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ヤンデレ勇者と恋する魔王  作者: MiTsuYa
第一章「プロローグ」
6/9

六話


 スーパーに買い物に出かけた俺たちは、通行人や買い物客の視線を一同に集めていた。

 そりゃ俺もちょっとは顔に自信はあるよ、イケメンってほどじゃないけど……。

 両手に花ってこのことだろうな。片方には魔王の娘、もう片方には勇者なんて只者じゃない。金持ちでも出来ないことだからな。それに関しては自慢できる一つに加えてもいいかもしれない。


 二人とも性格に難ありだけど……。


 買い物に行くだけで有名人の気持ちを味わえるとは思ってもみなかったが、有名人はきっと大変だな。好奇な視線に耐えれるほど俺はタフじゃなって、改めて気づかされたよ。

 自宅から少し歩いた場所にあるスーパーに買い物にやってきた俺たちは、入り口で買い物かごを手に取る。買い物客はそんなに多くはなく、惣菜を買いにやってきた会社帰りの人たちの姿が多いようだ。

 適当に今夜の献立を考えながら、安売りの食品を買い物かごの中に入れていく。


うーん、雫とフィアにも聞いてみるか。


「雫は何か食べたいものとかあるか?」


一応すぐ横にいた雫に食べたいものを聞いてみる。


「私は兄さまが作る料理だったら何でも良いです」


 笑顔で答えてくれる雫だが、食べたいものを言ってくれると助かるんだけどな。

 ていうかフィアどこに行った。気づいたら居なくなってるじゃねぇか。さっきまであんなにくっ付いてたくせに……。


「フィアさんなら、さきほどお菓子売り場に向かわれましたよ。どうせ兄さまは巨乳がお好きなんでしょ? お二人で楽しく買い物を楽しんだらどうですか?」


 あれ、なんでそんなに卑屈になってんの? それになんで俺がフィアを探そうと思ってたの知ってんの? 一言も喋ってないぞ俺。


「もちろん雫との買い物も大切だけど、一応フィアのことは見ておかないと。もしも何かあったら、俺の首から上だけが世界中に配信されるんだぞ」


「大丈夫ですよ兄さま。もし兄さまを傷つけようとする輩が現れても、私が全力で消しますから」

「た、頼もしいな、ハハハ……」

「はい! 頼りにしててくださいね、兄さま!」


 そんな期待に応えようとしなくていいんだぞ。

 手を抜いてくれるぐらいが、俺にとっては一番安心できるんだから……。

 不安しか残らないことを、はっきりと雫に宣言されてしまったが、フィアも俺に対して「好きです!」って告白してたな。


 たぶん俺の周りには、変わり者と変人しか集まってこない。


 客観的に、美少女二人に囲まれながら楽しい学校生活を送れると思うか、いつ殺されるか分からない状況で怯えなくちゃいけないと悲観的になるか。

 どちらにせよ楽しく生きていくという信念を忘れなければ、ヤンデレだろうが魔王だろうと問題なく生活していけるはず……。


「翔梧さん、ちょっとこっちに来てください!」


 店内のどこからか、俺を呼ぶフィアの声が聞こえてくる。

 店内ではお静かにって教えてもらってないのか? 周りの客の視線が痛いってもんじゃないぞ……。


「――ハンバーグがいいな……」

「え……?」


 顔をうつむかせながら俺の服の袖を掴み、聞こえるかどうかの小さな声で食べたい料理を教えてくれた。


「よし、なら今日はハンバーグにするか! 雫の好きなチーズ入り」

「本当! ありがとうございます兄さま!」


 子供のように喜んでいる雫の姿を見ていると、こっちまで嬉しくなる。

 俺の腕に掴まっている雫がご機嫌なうちに、フィアの声が聞こえてくる場所に向かう。


「フィア、店内では静かにしな……なにやってんの」

 フィアのところまでやってきた俺と雫は、普段なら絶対に見ることのできない行為を目撃してしまった。

 フィアの周りの床には、お菓子などが大量に散らばっていた。

 しかも会計を済ませていない商品なのに、開封されていたり食べていたりと、フィアは好き勝手にしていた。


「翔梧さん! このお菓子美味しいですよ!」

「おいフィア、それ金払ってないだろ? 向こうにいる店員がこっち見てるぞ」


 鋭い視線を俺たちに向けている店員のことなどまったく視界に入っていないのか、フィアはお構いなしにお菓子を食べ続けていた。


「はぁ……ここは私がどうにかしますので、兄さまは買い物を続けていてください」

「すまない雫、後でなんかするから」

「良いんですよ兄さま。それより早く材料を買って、二人でご飯にしましょう」


 なんか二人ってところだけ強調してた気がするけど、無理やりフィアのこと忘れようとしてるんじゃないだろうな……


「わかった。できるだけ早く帰ってくるんだぞ」

「はい。では兄さま、また後ほど」


 雫に笑顔で送り出された俺は、雫が食べたいとリクエストしてくれたハンバーグの材料を購入していく。

 レジで会計を済ませた俺は、ハンバーグの材料と数日分の食材を入れた買い物袋を持ち、自宅まで一人で戻る。

 さきほどの賑やかさが嘘に思えるほど静かな帰り道に、俺は少しだけ寂しさを感じていた。

 俺の財布の中が、残りわずかと気づかされたのが原因だった。やっぱり普通に生活するには、バイトだけじゃ無理だな。

 俺は星が輝く夜空を見上げながら、お金の大切さを悟った気になった。



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