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 とりあえず! 私としては寝耳に水も良い所のお話でしたけれども、そうであるのならば王太后さまのお言葉に従ってセレッセ領のお祭りに行くのが一番でしょう。ということは身支度をすべきということです。

 まあ元々実家に短期帰省の予定だったんですからそこまで荷物という荷物があるわけではありませんしそう時間はかからないでしょう。

 いや? そもそも!? え、これって結果としてデートしていいよって最終的に言われているわけですが私何にも可愛いワンピースとか持ってきてない……!? いや、お化粧品くらいはありますけど。


(い、いやいや。そもそもデートが目的じゃないっていうか……え? いや、デートしていいよってことだよね? 名目上とか言っちゃってるし、私の名誉がどうのこうのって)


 そうです、最大の目的は『オルタンス嬢の乳母を務めていた女性に会いに行く』ことで、そこからどう顔合わせの会を整えるかメレクの参考にする。

 そのついで(・・・)で私に対してのご褒美として小旅行プレゼント!! ってことですよね。

 王太后さまとプリメラさまからということになっていますが、近衛兵であるアルダールがここにいるってことは国王陛下もご了承くださったということでしょう。近衛隊は陛下の直轄ですもの。勝手に動かすなど王太后さまがいくら孫可愛さからといってそんな横暴な真似をなさるとは思えません。


 ってことは。

 ってことはですよ。

 褒賞金(ボーナス)がメインだけど、名誉をあげれなかった代わりの『ちょっとした』プレゼント……ってことですよね。


 うっわ、豪華だな。豪華だな!?

 いやまあ口止めの要素もあるんだろうけど。園遊会は確かに色々と触れちゃいけない部分もあったし、まああの場には侍女として立ってたとはいえ“クーラウムの子爵令嬢である私”に対しての脳筋公子の無礼っぷりは王太后さまがご覧になってたし、あの事件関与の疑いのあったエーレンさんにも色々言われたし、怪我はしたし気も失ったし……うん? 園遊会ちょっと私にとって碌でもない思い出?

 説明された通り、表彰は騎士隊の方からでまったくもってむしろ心から拍手しましたけど。

 別に名誉が欲しいわけじゃないですからね。私としては『プリメラさまは良い侍女を持っている、流石だ』と主が褒められたら大満足なんですからね。


(いや、違う今考えるのはそこじゃない)


 問題はですよ。

 ええ、ご褒美がいただけたのは素直に嬉しいですし、他領のお祭りとかそういえば初めての経験じゃないかっていうワクワク感もありますし。


 だけどですね、それが弟の結婚に関してという大事な側面と、なによりも。なによりも!!

 初めて恋人と遠出するっていうのが旅行ってどうなのっていうね!?

 

 ちらっと隣に座るアルダールを見ると、私の視線に気が付いたのかにっこりと笑ってくれ……ああああイケメンのスマイル眩しいぃぃ。

 良かった、実家帰省だとしても油断せず眼鏡かけてて!!


「それじゃあ私はパーバス伯爵にお土産を渡すとするよ!」


 爽やかに笑ったキース・レッスさまが、アルダールから受け取っていた包みを掲げて私たちに見せてきました。そういえばそんなこと言ってましたね、なんだかミッチェラン製菓店に注文してたとかなんとか。

 こうなるってまるで知っていたみたい?

 いや、キース・レッスさまだもの。多分パーバス伯爵さまが我が家に向かうと知って王城からこちらに向かう途中、最後にお土産を渡して笑顔でお別れを言うところまで想定していたのかもしれない。

 渡せなければ渡せないでお菓子だもの、メレクでも奥さまでも、オルタンス嬢でもみんなが喜ぶと思うしね。

 

 すっと部屋から出て行くキース・レッスさまを追うようにメレクが一緒に出て行って、そしてお義母さまとお父さまも連れだって出て行かれました。

 レジーナとメッタボンは、私の方ににっこりと笑いかけて出て行ったわけですが……えっ、その笑顔どういう意味? ねえどういう意味?


