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第14話

「私も行くぞ!」


気が引けるが翔夏が駄々をこねるので、翔夏を連れて奴隷オークション行くことなった。

女連れて行く場所じゃあ無いんだけどなぁ。



ここで奴隷について説明しよう。

ここの国では奴隷を買うことは合法で、多くの奴隷は戦争の捕虜や借金で身を持ち崩した者、犯罪奴隷など様々な理由を持っている。

その奴隷達は一般的には、奴隷商人が集まった奴隷市場で売り買いされる。

奴隷には隷属の魔法印が刻まれ、主人の命令には必ず従わなければならない。

奴隷の印として、首輪をつける主人もいる。


そしてこれから行われる奴隷オークションは、その奴隷の中でもかなりの強者や容姿に優れる者、戦敗国の高位貴族などがオークション形式で競り合われるのだ。

なぜこんなことをするかというと、単に大貴族がいい奴隷を手に入れたいという欲求と、奴隷を出来るだけ高く売りたいという商人の想いがあわさった結果、招待された客だけが参加できる奴隷オークションという形になったのだ。



朝焼け亭から出るとき、朝食前まではこちらを監視するように見ていたおっさんが、ニヤニヤしながら見送ってきた。

見知らぬ少女を連れ込んだことへの監視はわからなくもないが、ニヤニヤはどういうことだ、おっさん!

