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 控えめに言って、観劇最高でした!!


 いやあ、ボックス席のシートってあんなに座り心地良かったのね……いつもプリメラさまが座っているその後ろに控える形でちゃんと椅子は用意されてたんだけどね? 全然座り心地が違うんですよ!!

 で、肝心の内容の方はオーソドックスに勇者が悪の魔王から攫われたお姫さまを助け出すハッピーエンドだった。ただ途中お姫さまから羽が生えたり悪の魔王が変身するシーンで室内なのに花火が出たりと相当大掛かりで「やだこの劇すごい……」と別方向に感動したことは内緒です。

 いえ、勿論内容の、勇者が呪いにかけられて異形になるのをお姫さまが愛の力で救うとかありがちなパターンだというのに思わず涙が出るかと思う迫真の演技! あの女優さんすごいの!


 というわけで、その後レストランで夜景を眺めながら食事をして送ってもらってという完璧なデートプランでしたよ。ミュリエッタさんのことがなかったら「なんてロマンチックだったんだろう……」ってこの私が乙女モード全開になっていたこと請け合い。

 そのくらい美味しいワインで……じゃなかった、素敵なデートでした。

 うん、あのレストランったらお料理もお酒もすごく美味しかったんですけどさすがに私のお給料で行くにはちょっとキツそうです。バウム伯爵家御用達ってだけあるわあ。値段書いてなかったけど私だって筆頭侍女として高級品の名前くらい覚えてますからね! その羅列でしたからね!!

 アルダールが「気に入ったんならまた来ようか」って言ってくれたんですけど、ものっすごく高いお店だってメニュー見てわかってるから是非にとはちょっと即答できずに曖昧に「機会があったら……」なんて返事しちゃいましたよ……。

 とりあえずアルダールから突っ込まれることもなかったですけどああいう時に笑顔で甘えられたら女としての格ってのも上がる気がしますができませんでした……!!

 だってほら、誘われて当然って態度だと高飛車な女ですし、固辞しても失礼ですし、ハイ喜んでー! だと食い意地の張った人間になるじゃないですか。何が正解だったのか……。


(ゲームとかなら選択肢が出てくれるのにさあ……“ミュリエッタ”みたいな答えを私がしても似合わないってわかってるから二の足踏んじゃうよねえ)


 可憐で可愛い美少女の「本当!? 嬉しい!!」ならともかく、普段落ち着いた地味女がそれと同じ行動してごらんなさい。わあ、目も当てられないね!!


 送ってもらって別れを惜しみつつ自室に戻って施錠をしてから化粧を落とし、ナイトウェアに着替えてお茶を淹れて一息ついてそれから執務室の方にも足を向けてみました。寝る前に何か緊急書類とか来ていないか一応確認しておかないとね!!

 執務室の方もきちんと施錠がされていたので恐らくセバスチャンさんがやっておいてくれたんだと思います。内側からと外側からと、ちょっと複雑な構造の鍵があるんですよねここ。

 一応機密とかが持ち込まれた時ように、一定のメンバーが知っている秘密の方法ですね!

 内側からは籠城用に、外側からは敵を閉じ込めるように……ってことです。

 まあそんな風に使われたことはないと思いますが。ないですよね?


 書類はスカーレットのちょっと右上がりの字でまとめられたものが幾つかと、領収書関係と、手紙が届いていました。

 なんとメレクからです!! そしてその封筒の中には色の違う便箋が入っていて、オルタンス嬢からでした。二人からは早いうちに顔合わせであいさつしたい旨が書かれていたので私の方もちゃんとお返事しようと思います。

 それにしてもオルタンス嬢からは、兄のセレッセ伯爵から色々聞いている、尊敬している、メレクと一緒に領地をきちんと経営していきたいという決意表明みたいな内容が書かれていたんですがあれぇ?

 なんだか彼女、だいぶゲームとは違う感じですね……?

 確かゲームでは兄に倣って外交官になりたいけど実力的にキツくて悩んだりするキャラだったと思いますが、なんだかそういう感じがしません。寧ろメレクと一緒に領地を盛り立てて行くことにものすごく意欲的な感じがする手紙ですけど……いやまあ、ゲーム通りでないことはもう色々実感してますからわかっているつもりでしたが。

 うぅん……会うのが楽しみなような、怖いような……ですね!


