表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

衝撃の事実

 もう、日本中が火星人に支配されてて、わたしの居場所なんてどこにもないんだ。

 わたしはこれから宇宙人に連れ去られて、ばらばらに解剖されちゃうんだ。

 ちらちらとそんなことを思い、わたしは泣きながら家の帰り道を歩いていた。

「……だめだ」

 しかしやっぱり宇宙人とか結局現実感がない。

 今確かにわかるのは、もう、日常には戻れないということ。

 もう、会社に戻れない。

 やっと仕事が楽しくなってきたのに。

「何がいけないんだろう。セクハラよばわりしたことかなあ」

 そう考えながら、アパートの郵便受けを素通りして、二階の部屋に上がる。

「いや、べつにそうじゃなくて」

 独り言に返事が聞こえた。

 部屋の扉の前に宮本くんが立っていた。

(わたしより、早くにわたしの家にいるってことは、駅ですれ違ったのかな)

 それとも宇宙人だからUFOで飛んできたのかな。

 もう、みんなが敵だと思うと、かえって腹が据わった。きっと睨みつけて、言ってやる。

「何しに来たの。誘拐? 解剖?」

「しない、しない、しない、しない」

 宮本くんは両手と首をぶんぶん振って、全身で否定した。

 その宮本くんの態度が、なんだかそれが本当のことに思えて、わたしの目からぼろ、っと涙が落ちた。

 宮本くんは、ぎょっとして、固まって。

 それからハンカチをすっと出してくれた。

「怖がらせて、ごめんさい」

「うーーー」

 すみません、ごめんなさい、と宮本はくり返した。それに安心したせいか、わたしはかえって、泣きじゃくってしまった。

 宮本くんは泣いてるわたしをしばらく見ていたが、ためらいがちに背中をさすってくれた。

 泣きやむまで、ずっと。

「宮本くん、あのね」

 だから、ようやく勇気をだしてわたしも言えた。

 おとといみたいに宮本くんの手を持って、わたしは言った。

「宮本くんが、青い血でも、宇宙人でもなんでもよかったの。別にわたしはよかったの」

「……うん」

「見ないふりしてれば、宮本くんだって困らないでしょ。だからそうしようと思ってたのに」

「ごめんなさい」

 もう一度、宮本くんは謝った。

 そしておもむろに「気を悪くしないで聞いてほしいんだけど」とわたしの両肩に手を置いて、悩ましげに告白してきた。

 衝撃の事実を。

「宇宙人サポートセンターから預かった書類があってさ。乾さんにそれを一筆書いてもらわないと、俺の方が誘拐っていうか、地球外追放される感じで」

「へ?」

「だから一刻も早く、ちゃんと話をしたくて、みんなに協力してもらいました! むしろ怖がらせて本当に申し訳ありませんでした!」

 わたしは、もう。なんだかわかんなくなってて。

 とりあえず、家で顔を洗わせてくれと宮本くんに頼んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