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02天界からの任務


 空の都、天界。二人の神が創ったこの世界を天から見下ろし、地上の平和を守るべく結成された天使兵達が住まう場所。彼らの使命は生物の魂の循環を正しく機能させる事。肉体から離れた魂を導き、再び地上へと送る。闇に捕らわれたものや奪われた魂の奪還も彼らの仕事に含まれる。


 そしてもう一つの重要な役割が地上の平和維持だ。神を信仰する者を見守り、時には護る。人々を恐怖に陥れるような存在を見つけたのなら、退治し弱き者を救い出すのが天使の役目。世を乱し、神を冒涜するのであれば、たちまち裁きの雷がその身に降り注ぐだろう。


 ここ暫くは平和が続いていたのだが、最近になり地上に不穏な空気が流れていた。遥か昔に滅んでしまったと思われていた闇の力が、今になって活動を始めたというのだ。その原因と対策を検討するため、天界最高責任者である天の声と呼ばれる男が部下の到着を待っていた。清らかな泉を中心に建てられた祭壇。白い柱と女神像が並ぶ中心に、同じく白い髪と衣を纏った男が立っている。


 そこへ空中から二人の男女が現れた。一人は藍色の翼を羽ばたかせ着地。もう一人はふわりと重力を感じさせない動きで地に足を下ろした。赤紫色に統一された服とイヤリングを着け、羽を生やした女性が一歩前へ出る。その黒い瞳は自信と強い意志を感じさせる。


「ご命令によりウミネコ、ただ今参上しました」


 対照的に同じ黒い瞳でも、やる気を感じさせないもう一方の男は軽い雰囲気を持っていた。一つ目の猫耳ヘルメットを被り、両肩と口元にも同じような装飾具を着けている。怪しい格好はどう見ても天使というより悪魔だ。


「同じくヤマネコでーす。会うのは久しぶりですね、天の声さん」


 馴れ馴れしい挨拶をするくせに無表情。下級天使なら抹殺されてもおかしくない言動だ。天の声の視線にも殺気が宿る。この二人が天界最強の双子でなければ、下級だろうが上級だろうが関係なく手を下していただろう。


 妹のウミネコ、彼女はまだましだ。多少思考に強引な面が見られるが、それは誰よりも強い正義感からくるもの。実力も信仰心も申し分ない。天界で装置を使わずに裁きの雷を操れるのは己と彼女、二人の創造神だけだ。


 兄のヤマネコ。どうしてこんな者が天界に存在するのか。二人は神の力と魔の力を併せ持つ神魔属。神が自ら創られたため、その実力も他の者と比べ桁違いに高い。しかし魔の力を強く持つこの男はどうも気に食わない。不真面目では無いのだが、やる気のなさそうな顔と態度が鼻につく。何を考えているのか分からない所も原因の一つだろう。


 苛立ちを抑え、天の声は本題に入る事にした。一々反応していては話が進まない。何度かの付き合いで、ようやく慣れてきたところだ。


「二人共、呼び出された理由は分かっているだろうな」


 勿論ですわ、と意気込んでいるのはウミネコ。何とも頼もしい。一方表情にやる気の感じられない兄は、まぁ何となく・・・などとほざいている。この男は任務の重要性を本当に理解しているのか。上司の疑いの眼差しを受け、仕方なくヤマネコが口を開く。


「最近動きが目立つ闇の者ですよね。汚染された魂も見かけるようになりましたし」


「えっ、私はてっきり魔界を滅ぼすのかと」


 残念ながら分かっていないのは妹の方だった。本音を言えば天の声もそちらを命令したいところだが、魔界を作ったのも我等が神の一人。許可無く攻め込むなど出来るはずがない。不満そうな妹にヤマネコは今攻めるメリットが無い、殲滅のための兵力不足などを説いている。正論なだけに余計腹が立つ。二人の無駄な部分を切り取って一人に統一してくれないだろうか。天の声は本気で神に願おうかと一瞬考えた。