 スカーレットの書類はざっと見たところ間違いはないかな。

 ただ書き方が乱暴なことと、計算を面倒くさがった感がありあり見えるのはいただけませんね。

 何回も書き直しの二重線が書かれているのはちょっと……いえ、これは最終版ではないからどんな間違いをしたのか確認する意味で構わないのですが、これは指導すべきでしょう。

 でもそれ以外はないかな! 成長しましたね、本当に!!


 後は明日になってからメイナにパーティでのことを詳しく聞くとしましょう。

 セバスチャンさんが補足説明をしてくれるでしょうから、そう誤りもないと思いますが。

 そういえば王太子殿下のお妃候補に、国内の有力貴族のお嬢さま以外で南の国の姫君もいらしたんでしたね、そちらもどうなったのか知りたいな。


(ミュリエッタさんと会った王太子殿下の様子とか……確かゲームだと、ご挨拶をさせてもらって……)


『お前が、英雄の娘か。垢抜けぬ娘だが、この国の貴族としてお前の父は列されたのだ。それに恥じぬようにせよ』


 静かに厳しい言葉を投げかけられて、ヒロインはその時ムッとするんだよね。

 なんてヤなやつだろう! って。言ってることは正しいのかもしれないけど、初めて会った人に言うセリフ!? ってね。

 でも今の王太子殿下だったら、もう少し……いやまあ、相変わらず他人にも自分にも厳しい方ではあるんだろうけどプリメラさまとの触れ合いを通して大分人当たりが柔らかくなってると思うんだよなあ、ゲームに比べたら。

 あんまり接点ないから確証はないんだけど。


 その点でミュリエッタさんが何か行動をしたのかとかも知りたいなあ。

 統括侍女さまのお言葉があったから、多分大人しくしてたとは思うけどね。さすがにね。

 あれだけのこともあったし、ウィナー殿だってミュリエッタさんに甘くしてばかりいないでしょう。


「……まあ、問題はなさそうかな」


 今日は色々あったなあ。


 仕事をして、ミュリエッタさんに会って、ちょっと人間関係の黒さを垣間見て、デートして。

 イベント盛りだくさん過ぎない?

 まあ、充実しているだろうと言われればそうなんですけどね。

 

(次はディーン・デインさまとのお茶会のセッティングかな。その頃にはメイナとスカーレットを家に戻してあげたいな……多分大丈夫だろうけど、少しシフトを考えなくちゃ。セバスチャンさんに明日話をしてみよう)


 タルトタタンを作るってプリメラさまと約束したものね。

 そのための林檎も用意しておかなくては。いつ頃にするかパーティでお話ししてきただろうか?

 それともこれからバウム伯爵家の都合を聞いてからかな。きっとアルダールも護衛で来てくれるだろうから、タルトタタンをお土産に持たせてあげよう。

 案外甘いものが好きな彼だから、きっと喜んでくれると思うんだけどね!

 うーん、寒い日だから室内デートとはいえ、雰囲気がいい部屋はどこがいいかなあ。

 冬の庭が楽しめて、お二方の会話が弾む部屋か。

 後は茶器とかも場を盛り上げるための小道具としてきちんとしたいところ。

 

 可愛らしい恋人に、なにをしてあげたら良いのかなあ。

 書類をとんとまとめて私は欠伸をかみ殺し、さすがに今日は疲れたなあ、と思いました。


 まあ、悪くない疲れですよね。

 充実した疲れと言いますか。ミュリエッタさんの件は……冷や汗が出ましたけど。それでも彼女が必要以上に咎められなかった事にも胸を撫でおろしましたし、彼女のあの暴挙から父親の方も危惧を抱いてくれてより一層躾に力を入れてくれるならちょっと安心ですよ。


「明日から、また侍女仕事頑張ろうっと!」


 とりあえずは今日はもう、ゆっくり寝ましょう!

 変な夢も見ず、きっとぐっすり眠れるに違いありません。


「……プリメラさま、明日たくさんお話聞かせてくれるかしら」


 にこにこ笑って、ディーン・デインさまとのあれこれを話してくれるであろうプリメラさまを想像して私も思わず笑みがこぼれてきました。うん、楽しみ。


 言っておくけど、アルダールは送り狼にはなりませんでした。……なってくれなかったんだぜ!!

 く、悔しくなんて、ないんだからなああああああ!!!

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