遠足
さて、新学期も始まってもう一週間になります。みんなある程度新しいクラスにも慣れてきました。
そんなある日のHRの時間です。
先生 「来週の水曜日、遠足に行くぞ、一班男子3人女子3人の班をこの時間中に作るぞ!」
どうやら、クラスの仲を深めるための行動らしい。
先生 「と、いっても男子と女子は別々に3人グループを作って、後であみだくじで班にするから男子、女子は3人班を作ってくれ!」
そして、自由に話し合う時間が始まりました。始まった途端、私の元へ一人の女の子がツインテールを揺らしながら駆けてきました。
萌愛 「ねえねえ智佳!いっしょに班になろう!」
智佳 「うん!いいよ!」
さて、あと一人か・・・と、なんだかんだしているうちにほとんどの班が決まっていってしまった。すると、後ろの方の席に誰一人とも話そうとしない、鋭い雰囲気の女の子がいました。
智佳 「あの子誘おうかな・・・?」
萌愛 「えっと、名簿名簿・・・あった!」
萌愛がその子の名前を調べてくれています。
萌愛 「席の場所から・・・春菊 いぶき さんだね」
智佳 「それじゃあ頼みにいこうか!」
そして、私達はいぶきの元へ向かいました。
智佳 「春菊 いぶき さん?」
いぶき 「何?」
鋭い視線でこちらを見てきた。そのせいか、萌愛は私の後ろに隠れてしまった。
萌愛 「あうぅ・・・」
智佳 「えっとね、この遠足で誰と同じ班になるかもう決めた?」
いぶき 「別に」
智佳 「じゃあ、私達と一緒に行かない?」
いぶき 「あたしはその日休むつもりだからどうでもいいけど」
これは・・・自分の興味のないことには完全にかかわらないタイプだ・・・
智佳 「それじゃあ、形式上でもいいから一旦このメンバーで登録するね!」
いぶき 「・・・・・・」
というわけで遠足の班は私、萌愛、いぶきさん、+男子三人で決まりました。
その日の帰り
智佳 「いぶきさんって本当に来ないつもりなのかな?」
萌愛 「う~ん・・・どうだろう・・・」
智佳 「仲良くなれるのかな・・・いぶきさんとも・・・」
萌愛 「わたしは・・・いぶきさんのことちょっと苦手かな・・・」
確かにその意見もわかる・・・今日の視線は本当に鋭くって・・・萌愛も私の後ろに隠れてたし・・・
だけど、
智佳 「仲良くなるためにはどちらか片方が受け入れを拒んだら成り立たないと思うの。だから私はいぶきさんとも仲良くなれると思ってるよ」
萌愛 「智佳は・・・誰にでも優しいんだね・・・」
智佳 「そんなことないよ。一期一会を大切にしないと、萌愛とも出会ってなかったかもしれないんだよ」
萌愛 「そうだよね・・・じゃあわたしもいぶきさんと仲良くできるように、ちょっと頑張ってみようと思う!」
智佳 「その意気だよ!それじゃあまた明日!」
萌愛 「また明日!」
とりあえず、明日からいぶきさんに話しかけていこうと思う!そして、私は眠りに落ちた。
翌日
萌愛 「いぶきさん、来ないね・・・」
智佳 「うん・・・今冷静に考えたらいぶきさんほとんど遅れてきてたよね」
萌愛 「いわれてみれば・・・」
まだ新学期も始まった直後です。関わりのない人の行動はまだよくわかってなかったので、今まで気づかないわけでした。
その日の二時間目の途中
いぶき 「すみません、遅れました」
と、いぶきさんはいつものように遅刻届を先生に出します。
先生 「はい、席についてね」
よし、休み時間にでも話をしに行こう!
