婚約者が「君にはもっといい男がいる」と別の結婚相手を勧めてきますが、私はあなた以外と結婚する気はありません
ジークに会うのは、彼が出征して以来だった。
屋敷へ向かう馬車の中で、会ったら何から話そうかと考えていた。聞きたいことも、聞いてほしいこともたまっている。ただ、顔を見たら泣いてしまうかもしれない。久しぶりに会うのだから笑顔を見せたいのに、まだ会ってもいないうちから、うまくできる気がしなかった。
片腕を失ったことは、先に届いた手紙で知っていた。命に別状はないと書かれていても、どこまで安心していいのか分からなかった。手紙を書いた日には大丈夫でも、その後で具合が悪くなってはいないだろうか。次の知らせが届くまで、悪いことばかり考えた。
だから、早く顔を見たかった。本人が話すところを見て、声を聞けば、少しは落ち着けると思う。長居をして疲れさせたくはなかったので、今日話せないことは次にしようと決めていた。これからは、また会えるのだから。
応接間に通されると、ジークが椅子から立ち上がった。少し痩せていた。上着の左袖は折り畳まれていて、知っていても目がいってしまったけれど、名前を呼ばれるとすぐに顔を上げた。
「サンドラ」
ああ、会いたかった。
何度も思っていたことなのに、顔を見たら、それしか出てこなかった。ほかに話そうと思っていたことは、全部あとでいい。今はそばへ行きたくて足を進めたところで、ジークが向かいの椅子を勧めた。
「先に、大事な話をさせてほしい」
私は頷いて座った。怪我のことだろうか。騎士の仕事を続けられるのかも、まだ聞いていない。彼の方から話してくれるなら、途中で口を挟まずに聞こうと思った。
ジークは卓上の紙をこちらへ滑らせた。
「君の結婚相手として、何人か紹介したい。私の知っている男ばかりだ。家柄も人柄も、申し分のない相手だと思う」
紙には三人分の名前が並んでいた。年齢も、家柄も書いてある。一人目の名前の下には、几帳面な字で「温厚」と添えてあった。
私はその言葉を見たまま、ジークが説明してくれるのを待った。結婚相手と言ったけれど、何か別の話なのだろう。婚約者に会いに来て、ほかの結婚相手を勧められるはずがない。
ところが、彼は黙って私が読み終わるのを待っている。
「私の婚約者は、あなたですよね?」
「その婚約を、解消しようと思っている。騎士も辞める。これから何をするかも決まっていないし、この身体で君を迎えていいとは思えないんだ。君には、もっと確かな相手を選んでほしい」
怪我の知らせを聞いた時でさえ、婚約をやめようとは思わなかった。まず無事に帰ってきてくれれば、その後のことは顔を合わせて話せると思っていたのに、ジークは私が来る前に、別れるところまで考えていたらしい。
しかも、次の相手まで選んである。私が今日着る服を決めかねていた間に、彼はこちらの結婚相手で悩んでいたのだろうか。三人にまで絞り込む暇があったのなら、その前に一度くらい、私に聞いてほしかった。
「一人目は、学院の頃から知っている。誠実な男だ。君を大切にすると思う」
「その方とは結婚しません」
二人目の名前に指が移ったので、私は紙を裏返した。最後まで聞けば気が変わるとでも思っているのだろうか。三人とも会ったことはないけれど、知らない人の長所を教えられて、今日いきなり結婚したくなるとは思えない。
「人を替えてほしいと言っているんじゃありません。ご両親も、婚約を解消した方がいいとおっしゃっているんですか」
「いや。父には早まるなと言われた」
「では、早まらないでください」
少し強く言ってしまった。彼のお父様となら話が通じそうなのに、肝心のジークがこちらを見て困っている。婚約しているのだから、私の気持ちも知っていると思っていた。今さら口にするのは恥ずかしいけれど、言わずにいたら、また紙を表に返されてしまう。
「私は、あなたと結婚したいんですけど」
「今はそう思ってくれていても、一緒に暮らし始めてから後悔するかもしれないだろう。君が結婚の約束をしたのは、出征する前の私だ。あの頃とは事情が違う。もう婚約しているからと、無理に約束を守ろうとしなくていい。私に遠慮しているなら、その必要はないから、一度ほかの相手も考えてほしい」
遠慮でここまで言っていると思われたのか。こちらは、顔が熱くなるのを我慢して言ったところなのに。
会いたかったと伝えれば、ジークも同じように言ってくれると思っていた。結婚したいと言えば、それはもう決まっているだろうと、少しくらい笑ってくれたってよかった。それなのに、彼は私が断りやすいようにと話している。断るつもりなんて、少しもない。
