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 さて、今回の同行者ですが。

 王女宮からは6人の女性護衛騎士、私、同じく侍女のメイナ。それと下男のダンと料理人のメッタボンです。何故この人数かと申しますと、本来王家の方が移動となればそりゃもう日本で言えば大名行列さながらになってもおかしくないだろうと思われがちですが実際にはこんなものです。

 だって向こうに着けば侯爵家の召使いたちがいるわけですからね。あまり大勢で押しかけては互いに仕事のことでぶつかりかねません。


 勿論、護衛騎士以外にも騎士たちが同行しますが、それは行き帰りだけなのです。

 騎士団がまず先頭に立ち、馬車を囲むようにして前方を王子宮の護衛騎士。そして馬車の後方に王女宮の護衛騎士、そしてまた騎士団という風にして守られているのです。そしてさらにその後ろに騎士団の一団と私と殿下の執事長以外の侍女や侍従、下男や料理人などの使用人が乗った馬車が続くのです。

 これだけ見るとまさに行列ですね! 物々しい行列です。そして侯爵家まではそれほど遠くない位置ですが、途中で通る街や村で王家の方を出迎える人々に感謝の言葉を私たち経由で伝えたりとかまあ色々とあるんですよね。王族の方が直接やり取りすることは実はあまりないのです。警護の問題もありますし、すべての方に対応していては王族の方の身が持たないというのが実情でしょうね。


 地図をもって周辺諸国を見てみればわかることですが、クーラウムはそれなりに大きな国です。

 隣国シャグランとは反対側、こちらは未開の森を含んだ辺境地であり危険地帯でもあるそうです。まあ国境付近は基本的に辺境地と呼ばれ、それぞれに広大な土地を有する辺境伯と呼ばれる武闘派の方が治めている土地です。そして辺境区を第一区域とするならば、そこから内部に向けて第二区域、第三区域、王家直轄区域、そして城下となり王城となるのです。ざっくりとはそんな感じですが、軍で把握しているのはもっと細やかなんだと思います。

 ちなみに我がファンディッド子爵家は第二区域と第三区域の間くらいですね!

 そして我々が向かうナシャンダ侯爵家は第三区域になりますのでそこまで遠くない……とはまあ地図上のことで、実際にこの色んな所で王家の方万歳のお礼をしてったらまあゆっくりなことゆっくりなこと。

 しょうがないんだとは思いますが……そう思うとこの間の強行軍は本当に強行軍だったのですね、私は王弟殿下にやっぱり無理を強いられたのだと痛感いたしました。いやまあ、本当に急ぎでしたしね、王弟殿下はお強いから自信もあったんでしょうし、あの方は面倒だとルールをすっ飛ばす時がある変わり者扱いですからね……。


 などとやっている間に無事到着です。

 朝方に出て夜に着きました。野営のような真似はせず、それなりに大きな街に行って領主の館で休息をとり出発を繰り返しただけですがプリメラさまは公務で陛下に付いていく以外の景色の見え方がとても輝いて見えたようでした。

 そりゃそうでしょうね、公務で行くといかついおっさんたちに囲まれて物々しい雰囲気の中責任者っぽい人が出てきて平伏しながら国王と会話したり、地方領主と会話したりするのを横目で見るだけですし。途中馬車からの景色だって平伏する民ばっかりだったでしょうし。

 ちなみにご公務の時には私も付いていきますが、基本的に国王陛下がプリメラさまにべったりだということだけ言っておきましょう。怖いくらいにべったり。私の妖精なんてセリフ本当に言う人いるんだなと思ったのは内緒です。


「やあやあよくおいでくださった、王太子殿下、王女殿下。ようこそナシャンダ侯爵家へ! 他の方々もようこそ、歓迎いたしますぞ」


 侯爵さまが諸手をあげて歓迎してくださいましたが、相変わらずロマンスグレーという言葉を贈りたくなるような紳士です。


 そして侯爵さまと言えば薔薇と言われるほどですが、よく手入れされた入口を彩る庭園は、まさかのすべて薔薇です。

 そういえば噂でしか知りませんが、侯爵さまの庭では四季全てで薔薇がいつでも咲いているのだとか……本当に薔薇がお好きなのですね。そしてプリメラさまの滞在と共に私には実は目的があるのです。

 実はこのように多彩な薔薇を扱われる侯爵さまは、なんと食用花としての薔薇も手掛けている、という話を聞いたのです。実用化には至っておらず、また理解者も少ないとのことで今の所日の目を見ることはないだろうなどとも言われているそうですが、私はそれを求めているのです!!