「それで、何か原因に心当たりはあるんですか」


 親切丁寧な説明会を終えた兄妹は再び天の声に向き直る。彼は頭痛を無視して話を進める事にした。


「原因はハッキリしている。魔界の統治者である大魔王が変わったからだ。初代大魔王が滅ぼされてから、魔界は闇に支配されつつあった。その影響で地上でも大勢の者が闇に命を奪われていった。これはお前達が生まれる前の話だ。その後、新たな大魔王が闇をどうにか押さえ込み、魔界を安定させる事に成功した」


「魔界を嫌っている割には良く知っていますね」


「あら兄様、敵を倒すには相手を知ることが重要ですわ。それが例え汚らわしい魔属だとしても」


 話の腰を折られても構わず天の声は続けた。


「その大魔王が二年程前に後継者を選び、退いたという話だ。これは闇が活動を始めた時期と一致する」


「つまり、どういう事ですの?」


「後継者とやらがどうしようもない奴で、魔界を維持するだけの力を持たない能無しって事じゃないのかな」


 案外今の魔界なら滅ぼせるんじゃないか、とも思ったヤマネコだが口にはしなかった。妹はともかく、天の声まで乗り気にでもなったら面倒だ。ありえない話だが万が一という事も考えられる。ウミネコが汚らわしいと言っていた魔属の力を自分達も持っている。特に神の力より魔の力を強く持つ彼としては、あまり魔界とは争いを起こしたくなかった。


 ヤマネコは自分達が呼ばれた理由をおおよそ理解した。今回の任務は魔界への潜入だ。純粋な神属ではすぐに正体を見破られてしまう。敵地を単独で行動できる戦力と、敵の目を欺く能力を必要とする。この天界でそれを可能にするのは自分達か神しかいない。


「今回の任務は魔界への潜入、及び闇の力の監視だ。発生源を特定次第封印し、地上への露出を防ぐのだ」


 任務の内容はほぼ予想通りのものだ。恐らく命令を受けるのは自分だろう。魔属を毛嫌いしているウミネコでは、ボロを出す可能性が高い。攻撃を目的としているならそれでも良いが、闇の力を抑えるには魔界の存在も必要だ。今滅ぼしてしまえば一気に闇の力が蔓延し、地上をも喰い尽くすだろう。地上が滅べば、奴らが次に狙うのは天界だ。地上の信仰を失った神属では闇の力に対抗できない。


 疑問はなぜ二人一緒に呼び出す必要があったのかだ。


「ヤマネコ、魔界にはお前が行け。ウミネコはここに残り天界の守護に専念するように」


 了解と、返事をする兄を見て妹は不満そうな表情だ。いくら兄に実力があるからといって、単独で悪の巣窟に乗り込むのは危険だ。


「どうして兄様だけですの?」


「天界にも影響が出る可能性もある。必要と判断すればお前にも行ってもらう」


 天の声に理由を聞き、彼女はようやく納得した。同時に兄も天の声の思惑が読み取れた。この任務に何か裏があるのかと思ったが、そうではない。単純に自分が信用されていないだけだ。彼は自分を魔界に行かせれば影響を受け、裏切るのではないかと危惧している。妹を人質として天界に置く事でそれを抑止しようという魂胆なのだ。


 何とも心配性な人だ。天界を裏切るなどと、それこそメリットが無い。回りくどい事をせず、面と向かって忠告してくれればいいのに。会話したくない程嫌われているのだろうか。


 考えていても仕方が無い。任務を全うすれば文句は無いだろう。


「それじゃ、行ってきますね」


「ちょっと待て」


 どうやら会話くらいはしてくれるようだ。この場を立ち去ろうと足を踏み出した所で、心配性の人に呼び止められた。振り向くとがしっ、と肩を掴まれウミネコには聞こえないように「裏切るなよ」と凄まれた。目が本気だ。


 そうハッキリ言われると、期待に応えた方がいいのかもしれない気がしてきた。とりあえず今のところは素直に応じておこう。ついでに大魔王が本当に能無しだったら始末しても構わん、とも言っていた。本当は魔界を攻めたくて仕方ないんじゃないか、この人。まあ世界の安定のためになるなら、別にそれくらいはやってもいい。大魔王の代わりなどいくらでもいるだろう。


 天の声の激励を受け、魔界での行動拠点は決定した。目指すは大魔王の拠点、大魔王城だ。



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