「仕方なく結婚しようとしているんじゃありません。私は、あなたと暮らすつもりで帰りを待っていたんです」
ジークは困った顔で私を見た。そんな顔をしてほしかったわけではないけれど、私だって、彼が喜ぶような返事はできない。ほかの人と会ってみますと言えば、この話だけは丸く収まるのだろう。でも、それだけは言いたくなかった。
扉を叩く音がしたのは、その時だった。
お茶が運ばれてきて、少しほっとした。使用人が茶器を並べている間は、ジークも話を続けなかった。ジークがあの紙を脇へよけると、そこへ焼き菓子の皿が置かれた。いっそ、その紙も持っていってもらえればいいのにと思ったが、さすがにそれは言えなかった。
使用人が下がると、ジークはポットへ手を伸ばした。ここでお茶を飲む時は、いつも彼が私の分も注いでくれる。今日も同じことをしようとしただけなのに、私はつい、彼より先に取っ手へ手を出していた。
「私がやります」
「それくらい、自分でできる」
私は手を引っ込めた。
ジークは私のカップへお茶を注ぎ、それから自分の分も注いだ。見ていては悪いような気がする。かといって、わざと目を逸らすのもおかしい。何度もこうして注いでもらったのに、その間、自分がいつもどこを見ていたのか思い出せなかった。
「……悪かった。そんな言い方をするつもりじゃなかった」
私は小さく首を振った。もういいですと言うと、怒っているように聞こえそうだった。本当は少し怒っている。でも、今日はこんなふうに過ごすつもりではなかったので、これ以上言い合いになるのも嫌だった。
カップを持ち上げると、まだ熱くて、少ししか飲めなかった。ジークも黙っている。お茶が冷めるまでこうしているわけにもいかず、私はどうにか別の話を探した。
「帰ってくるまでの旅は、大変ではありませんでしたか」
「馬車だったから、それほどでもない。急ぐ旅でもなかったし、無理はしていない」
それはよかった。聞きたかったことではあるのに、そこから先が続かなかった。どこの町に泊まったのかを尋ねれば、もう少し話せたかもしれない。でも、本当は、どうしても私と別れたいのかと聞きたかった。
お茶を飲んでいる間だけでも、さっきの話を忘れたかったのに。
出征前、最後にここへ来た時は、馬車が待っていると言われてからも話し込んでいた。扉のところでも立ち止まり、続きは手紙に書くからと言ってようやく別れた。その話の続きさえ、今日は思い出せなかった。
「今日は、そろそろ失礼します」
立ち上がると、ジークも顔を上げた。まだ早いと言ってくれたら、座り直すつもりだった。けれど、彼が返したのは短い「ああ」だけだったので、手袋をつけた。
あの紙は置いていく。持ち帰ったら、三人の中から誰かを選ぶつもりだと思われそうだったし、家へ帰ってからまで眺めたくなかった。
「お邪魔いたしました」
よそのお宅へ伺った時のような挨拶をしてしまった。ジークは扉まで送ってくれたけれど、私が馬車へ乗るまで、さっきの話には戻らなかった。
帰りの馬車で、ジークに会ったら話そうと思っていたことが、今頃になって次々と浮かんできた。会う前は、今日話せなかった分は次にすればいいと思っていた。けれど、また来ていいと聞くことさえできなかった今、何と言って次の約束を取りつければいいのか分からなかった。
◇
二日後、ジークから手紙が届いた。
『また茶を飲みに来てくれないか。都合のよい日を教えてほしい』
あんなに腹を立てて帰ったのに、ジークの字だと分かっただけで嬉しくなってしまった。帰り際に引き止めてくれなかったことが、ずっと気になっていたのだ。自分から帰ると言い出したくせにとは思う。でも、あのままでは、次にどうやって会いに行けばいいのか分からなかった。
またあの三人の話だったら嫌だ。好きな人に会いに行って、ほかの男との結婚を勧められるのは、一度で十分だった。あの三人には何の恨みもないけれど、これ以上長所を教えられたら、顔も知らないまま嫌いになってしまいそうだ。
ただお茶を飲みたくて、私を誘ってくれたのだったらいいのに。帰ったあと、ジークももう少し話したかったと思ってくれたのだろうか。こちらは言いそびれたことばかりある。言い返したかったこともあるけれど、それだけではない。あんなふうに気まずくなる前には、時間が足りなくなるほど話せていたのだから。
返事には、翌日の午後に伺いますと書いた。明後日も空いていたけれど、わざわざそちらを選ぶ気にはなれなかった。
◇
翌日、ジークは前と同じ応接間で待っていた。
「来てくれてありがとう」