ニヤニヤと笑みを浮かべるおっさんの意図を理解したのか、翔夏が俺の服の裾を摘まんで恥ずかしがっていた。


殴りたい。あのおっさん凄く殴りたい。


出る間際におっさんに中指を立ててやった。


あと、ちゃんと翔夏の分の宿泊費は払ってある。


濃紺のチケットの裏に書かれていた奴隷オークションの開催時刻は、かなり朝早かった。

夜に奴隷を引き連れて歩くのは目立つからだろう、日中なら奴隷を連れて歩く人はそう珍しくない。

貴族の多いこの街なら尚更である。


いつも通りに裏通りに入り、仮面を被る。

翔夏には俺の白い仮面とは色違いの、赤い仮面を被せておいた。

翔夏は前が見にくいと文句を言っていたが、手を繋いでやると静かになった。


こいつに何をすれば従順になるかが分かってきた気がする。




◇◇◇◇◇◇


タルキス商会の入り口に行くと、いつも通りに細身の男が立っていた。

顔がニヤつくのを耐えている様子だ。


どいつもこいつも何なんだよ。


翔夏は気付いていない様で、キョロキョロと周りを見回している。


非合法オークションの時に出品用の品を渡した部屋で、また隠し扉を通ってオークション会場に向かう。

非合法オークションの時とは入る隠し扉が違い、通路も長かった。


歩いていると、体育館ほどの大きさのホールにでた。

そこには何人かの貴族が使用人を連れて、談笑していた。

その奥に4つの扉がある。


奴隷オークションの会場は、4つのの会場に分けられている。

戦闘用奴隷

愛玩用奴隷

貴族奴隷

の3つと、目玉商品を競る大会場がある。

俺は先に言った3つの会場には行かずに、目玉商品を競る会場に直行した。

俺には戦闘用も愛玩用も必要ないし、貴族奴隷など扱いにくい場合が多い上旅をするつもりなので、我が儘ばかりの箱入り娘は必要ない。

むしろ目玉商品の会場で良い席を取っておきたい。


俺と同じ考えなのか、既に目玉商品の会場には何人かの貴族が座っていた。

ここの競りが始まるのは、3つのオークションが終わってからなので、座っている貴族は暇そうにしている。

翔夏は、来るのが初めてだったのかそわそわしている。

下手に注目されないか心配だ。

俺はこのオークションには来たことはないが、前世で同じようなオークションには幾度となく参加しているので、かなり堂々と座っている。


しばらく待つと、会場の席がかなり埋まってきた。

そろそろ目玉商品のオークションが始まる様である。


知った顔が居ないか見回すと、


名前:ルーゼンベルク・デルクール 19歳 男 Lv.42

称号:『ヤマト王国貴族デルクール侯爵家3男』『ヤマト王国騎士団序列第十九位』

状態:良好


兄がいた。

昔から語っていた、騎士団に入る夢が叶ったらしい。

それに第十九位と、騎士団の中でもかなりの上位にいるようだ。

ちなみに騎士団序列第十九位というのは、団長 副団長の選抜候補に入る位に上位に位置している。


まだ、この街に居るのなら後で訪ねるとしよう。

5年ぶりの親族との再開だ、適当に酒で持っていって騎士団について話を聞いてみるとしよう。


と考えている間に奴隷オークションが始まった。

出てくる奴隷は皆、ドレスやスーツ、タキシードを着て着飾っている。

見栄えを良くして買ってもらおうという魂胆だろう、みえみえである。


少し聞き耳をたててみる。


「目玉商品の為の大会場が使われるとは、珍しいこともあるものですな。」


「おや、貴殿フルールが滅亡したことを知らないのですかな?」


まわりの話を聞いてみると、少し前に革命によってフルール王国が倒れたらしい。

その革命軍の資金集めの為に、フルール王国に忠実な貴族や将軍が売りに出されたらしい。

いくら資金集めのためとはいえ、普通不穏分子は殺すのではないだろうか?

そもそも有能な将軍を他国に売りにだすなど、革命軍のリーダーの頭は大丈夫なのだろうか、先が思いやられる。失態に気付いてこちらに攻めてくるなどという暴挙をしなければ良いのだが…。


オークションが進んでいくと、翔夏が話しかけてきた。


「なぁなぁウル、あの子達可愛いと思わないか?」


翔夏の指差す先を見てみると、見た目が瓜二つの二人の少女が壇上に立たされていた。

翔夏はもうファッションショーとして見ているようだ。

確かに美男美女は多いが楽しみ方が違う。金が無いので仕方ないともいえるが。


司会進行の話を聞いてみると、


「この二人の少女は、なんとあのフルール王国の勇将ニヴェルシュタイン公爵のご息女なのです!」


会場がざわつく。

貴族達のヒソヒソ話が始まる。


「ニヴェルシュタイン公爵といえばフルール王国最大の貴族ではあろう?それも今代は有能で有名な人ではなかったか?」


「そんな貴族がやられるとはな、革命軍も油断ならないな。」


「むぅ、対革命軍の軍備を整えるべきか…。」


貴族の空気は前の二人の少女を買うことよりも、自分の領地を守るための対策を練ろうとする空気に変わった。

この国の貴族は意外と無能が少ないらしい。

ルクセンシェルナ帝国の頃なんか酷かった…。


そんな空気を掻き消すようにして、


「金貨10枚からです!」


司会進行が言い放った。


「20!」


「25!」


「30!」


「50!」


と貴族達が金額を提示していく。


転生してお世話になった以上放置するのは気が引けるし、元ニヴェルシュタイン公爵家の次男として、誰とも知らない奴にニヴェルシュタインにツラナル者を渡すわけにはいかない。


「100!」


手に入れたいという意思を込めて、高めに金額を提示する。

少し前に金貨1000枚という大金を手にいれたのだ、100枚位なら安い。


「なに!?ウル、あの子達が欲しいのか!」


翔夏がヒソヒソと話しかけてくる。

しかし今は二人の少女を手に入れることが最優先だ、無視させてもらう。


翔夏にはあとでケーキでもあげよう。

まだ《無限の箱》に大量にあったはずだし、翔夏のご機嫌もとれるだろう。


「100枚が出ました!他にありませんか!」


「120!」


理知的な大貴族らしき男がこちらを睨んできている。

これ以上金をかけさせるな、と暗にいっている。


「150!」


が、譲る理由も無い。

もし顔がばれていたら報復に来たかもしれないが、もしもの話である。


「160!」


理知的な大貴族も負けじと引き上げる。


「200!」


ここまで来て諦めるわけにはいかない、更に引き上げると。


「クッ…。」


諦めたらしい、手を下げて顔を下に向けた。

これであの二人は俺のものだ。


この頃悪役が型にはまってきた気がする。

直す気は今のところない。


「金貨200枚で落札です!」


パチパチパチパチパチパチ


周りから拍手が起こる。

金貨200枚となると一級品のミスリル剣が数本購入出来る大金だ。

一般的な奴隷は金貨2~3枚で売られると考えると、ニヴェルシュタイン公爵家の人望などもあったのだろうが金貨200枚というのは奴隷しとては正に破格である。


「ウル!そんなお金あるのか!?私はないぞ!」


翔夏が金を持っていないのは知っている。


「安心しろ。臨時収入があった。」


細かく説明することは出来ないが、大丈夫ということだけは説明しておく。


「金貨200枚以上の臨時収入って何なんだろう…。」


翔夏が何かブツブツ言っている。


「悪いことに手を染めてなければ良いんだけど…。」


余計なお世話だ。


とまぁ、金も使ったし後はオークションが終わるのをまつだけだ。





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