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姿を変えるダンジョン

世界設定の説明的な回が続きますがお付き合い下さい。

迷宮の入り口に着くとギルド職員が立って居た。

冒険者カードをオープンして提示する。

冒険者に登録していない者が勝手に潜るのを禁止する為だ。

さっきは簡単に登録が済んだが、冒険者には他の冒険者の推薦が無ければ成る事が出来ない。

これは勝手に飛び込んで死ぬのを防ぐ目的があるのだ。

ニースの場合は母親の推薦を受けている。


「ほぉ、ニースも遂に16歳になったか。その才能、無駄にするなよ。」

同伴アタックの頃から顔馴染みの職員が声を掛けてくれる。

「有難う御座います。みんなの期待を裏切らない様に頑張ります。」

「それが間違っていると言っている。冒険者はCランクぐらいまでは臆病なぐらいで丁度良いんだ。期待に応えようなどと無駄な事は考えるな。」


沢山の冒険者の死と向き合ってきたであろう彼の言葉にひたすら恐縮しながら迷宮の中へと歩を進めた。


◆ ◆ ◆


「今日は前回と構造が変わってないな。」

迷宮は常にその構造を変化させる。

その為、マッピングという作業はそのアタックの間のみ、有効な物とされる。

唯一つ、その階層に人がいる間は構造が変化しない。

自然、低階層などの常に人がいる階層は変化する頻度が低くなるのである。


只の落とし穴や飛び出し矢、ピアノ線の様な引っかけなどの簡単な罠を避けながら記憶の通りに地下2階への階段へと進んでいると、右の部屋にモンスターの存在を感じた。

「ジャイアントラットが2匹にホーンラビットが2匹か・・・。」

初戦の相手は中々に面倒なモンスターパーティであった。

どれも体力は低く、一撃か二撃で倒せる相手ばかりだが、4匹というのは1階層にしてはモンスターの数が多い。


「誰か最近、この階層で死んだのかな・・・。」

モンスターはその階層で死んだ冒険者を糧としている為、誰かが死ぬとその階層のモンスターが強化されるのが通常だ。それ故、深い階層では深い階層に潜れるだけの強者が糧となり、自然、その階層のモンスターも強い者が生まれるという訳だ。


「考えていてもしょうがない。隙を作らない様にしなきゃ。」


ニースが敵に向き直ると、相手もこちらに気付き、扇形に彼を取り囲むところだった。

ジャイアントラットは壊死性の遅効性毒を持つし、ホーンラビットは行動が素早い。

それに4匹とも小さくて的が絞りにくい上に足下ばかり狙ってくるので盾での対処がやり辛い。


(まぁ、とは言え・・・。)

