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 プリメラさまの為に例のお針子のお婆ちゃんに相談できないかと思って王太后さまにダメ元でお願いしてみたところ、「孫の為ですもの! できたらその夏用ドレスを複数作って私の離宮でお茶会しましょうね!!」というお言葉と共におばあちゃん、来てくれました。相変わらずぷるぷるしてました。糸目のような目で優しく微笑まれ、そっと私の手を取って歩くその様子は……。お祖母ちゃんってそういえばファンディッド子爵家の方で見たことありませんね。お義母さまの実家はお義母さまと仲が悪いので疎遠ですし、まあ血が繋がっていないから他人ですし。お父さまのご両親は私が生まれた頃にはお亡くなりでしたし……。そういえば実母のことを碌に知りませんが、遠縁筋であったとは聞いています。でも今まで会ったことがないということはきっと事情があるのか、亡くなっているかなのでしょうね。少なくともお父さまと実母は恋愛結婚だったというし、家族問題は無かったとメイドたちが教えてくれていましたから。

 ですので思わず、「おばあさまのようです」なんて言ってしまってから、しまったと思いました。ちょっと憧れがあったのかもしれません。プリメラさまと王太后さまのように、愛し愛された祖母と孫の関係に。


 私、前世でお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに甘やかされて育ったんですよねー。

 父方・母方の祖父母はどちらも優しくて、タイプが違いましたが孫である私をたくさん愛してくれました。私が料理ができるのは父方のお祖母ちゃんがとても料理上手だったから憧れて覚えたのですし、お菓子作りは母方のお祖母ちゃんが甘いものが好きだったので作ってあげたいと思ったのがきっかけです。両方のお祖父ちゃんには美味しいお茶を淹れてあげたいと思って慣れない手つきで淹れた渋いお茶は今では恥ずかしいものですが、良い思い出……って前世だけど。


 思わず私がおばあさまのような、と言ってしまいましたが、針子のお婆ちゃんはちょっと驚いただけで笑ってくださいました。そっと微笑むだけで相変わらずぷるぷるしていましたが、嫌がっている様子はなくてほっとしていると、ちょっとかがむように手で指示されて大人しく従うと、頭を撫でてくれました。その上「頑張り屋さん…ね」とそっと言ってくださったのです! あ、これだめ本当おばあちゃああああああああんん!!!!


 内心荒ぶりました。

 仕方ないと思いません?!



 とまあ、お針子のお婆ちゃんと交流を深めたところで夏用ドレスはコットン・リネン・シルクとまあ夏の定番素材でそれぞれ作ることになりました。これには財務官も成長期ですからと複数枚分の布地を注文しても文句は出ませんでした。実際プリメラさまの身長、今の所ぐんぐん伸びてますので! さすが成長期。今は少女ですが、だいぶ体つきも女性らしさを帯びてきてそこはかとなく色気もこれから混じってくるのでしょうね、もうディーン・デインさまも気が気じゃないでしょうね!

 でもまあ、本人は今の所色気より食い気、食い気より読書です。そんなに冒険奇譚の新刊面白いですか。


 とはいえ年頃の少女ですので、お針子のお婆ちゃんを迎えて夏ドレスのデザインを決める話になると目をキラキラさせていました。可愛いなあ。白地に青い花模様のものとか、全体的に明るい青で染め上げて刺繍を入れるとかビジューをつけるとか色々なデザインが出ました! それに合わせて帽子も作る予定です。針子のお婆ちゃんはついでだから私のも作ってくれるそうです。お祖母ちゃん!!!

 いや、勿論代金は別料金ですので支払いますよ? リーズナブルな価格でお願いします……。


 ちなみに侯爵さまは快く騎竜を連れていくことをお許しくださいました。

 プリメラさまのシャイナと、あとは護衛騎士用に軍の騎竜を3頭、合わせて4頭です。

 そのうち1頭は私が遠乗りの際に借りるんですけどね! ……酔わないかな、大丈夫かな。


 王女宮の護衛兵は国王直属である近衛の下位組織に当たる護衛騎士団から派遣されているのですが、王女宮に来ているのは全て女性騎士です。人数は6人いて、ローテーションで勤めてくれています。

 隊長はアンナ・ルーニャさんで副隊長はミッシェル・ヤンナさん、他にローレンさん、スザンナさん、レジーナさん、ヴェルデさんです。名前から察せられるように隊長と副隊長は貴族出身の方ですね。ですが驕ったところはなく、とてもお優しい方々です。


 護衛騎士団は近衛と違い、貴族出身者ばかりではなく軍属の優秀者が集まるのです。

 勿論近衛はその中から更に貴族位という(ふる)いにかけられた上に実力で選ばれたエリート集団と言えばわかりやすいでしょうか。アルダール・サウルさまは例外的に騎士団から一足飛びで近衛に入隊でしたのでどれだけすごいことかおわかりになるでしょうか?

 とはいえ、基本的にプリメラさまは王宮でお過ごしですし公務もまだございません。現状、護衛騎士はお茶会の際に目立たぬよう警護に付いたり、陛下のご公務に付いていかれるプリメラさまの警護に付いたり、就寝の際に不寝番として回ったりするのがお役目となっております。王族の方にお仕えすることは栄誉あることとはいえ、王子宮で王太子殿下にお仕えしている護衛騎士たちが彼女たちを見下しているということを耳にしたこともあります。なんということでしょう。聞いた時は耳を疑いましたね。品位はどこにいったと問い詰めたいところです。


 まあこの世界でも男尊女卑は存在するのです。女性の雇用はきちんとしていますが――むしろ前世で考えるよりも男女平等に仕事をしていると言ってもいい――やっぱり妙なプライドを持つ人はどんな世界や時代でもいるのでしょうね。私からすれば護衛騎士団だって十分エリート集団です、その上王太子殿下もプリメラさまも将来が嘱望される次代の担い手です。その方々にどんな形であれお仕えできることは誇れることでしょうに、公務に出れる出れないだけで見下すとはなにごとでしょう。

 とはいえ、私が妙にでしゃばってはカドが立つでしょうし、黙ってますけども。


 ……愚痴が脳内で止まりません。

 まあいいでしょう、後で護衛騎士団の方々にも休憩用のお菓子を差し入れしようっと。


 でも今度の避暑地への旅は王太子殿下も一緒っていうことは、例の護衛騎士たちも一緒ってことよねえ。

 何もないといいのだけど。


 平穏無事が一番なのよ。

 プリメラさまが可愛い服を着て可愛く笑ってくれるのが大事なの!


 あー、早く夏ドレス出来ないかなー!

 シャイナの鞍は注文したし、何か忘れてないかな私。


 あっ!! そうです、靴です。ドレスを新調するなら靴も是非!

 どんな可愛い靴がいいかしら!

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