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第8話

肩に鉛を乗せたような気分で草原を歩いていると、街の周りを囲う少し茶色くなった石の壁がはっきりと見える位置まで到着した。


開かれた木製の大きな門の近くまで来ると、近くにある詰所らしきログハウスから、暇そうに窓にもたれ掛かっていた細身で金髪碧眼の兵士が出てきた。

革鎧をカチャカチャと鳴らしながら走ってきた。

優男と形容できる顔に、人の良さそうな笑顔をうかべて訊ねてきた。


「ようこそエイボンの街へ、私の名前はアレックスだ少し話し相手になってくれないか?少年。

ここを通る奴は商売熱心な商人や、忙しそうに依頼をこなす駆け出し冒険者や大貴族様ばかりだからな、暇なんだよ。」


「急いでないしいいですよ。

あと俺の名前はウルです。」


門番という仕事は余程暇らしい。快く返してやった。

ついでに《完全鑑定》も使用してみた。


《完全鑑定》を使用します


名前:アレックス・グリンフォード 28歳 Lv.128

称号:『エイボン伯爵家兵士』『無名の英雄グリンフォード』『我流戦闘術』

状態:良好

スキル:《魔法耐性》Lv.6

《剣術》Lv.8

《片手剣》Lv.8

《勘》Lv.5

《隠蔽》Lv.8

《格闘》Lv.7

《無魔法》Lv.5

《毒耐性》Lv.5

《石化耐性》Lv.3

《麻痺耐性》Lv.3

《精神耐性》Lv.7


こいつ強っ!?

なんでこんな奴が辺境にいるんだよ!?


俺が言うのもなんだが、Lv.128というのは世界でも上位に入る位には高いLv.だ。

というか普通に頭のおかしい数字である。

これまで見てきて、平民の平均がLv.8、冒険者がLv.15で、騎士がLv.25で騎士団長がLv.62といった具合なのだ。(騎士団長がやけに高いのは、騎士や冒険者はLv.の低い新人などによって平均が引き下げられているのに比べ、騎士団長はそれぞれの領地や騎士団から選抜された実力者がなるので、平均が高くなっている。)


ただの兵士がLv.128なんてこの街はどこかまちがっている。

少なくともこの北門は絶対に安全だろう。

魔王が来ても返り討ちにされる可能性が高い。


魔王がいるかどうかは知らないが、かなり転生者が入って来ているらしく、この世界のシステムがかなりファンタジーなかんじにバージョンアップされているので、居てもおかしくないと思う。


アレックスは俺の前に腰を下ろすと。


「ウル君はこの街になにをしにきたんだい?」


柔らかい笑みの中に、俺を値踏みするような視線が見え隠れする。


無難な返事にとどめておくことにした。


「冒険者になりに来ました。」


いくらでも倒せるとはいえ、面倒なことには変わりはない。

敵は増やさないに越したことはない。


「そりゃあいい。ここの街の周辺ででてくるのは、魔の森とアマレルツ草原を除けば弱い魔物やちんけな盗賊くらいのものだ。

駆け出し冒険者には丁度いい場所だろうな。

何か聞きたいことがあれば、遠慮なく聞いてくれ。」


「それなら安価な宿屋の場所と、エイボン伯爵の邸宅を教えて下さい。」


「宿は東区の朝焼け亭が安いが…平民がエイボン伯爵に用があるのか?」


「これでも侯爵家の子息ですよ、11男ですけどね。」


「なるほど、貴族様だった訳か。」


アレックスが目を細める。

貴族のボンボンが、英雄に憧れて冒険者になって、死体になって帰ってくることがよくあるのでそこを心配してくれているのだろう。


「大丈夫ですよ、それなりに鍛えてますから。」


「それなりに、か……。」


突然だが俺には何度転生しても克服出来ていないことがある。

それは自分の実力を隠しきれないことだ。

気配を完全に消したり音もなく移動はできるが、あまり隠さなければならない状況に

ならなかったのと、そもそも自分を大きく見せる技術のほうが必要だったからだ。

なので多少は出来るもの、実力者にはアッサリとばれてしまう。


兵士アレックスの視線に疑惑の念が混じる。


「なぁウル君。まだ時間はあるよな?」


「ええ、ありますけど。」


不味い

実力を隠そうとしていることがバレたか?


『象牙の書』のこともあって街へいくのは、気が進まなかったので話し相手になることは万々歳だったのだが、こんなところでつまづくとは…。


「それなら少し手合わせをしようか。

冒険者になるなら戦闘職との戦いはいい経験になるはずだ。」


「わかりました。少し離れたところでやりましょう。」


そう言うとアレックスは草むらから立ち上がり、アマレルツ草原のほうに歩いていった。


さぁ面倒な事になった。

実力をどうにかして隠しておくか。

それとも、いっそばらして黙っておくように脅すか…。

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