ニースにとってすら遙かに格下の相手である。

腱を狙われた攻撃は逆にキックでカウンターを食らわし、剣を突き立ててトドメを刺した。

1匹ずつ丁寧に対処すれば到底危険性のある相手ではない。


これは初めての冒険者にしては異例中の異例である。

初めてのアタックをソロで2階層目指すなど本来は自殺行為以外の何物でもない。

ローラが「ソロで10階層までOK」と判断した彼の実力は将に10年に1度の逸材レベルである。


ホーンラビットの角、ジャイアントラットの尻尾を切り取り、外観の10倍の体積と重量まで収納するローラ特製のバックパックに放り込んだ。

角は武器の補強に、尻尾は珍味と強壮剤の材料になるのである。

低階層の剥ぎ取りは面倒で売り上げも安いのだが、それ故にみんなが面倒臭がって逆に品薄になる時もある。

ニースは、少なくとも低階層でうろうろする間は丁寧に剥ぎ取りを行う予定であった。


◆ ◆ ◆


ニースは順調に7階層まで来ていた。

“6階層と7階層で世界が変わる”、これは初級冒険者の定説であった。

まず、遠隔攻撃をしてくる相手が出てくる。

アーチャーゴブリンとファイアリザードの2種類がこの階層から出るのである。

この2種だが、低階層の装備の内は「同時に出たらどちらか倒して一旦逃げろ」が定説だ。

低階層の装備と言えば革か木が主流だがこれでは両方同時に防げないのだ。

矢は木でないと防ぎきれず、火の玉は木を燃やしてしまう。

矢は革ではいなせないが、火の玉は革なら弾き飛ばせるのだ。


ニースの装備は木に革を貼り付けたもので、一応火の玉を弾き飛ばしながら矢も防げるが、それでも完璧とは言えない。

ニースは幸い物凄く逃げ足が速い為、どちらかを倒して一旦引き、態勢を整えてから残りを狩るという方法で対処していた。


そして事態は10階層で大きく動き始める。


◆ ◆ ◆


「助けてくれぇぇぇぇっっっ!!!」


男は小部屋で多くのモンスターに囲まれていた。

10階層から発生する罠、「モンスタールーム」を踏んだのだろう。

壁から床から次々とモンスターが湧き出てきている。


「待っていろ!今助ける!!」

ニースが駆けつけた頃には男は部屋の真ん中でモンスターの渦に飲み込まれているところだった。

見たところ、20歳前後、ハチミツ色の髪をしたニースより3~4歳程年上の男の様だ。

男の技量はそれ程低い様に見受けられない。対処出来なく無い筈なのだが、慌てていたのか完全に部屋の真ん中で囲まれてしまっている。


「こちら側に突破口を作る!正面突破でこっちに抜けてこれるか!?」

ファイアリザードとコボルトを切り伏せながらニースが叫ぶ。

「た、助かる!!」

余程余裕を無くしている様で、返答は切羽詰まった声で一言返って来ただけだった。


部屋に20体程居たモンスターも残り5体前後になった時、男は漸く部屋から這い出る様に抜け出してきた。

「助かったぜ。」

「こればっかりはお互い様だからな。今度どっかであったら助けてくれればそれで良いさ。」

話しながらもニースは次の相手に斬り掛かっている。


「残念ながら次はない。」

男の口調が突如冷酷な物に変わった事に気付く余裕すらなかった。

ニースが感じられたのは背中から自らの腹を突き破っている刃の冷たさとそこから感じる焼け付く様な痛みのみだった。


「な・・・、何を??」

「悪いな。期待の新人さんよ。お陰で稼がせて貰ったぜ?」

男は倒れ伏したニースの肩からバックパックを剥ぎ取り、モンスターの換金部位を次々と切り取り放り込んで行く。

ニースの体を投げ捨てる様に部屋の中心に置いたかと思ったら男はわざと「モンスタールーム」の罠を踏んだ。

それに反応してニースを取り囲む様に次々とモンスターが現れる。


「若気の至りでモンスタールームに突っ込んだ少年、10階層に消えゆく。ちゃんと家族には伝えてやるさ。」

モンスターに囲まれ目が霞みゆく中でニースは自分の死を予感した。


◆ ◆ ◆


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


「ここは・・・?」

気付けば目の前には顔馴染みのギルド職員が立って居た。

「何処まで行ったのか知らないが帰還水晶が間に合って良かったな。腹には深い刺し傷が有ったし下手をすれば死んでいてもおかしくなかったぞ。念の為、傷薬で手当をしておいたが、傷は既に塞がっていた様だ。」


そんな馬鹿な。

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意識が消えていくのも感じたし、あの傷でモンスターに囲まれてそんな余裕があろう筈がない。

あの盗賊に騙されて刺されて本当に死んだ筈なんだ。

それが何故、迷宮の入り口で行き倒れている??


ほっぺたを抓る。

痛い。


頬を張ってみる。

痛い。


鎧の背中に手をやる。

腹の反対側に同じ大きさの穴が開いている。

腹の傷には血が滲んでいるが、とうにそれは乾いて赤黒く変色を始めている。


ニースは一つの結論に達したが、それは到底受け入れがたい物だった。

(俺は死んだ後、ここに勝手に運ばれた?いや、勝手に移動した??)


困惑の中、彼は家路を急いだ。

ローグダンジョンという設定が余り生かせてない気がします。難しいですね。

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