「ユリアさまの準備は侍女に申し付けておきますので、ごゆっくり」


「えっ、レジーナさん?」


「バウムの旦那、旅行中あんまうちの筆頭侍女さまを構い倒すような真似ェしてくれんなよ?」


「善処しよう」


「アルダール!?」


 なんだろう、私を置いてけぼりでどんどん話が進んでいく……!!

 みんななんでそんな落ち着いてるのさ!?

 えっ、こういうのってよくあることなの? 私が知らないだけでみんなやってるとかなの?


 そんなことないよねえ。

 思わず息を止めてしまって苦しくなりましたが、いやまあ、嫌ってわけじゃないんですよ。

 旅行は嫌いじゃないです。前世とかもそこまでアグレッシブじゃないですけどちょっとした遠出とかでワクワクするくらいでしたし。率先して出かけるとかありませんでしたけど。ええまあそこは私ですし。

 今、ユリアとしてはよく考えたら領地から王城に、見習いで行くのだと馬車に乗ったあの時がそんな気持ちだったのかもしれません。


 でもこれはやっぱり……あれえええ? なんだかもう、これはあれだ。私混乱してるよ……?


 みんなが出て行った部屋には当然、私とアルダールしかいなくて。

 そういえば手をずっと繋ぎっぱなしだったんだよね。改めて思うと、これ恥ずかしい。そりゃメレクも微妙な顔するってものですよ……。


「あ、あの、アルダール? 手を、放して」


「驚いた?」


「え?」


「私も話を聞いたのは出る直前でね? すごく驚かされたよ」


「……そう、なの?」


 いやだってアルダール、落ち着いてるものだから!

 てっきり私は彼のことだから冷静に『へぇ、そうなんだ』くらいに受け止めたのかなって思っちゃいましたよ。勿論そんなことを口に出したらちょっぴり叱られそうな予感がしますので言いませんけど。

 するっと親指で私の手の甲を撫でるようにして笑うアルダールに、思わず顔が赤くなった気がしますけど……いや、うん。これは私悪くない。

 こういう気障な真似が似合っちゃうって本当にもう、イケメンってやつぁ……!!


「まぁ、領地経営の一端をキース殿から学べとは確かに言われているんだけどね。先輩だから聞きやすいというのもあるし、いずれはディーンの補佐をする立場だから。でも今回は急だったから何事かと思ったんだ」


「そ、そうなの?」


 キース・レッスさまは確かに若くして領主としてとても見事な手腕を振るわれているというし、アルダールが信頼する元騎士ということもあってバウム伯爵さまもきっと信頼しておられるってことよね。

 メレクも随分と頼りにしているようだし成程、今回の件はお父さま以外の方による手腕を知るには良い機会なのかもしれない!


「じゃあ馬車の中で私とメレクは大人しくしていればいいのかしら。メレクにとっても良い機会だと思うし……」


「うーん、どうだろう。ああいや、教えてもらえないって意味ではなくてね? キース殿のことだから、メレク殿と同じ馬車でとはなるだろうと思うよ、セレッセ家の馬車も外にあったから。でも私とユリアは王太后さまにお貸しいただいた馬車に乗るようになると思う」


「えっ」


「あの馬車を置いていくわけにはいかないだろう? セレッセ家のも。そして私はユリアの護衛だ」


 いやまあ、そうやって説明されると納得しちゃいますけども。納得しちゃったけれども。

 じゃあアルダールはいつ学ぶのって疑問が顔に出てたのかもしれない。アルダールは笑っていた。


「ところでユリア、いつの間にキース殿とそんなに仲良くなったんだい?」


「えっ」


「パーバス家の方々とも、何もなかった?」


「えっ、ええと?」


「……その様子だと、色々聞く必要があるのかな」


「ないです! あっそうだアルダール、折角ですからファンディッド家の中をご案内しましょう! ねっ?」


 やだこれは叱られる気配を察知……。

 でもここは華麗にかわして見せますよ! 私の精神のためにも!!

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