 後は上質のローズオイルとローズウォーターも欲しいなあ。

 実はメッタボンと協力して、なんと私寒天を作り出したのです。手作り寒天ですよ!

 これで寒天ゼリーを作ろうと思うんです。夏の暑い日に冷えたゼリーがあるといいじゃないですか。でもこの世界、焼き菓子とかチョコレート(というかカカオの粉)とかあるんですけどゼリーってなかったんですよね。とはいえ、この国の周辺に海はないし海が無ければ寒天は手に入りません。そもそもこの世界にてんぐさってあるのかしら……。と思ったらありました。メッタボンが知っている他国の海沿いの小さな村でまるで動物の骨を煮た時にできる煮凝りのようなものが作れる海藻。

 まあ名前はてんぐさではありませんでしたが、それっぽいものでした。若干お高めでしたが、リジル商会を頼ったらあっさり手に入りました。その際「変なものを頼む人だなあ」とあからさまな顔をされましたが気にしません。


 まさかのメッタボンまでそんな顔をしていたので、まあ地方の小さな村のよその人が欲しがらないような代物を欲しがった人物ということになっているんでしょう。

 とりあえずそれで寒天を作ってからゼリーを作ってみましたが普通に寒天ゼリー。果物と砂糖で作っただけのシンプルなものでしたが、メッタボンを驚かすには十分だったようです。彼はこの寒天で作ったゼリーにいたく感動したらしく、海藻を次も注文してくれるようです。作り方は覚えたので乾燥寒天を量産してくれることでしょう。その内リジル商会が気が付いて値上げしないか心配ですね。


 ……今年の夏はデザートがゼリーばかりになったらどうしよう。


 ちょっとそう思ったのは秘密ですが、どうやらメッタボンは料理にも使えるんじゃないかと色々試行錯誤しているようですね。その努力、素晴らしいです! 負けられません。

 というわけで私はプリメラさまがお好きなオレンジ色の薔薇で薔薇ジャムを作り、ローズウォーターとエディブルローズで薔薇のゼリーを作りたいのです!!!

 ゆくゆくはエディブルフラワーとフルーツで可愛らしいケーキを作りたいのです!


 ふふふ、プリメラさまが喜ぶ顔が思い浮かびますね。

 おっと、考えに浸っていてはいけない。仕事仕事。 


 侯爵家の使用人たちはとても親切な方々が多かったので、私とメイナはすぐに打ち解けられました。

 女性騎士たちも男性騎士たちと離れた途端ほっと息を吐き出していたので仲良くできないものかなあと思わずにはいられません。

 到着してしばらくお世話をしていたところ、プリメラさまが当面私に自由時間を与えると仰いました。ちょっと驚いてしまいましたが、どうやら何かお考えがあってのご様子で、それはまさに悪戯をしようとする女の子の顔でしたので私は素直にそれを受け入れることにいたしました。


 まあ自由時間があればエディブルフラワーについて調べられますしね!

 あー楽しみ!!!


「あっ、でもねでもねユリア!」


「はい、なんでございましょう?」


「夜はね! ユリアがちゃんと私に寝る前のお茶をちょうだいね。それから朝起こすのもユリアじゃなきゃいやなのよ。お願いね!」


「……んんっ」


「ユリア?」


「なんでもございません。承知いたしました、必ずこのユリアが朝晩プリメラさまの元へと参じます」


「うん!」


 あああああああああ、可愛いわあ……。

 ちょっと隣の王太子殿下が睨んできてる気がするけどそんなの気にならないくらいプリメラさまが可愛いわあ!!!!!

安定の主人公です。

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[一言] >私の妖精なんてセリフ本当に言う人いるんだな どうやら筆頭侍女様お使いの鏡台は大変曇っていらっしゃるご様子、これは新品とお手入れ道具をお納めせねば(御用商人並感
[一言] 最後、主人公の溢れちゃいけないものが溢れそうになってますねぇ(^_^;)
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