さまのお姿を披露できると張り切って選んで、これならば完璧だと満足して発注したのに……。

 あんなに頑張って色々調べて公務用のお洋服とか厳選したのに、またやり直しとか……やはり落胆してしまいます。

 トホホ……。


(あれっ、でもこれでミュリエッタさんとは時期が被らなくなった?)


 もしやこれは、なにか大きなあれこれが働いたんでしょうか。

 ふとそんなことに思い当たりましたが、私は考えることを止めたのでした。

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