22 プリメラにとって、
今回はプリメラさま視点です。
私はプリメラ。11歳になったばかり。もう11歳、まだ11歳。どっちだろう?
クーラウム王国の側室が命懸けで産んだ娘、可哀想な娘、そう言われたのが私、プリメラ。
だけど、私の傍にはずっとユリアがいた。生まれた時からいてくれたって話。
ユリアがいてくれるのが当たり前で、怖い時はユリアが手を繋いでくれて、怖い夢を見た時はユリアが頭を撫でてくれた。
望めば絵本も読んでくれたし、ユリアが応援してくれるなら苦手な野菜だってお肉だって食べた。
いつでも可愛いって褒めてくれて、時々我儘が過ぎたらちゃんとそれはいけないことだって教えてくれた。
一時期、お義母さまがあまりにも冷たいし、お父様は私が何しても笑って許すから自暴自棄になって甘いものばっかり食べていたら、厳しい言葉で私を諭してくれた。
ちょっと反発した私だったけど、ちゃんと謝って反省したら許してくれた。
そして私がずっとそばにいて欲しいと願ったら、いてくれるって言ってくれた。
その時、私はずっと思っていたことを告げたの。プリメラは、ユリアのことをお母さまみたいに思ってるって!
私にとってユリアは、いて当然な相手で、ただの侍女なんかじゃなかった。
たまたまお父様に連れられて出た公務の先で見かけた親子の姿を見て、あああれだ、と思った。
勿論公務に私がいてなんのお役にも立てないし、見て学べることは学んだ。
でもあの親子のことが頭から離れなくて、あれはまるで私とユリアみたいなんて思ったの。
手を繋いで、笑いあって、私ああいう風にユリアと過ごしているんだわって!
だからユリアは、ユリア母様なのよ。
プリメラにとってとっても頼りになる侍女で、とってもとっても大事な母様なの。
ユリアは色んなことを教えてくれた。
甘いものばっかり食べるよりも、勉強したりダンスをしたりして可愛くしてくれた方が嬉しいって言われた。
それってどこかに嫁ぐから? って聞いたら、お世話する自分が髪をいじったりするのが楽しいからだってとても優しい笑顔で言われた。
それでちょっと甘いものを我慢するのは辛かったけどちょっとずつにしたらユリアがお手製のお菓子を作ってくれたの!!
ふわふわのケーキで驚いたわ!! シフォンケーキっていうんですって。
プリメラの苦手なニンジンが入ってたのにとっても美味しかったわ!
ユリアはプリメラのことをいっぱい考えてくれているんだって思ったら、なんだかとても嬉しくて、2人の時は抱き着いたりしてしまうの。
ユリアは困っちゃってるんだと思うんだけど、プリメラのこと好きだって言ってくれたからきっと許してくれる……よね?
甘えてばっかりだと嫌われちゃうかしら?
って思ったけど素直に聞いたら娘のように思ってるから嬉しいって言ってくれた!
プリメラにはお兄様がいて、冷たくてちょっと悲しくて、やっぱりお義母さまと一緒に嫌ってるのかなってユリアに聞いたらもっとお話ししてみるといいですよって教えてくれた。
だから勇気を出して話すようにしたの、お義母さまがいないのはお兄様と私が歴史の勉強をする時間だけなんだけど……その時ちょっとだけお話するようになったの。
お兄様は私がすごく勉強ができるから悔しいって言ってたけど、そんなことはないのよ?
勉強は私がしているのよりずっと詳しいお話のだし、剣とか乗馬とかもすごいんですって!
帝王学っていう王となるべきお勉強もしているから、私よりもずっと大変なのにお兄様はそんなことを感じさせない。
私のことは嫌いじゃなくて、あんまり会わないからどう話していいかわからなかっただけだって言ってくれて、今では時々頭を撫でてくれるようになったの。
やっぱりユリア母様に相談して良かった!
それからディーン・デインさまね!
初めてお会いした時は全然おしゃべりしてくれなかったけど、きっと優しいヒトなんだなと思ったの。
直接お手紙のやり取りは出来ないって執事や侍従も言っていたからユリア伝いに聞いたんだけど、プリメラのお勧めの本がとても楽しいって言ってくれたんですって!!
読んでくれたんだ! あんまり読書とかしないって仰ってたのに!
私が言ったことを覚えていてくれる、優しい方だわ。
それに、私の誕生日プレゼントにって贈ってくれたのは、私が好きだって言ったオレンジの薔薇をモチーフにした可愛らしいネックレスだったわ! カードも添えてあって、とても嬉しかった!!
だって他の色んな方が下さったプレゼントは王家の娘に対してだけど、ディーン・デインさまもユリアと同じでプリメラという人間を見てくださっていることがわかっているもの!
御礼状はどんなのがいいかしら。
またお会いしたいなあ。
ユリアにお願いしたら、叶えてくれるかな?
そうだ、ユリアの社交界デビューのドレス姿、あれとっても素敵だった!!
他の貴族の女性たちもみんな注目してて、ユリアのことなのにプリメラの方が自慢したくなっちゃった。
私がパーティから下がったら寄ってくれるように手配してくれるっておばあさまが言ってらしたけど……。
おばあさまにもご参加いただきたかったけど、お父様と喧嘩になるとみんなが気を使っちゃうからって仰ってたから……。
ちょっとごたごたしているけど、もう大丈夫よっておばあさまが仰ってたからきっとユリアは大丈夫!
いざとなったら私の名前を使ってくれてもいいと思ってるけど、きっとユリアはそれを良しとはしないでしょうね。
遠目に見たけど、ユリアの弟さんはユリアと似てたわ。
とっても仲良さそうだったから、プリメラに会いに来るのはもっと後かしら……それとも来ないかしら。
なんだかとっても不安だわ。
ううん、大丈夫。
ユリアはプリメラのこと大好きって言ってくれた。
兄弟が大事なのは、私も兄さまが大好きだからその気持ちはわかるもの!
でもプリメラは兄さまが好きでもユリアのことも大好き。きっとユリアもそうよね。
「――プリメラさま、入っても宜しいですか?」
「お入りなさい」
来てくれた! 思わず笑顔になっちゃった。いけないいけない、まだ他のメイドだって残ってるんだから。
そうよ、プリメラは立派な王女さまなんだから!
で、でももうメイド下げちゃってもいいかな?
ちょっとくらい……うん、まだドレスも脱いでないけど。
ユリア母様から、お誕生日おめでとうって、言ってもらいたいし……ね?
私、とプリメラ、という一人称が安定しない辺りがまだまだ大人になり切れない少女です。