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時代遅れの勇者  作者: 軍刀
1/2

誤召喚

初投稿です

稚拙で遅筆ですがよろしくお願いします


プロローグ


 秋月あきつき 暁人あきとの現在の機嫌は最高潮だった。


「ふ、ふふふ。ふへっ」


 鏡の前に立ち、端正な顔を含み笑いで歪めている姿は、はたから見れば不気味極まりない様相だったが、自室の中であり、彼以外に誰かがいるわけではなかったので彼にとっては気にする必要のないことであった。

 なぜ彼が自室にある姿見の鏡の前でだらしのない笑みを浮かべているかというと、別に自分自身の容姿のあまりに見目麗しい様に感動しているわけではなく、先日ネット通販で注文していた服がようやく到着したので、さっそく着込み、一人ファッションショーを楽しんでいたのであった。


「ふ、ふふ。これでようやくジャージともおさらば・・・。そして!これからはこの迷彩服で戦場を駆け巡るのだ!」


 自衛隊が着ている様な迷彩服を身に纏い、暫く怪しげな笑い声をあげていた暁人はふと思い出したように背後にあるクローゼットを開け、中から大学のサークル活動であるサバイバルゲームに使う電動ガン 九九式狙撃銃を取り出し、ストラップを肩にかけるとまた怪しげな笑みを浮かべ始めた。

 鏡に映る彼の姿は、実家が道場というせいもあって体を鍛えていたため本物の軍人のように様になっていた。

 さらに長身で、精悍な顔つきをした彼の迷彩服姿は不気味な笑みを浮かべてさえしなければ映画俳優の様な見た目でもあった。

 暫く自分の恰好を愛でると、また思い出したかのようにクローゼットの方へと向かい、中から細長い桐箱を取り出し、慎重に中に納められているものを取り出した。


「このじいちゃんの形見でさらに・・・」


 何やらぶつぶつと呟きながら取り出したのは歴史を感じさせるひと振りの軍刀だった。

その軍刀は旧日本帝国軍の下士官へ支給されていた九十五式軍刀で、腰に鞘を下げ、実用性を重視した武骨な抜き身の刀身を前に掲げた姿は、暁人の見た目の良さもあってまるで一枚の絵のようだった。


「うわー、これはヤバい。かなりかっこいい・・・。サバ研の連中に自慢しないとだな。」


 よもや暁人の祖父も愛しい孫へと授けた軍刀で、コスプレをされるとは思いもよらなかっただろう。

 調子に乗った暁人はさらにサイドアームとして使っているもう一つのガス銃 P90を装備し、また鏡の前に立った。


「ふ、ふくっ。小官は長崎県立長崎大学4年生!秋月 暁人曹長であります!!」


 こらえきれずに漏らした笑みの後に、威勢よく痛々しい名乗りを賢志が上げた瞬間、鏡が猛然と白く輝き始め、視界を奪った。


「うわっ!なんだこれ!前が見えない!!つーかなんか吸い込まれてないですか、これ!」


 一瞬でパニックに陥った暁人だったが右手に抜き身の刀を持っていることを思い出し、うかつに動くことができずに、結局そのまま鏡の中へと吸い込まれてしまった。

 暁人が鏡の中へと完全に吸い込まれてしまうと光が収まり、部屋はもとの落ち着きを取り戻した。


Side 暁人


「うわぁぁぁ!!」


 もはや叫ぶしかない!さっきからずっと浮遊感を感じ続けているのだ。


「落ちてないですかこれ!落ちてますよね!!」


 鏡が光ったおかげでいまだ視力が戻らないままかれこれ五分ほど落ち続けている気がする。一体どこまで落ち続けるのかと、というかこのままでは地面に衝突して死んでしまうのでは?


「いやいやいや、あり得ない!さっきまで部屋にいたのに何で死にそうになってんの?!

 なんとか打開策を見つけようと必死に考えるのだが人間が飛べるように作られていない以上どうしようもない。というか直前まで持っていた軍刀やらガス銃やらの感触がない

!?

 目が見えないからわからないが落としってしまったのだろうか・・・。



 そうして暫く、体感時間で10分ほど落ち続け、唐突に地面に着地した。


「ぇえ?」


 そう、衝突ではなく両足でしっかりと着地したのだ。

 さらに混乱する頭。

 いや、死なないですんだのはいいことなのだが明らかに無事に、というかこんな華麗に着地を決めれる高さではなかったはずだ!だって22年間の走馬灯が何周もしたもの!!


「ま、まぁ、まて。無事にすんだのは何よりだ。うん。現状に満足しようじゃないか・・・」


 そう、どんなに理不尽でも・・・。

 無理やり冷静になると視界が戻ってきていることに気がつく。

 周りの景色が見え、少しホッとし、辺りを見渡すとさらに驚く。・・・さっきから驚いてばっかりの気がするが、まぁしょうがないでしょうこんな非常事態なんだし。


「森?」


 なんていうかもう生え放題って感じです。

 無秩序に草花や木が生えていてぶっちゃけあまりきれいではない。

 いや、しかし自分は部屋にいたはずで、百歩譲って鏡にうっかり吸い込まれてしまったとしても森にたどりつくというのはどういった原理なんでしょうか・・・。

 というか、装備していたものが全部なくなってるんですけど・・・。ガス銃幾らしたと思ってるんだ!!軍刀に至っては形見ですよ!形見!!


『あの・・・。そこの人間さん?』

「ふぁい!!」


 だ、だだだ誰!!?


『えっとどこから入ってきたのかな?』


 後ろから声をかけられビクッとしながら振り向くとなんだか不思議な人型がそこにいた。


「え、えーと。虹色の霧?」

『む。それはまたずいぶんな表現方法だね。精霊と呼んでくださいな』

 

 虹色の霧改め虹色の精霊とやらが目の前に空を滑りながら移動してきた。

 ぶっちゃけ怖いです。へたに人の形をしているからなおさらホラーな感じですよ。浮いてるし。

 というか、精霊さん?え、ファンタジー?

 さらに混乱。


『それでどうして人間さんがここにいるのかな?僕が呼ばなければここへは入ってこれないはずなんだけどね』


 お、怒ってらっしゃる?霧状だからよくわかんないけどね!


「い、いやあのですね。自分としてもどうしてこんなところにいるのかがいまいち理解できなくてですね?自分の部屋に居たら鏡に吸い込まれて気が付いたらここにいたんですよ」

 とりあえず釈明してみる。不法侵入してしまいましたが不可抗力なのです。許してください精霊さん。


『へぇ。鏡に吸い込まれて、か』

 

 何やらしたり顔な雰囲気。霧状だからよくわかんないけどね!


「あ、あの何か知ってるんですか?」

『ん?あぁ、まぁ知っていると言えば知っているのだけどね?何分こういうのは初めてのことでさ・・・』


 けどまぁ。と何やら言いずらそうな雰囲気を醸し出す精霊さん。

 お願いします自分結構いっぱいいっぱいなんですよ、ほんと。なんでもいいので教えてください。


『きみさ、元の世界には戻れないよ。一生』



 おおっと、急展開。


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