キーンコーンカーンコーン
智佳 「いぶきさん!」
・・・・・・
いない
萌愛 「はやいね・・・」
智佳 「うん・・・」
そうして、私達の計画は撃沈しました。もちろん、ほかの休み時間もいぶきさんは光の如く去っていました。
その日の夜
智佳 「いぶきさん、もしかして人と関わるのが苦手なのかな?それとも・・・」
そんなこんな頭を悩ませ続けていた故に、その日は寝不足となってしまっていました。しかも、よりにもよって今日は体育で持久走・・・
体育の時間
萌愛 「あれ?智佳、寝不足?」
智佳 「うん・・・ちょっとね」
そうして、始まりのホイッスルが鳴り響く。そして案の定走り終わった後に気持ち悪くなった。
萌愛 「智佳・・・大丈夫?」
智佳 「はぁ・・・はぁ・・・もうダメ・・・」
そうして私は倒れこんだ。
次に目が覚めたのは、保健室のベッドの上でした。
智佳 「ここは・・・?」
萌愛 「保健室だよ!おはよう智佳!」
智佳 「今何時間目?」
萌愛 「3時間目が終わったところの休み時間だよ!」
体育は2時間目だったのでまる1時間休んでいたことになる。
智佳 「それじゃあ、そろそろ授業に戻らないとね」
萌愛 「だめだよ!!!無理したらまた倒れるかもしれないんだよ!だからもう少し休んで!」
智佳 「でも、勉強が・・・」
萌愛 「わたしが智佳の分までノートを取るから大丈夫だよ!だからゆっくりしてていいよ!」
たしかに、また倒れる方がみんなの迷惑になるかもしれない。
智佳 「わかった。じゃあまたあとでノート見せてね」
萌愛 「うん!それじゃあ、お大事に」
そうして萌愛は教室に帰っていった。そして私も再び眠りについた。
目覚めたのはちょうど4時間目の終わりごろでした。そして、保健室の先生にお礼を言い保健室を出るところで、見覚えのある女の子が全力ダッシュで飛び込んできました。
萌愛 「智佳ああああああああああ!心配したよ!もう大丈夫!?」
智佳 「もう大丈夫。萌愛がちゃんと休んだ方がいいって言ってくれたからだよ!ありがと」
萌愛 「うん!それじゃ、お昼ごはん食べにいこ!」
そうして何気ない日常を楽しんでいきました。
そして、遠足当日
萌愛 「やっぱりいぶきさん来ないみたいだね」
智佳 「まぁ、仕方ないか・・・説得できなかったし」
萌愛 「わたし達だけで楽しもっか、智佳」
智佳 「そうだね」
いぶきさんのことも気になるが、気にして楽しまなかったら萌愛にも悪いし、今は楽しんでいきます。遠足といっても和風の店々を歩きわたるだけなんですけどね。行動の基準は後で文句言われたくないので男子グループにあわせています。その男子グループの人々はちょくちょく私たちに話しかけてきます。案の定萌愛はコミュ障っぷり全開で一言も発さず私の後ろに隠れています。私も男子はそこまで得意ではないので最低限の会話で回避しています。
そうして、遠足の終盤のお土産屋さんにて、
萌愛 「智佳!何買う?」
智佳 「う~ん・・・やっぱりせっかくここまで来たんだからここのご当地ストラップにしようかな?」
萌愛 「じゃあわたしも☆それの色違いにしようっと!」
そうして、色違いのストラップを私たちは買いました。最後にクラスの集合場所付近にソフトクリームを売っている店がありました。
智佳 「時間にもまだ余裕あるし何か最後に食べよっか」
萌愛 「うん!えっと、どの味にしようかな・・・?」
王道なバニラ、和風な抹茶、このあたりで有名なのだろう栗、同じく有名なのだろう小倉。この四種類があります。
智佳 「せっかくだから小倉にしようかな?」
萌愛 「じゃあわたしは栗にする!」
せっかくここまで来たのだから普段食べないような味を選んだ私達でした。私がもくもくと食べていると、横で萌愛がこちらをじ~っと見ている。
智佳 「もしよかったら一口食べる?」
萌愛 「え!?いいの!?」
智佳 「もちろん!はい、あ~ん」
すると萌愛は真っ赤になって、
萌愛 「これって・・・関節キッス・・・」
それを聞いて多少ドキッとしたが、女の子同士なのでそこまで気にはしませんでした。
智佳 「大丈夫、私気にしない人だから。それとも萌愛が気になる人?」
萌愛はぶんぶんと首を横に振ります。
萌愛 「それじゃあ、いただきます・・・」
その一口をあげた後、
智佳 「じゃあ萌愛の分も一口頂戴!」
萌愛 「うん、いいよ!あ~ん」
智佳 「あ~ん」
萌愛の選んだ栗ソフトも美味しかった。そして、私達は充実した遠足を過ごしたのであった。帰りのバスはほとんど寝て過ごしてしまい、バスの時間は何も覚えていませんでした。