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プロローグ:儚い人の夢
ぼちぼちマイペースに書きます。
赤い空。
何度も見た空。
この光景は、きっと地獄に堕ちても忘れることはできないだろう。
この光景ならば、きっと何度でも思い出せる。
大事なものを取り零した無力な人間の、最期の足掻き。
大切なものを失う前の、最後の救い。
それはきっとどんなお伽噺よりも惨めで。
どんな英雄よりも情けなくて。
だからこそ何よりも尊くて。
無駄な努力なんてないと。
助けられない命なんてないと。
救われた自分がいたのだから。
届きはしない。
輝きもしない。
けれど、この過程に意味はあるのだと。
信じていいのだと。
嘘でもいいのだと。
そう嘯いた男がいた。
もう何も思い出せない。
何も考えられない。
そんな人間の、繰り返した過程の、終わりの一幕。
「我々は何処から来たのか」
「我々は何者か」
「我々は何処へ行くのか」
そしてまた人は繰り返す。
終わることのない夢を。
霞に消える虚しさを。
変わらない明日を。
埋もれた誓いを。
築いた過去を。
通った道を。
この、空を。