挨拶を返しながら、つい卓へ目がいった。今日は茶器と菓子の皿だけで、あの紙はない。ほっとして椅子へ座ると、ジークが皿をこちらへ寄せてくれた。
「これが好きだっただろう」
私が好きな焼き菓子だった。わざわざ用意してくれたのかと聞きたくなったけれど、少し気恥ずかしくて、まず一ついただいた。ジークがこちらを見ているので、おいしいと伝えたら、彼もお茶に口をつけた。
今日は、彼の方から父や母のことを尋ねてくれた。私も答え、母から預かった挨拶を伝える。普通に話せているのだから、安心してもいいはずなのに、会話が途切れるたび、また縁談の話が始まるのかと身構えてしまった。
一杯目のお茶を飲み終えたところで、手袋を取った。前回のように気まずくなる前に帰れば、今度はまた会いたいと言って別れられるかもしれない。
「そろそろ、失礼します」
「もう帰るのか。まだ菓子が残っている」
皿には二つ残っていた。食べたくないわけではないけれど、全部なくなるまで居座るつもりで来たのではない。
「あまり長居しても、ご迷惑でしょうから。包んでいただければ、持ち帰ります」
「……そうだな」
けれど、ジークは使用人を呼ばなかった。皿を少しこちらへ寄せただけで、私が手袋をつけるのを見ている。
何か言ってくれそうで、指を通す手が遅くなった。長居しても迷惑でないのなら、お菓子がなくなった後だって、まだここにいたい。
「私、まだ時間はあります」
「なら、もう少しいてくれ」
よかった。帰りたいと思われたまま、本当に帰ってしまうところだった。つけかけた手袋を脱いで脇へ置くと、ジークが私のカップへお茶を足してくれた。まだここにいていいのだと思ったら、残っていた菓子も食べたくなった。
「二つとも、私がいただいていいんですか」
「一つは私のだ」
残っているから引き止めたのに、一つは自分で食べるつもりだったらしい。そう言って文句をつけたら、全部食べろとは言っていない、と笑われた。たしかに、それは言われていない。私も可笑しくなって、もう一つを取った。
この前は帰りの馬車でようやく思い出した話を、今日は本人に聞いてもらえた。菓子のなくなった皿は片づけられたけれど、私は席を立たなかった。
迎えの馬車が着いたと知らされて、時計を見た。来る前は、この時刻まで居られれば十分だと思っていた。もう少し遅く頼んでおけばよかった。
「また来てもいいんですか」
「……ああ。三日後はどうだ。今日と同じ頃なら、私は空いている」
「はい。その頃に伺います」
まだ帰ってもいないのに、次に会う日が決まった。家へ戻ってから手紙を待たなくてもいいし、こちらから出そうかと迷わなくてもいい。それが嬉しくて、手袋をつけている間も、ついジークの顔を見てしまった。
扉まで送ってくれた彼に、今日は楽しかったと伝えた。前回はお邪魔いたしましたとしか言えなかったけれど、今度はちゃんと言えた。
「私もだ。また来てくれ」
馬車へ乗ってからも、その声を思い出していた。誰もこちらを見ていないので、少し笑ってしまった。次の迎えは、もう少し遅い時刻に頼もう。そう決めたところで、今度は着ていく服のことが気になり始めた。
◇
三日後は、少し早く支度が終わった。
母に、そんなに急いでも馬車はまだ来ていないと言われたので、急いでいないと答えた。それから玄関へ行って、馬車を待った。
結局、約束より少し早くジークの屋敷に着いてしまった。
「今日は早いな」
「道が空いていたので」
そんなことはなかった。途中の交差路ではずいぶん待たされた。早めに家を出たことは、言わなくてもいいと思う。
卓には、この前と同じ菓子が用意してあった。今日は迎えの馬車も遅めに頼んである。ジークが椅子を勧めてくれたので、私も笑って座り、手袋を外した。
「先日の縁談のことだが、やはり一度考えてほしい。すぐに結婚しろという話ではないんだ。ほかの男とも会って、そのうえで決めても遅くはないだろう」
まだ、ほかの男に会わせることを考えていたのか。
三日前には、帰ろうとする私を引き止めてくれた。次に会う日も、彼の方から決めてくれた。婚約を解消する話がなくなったわけではないけれど、少しは気持ちが変わったのだと思っていた。
ここへ来るまでの間には、今日も帰りたくなくなったらどうしようとまで考えていたのに。脱いだばかりの手袋を眺めていると、あんなに早く支度をした自分が恥ずかしくなった。
「私が来るの、嫌でしたか。また来てくれとおっしゃったから、楽しみにしていたんです」
「嫌なわけがない。来てくれて嬉しい。ただ、こうして茶を飲むのと、毎日一緒に暮らすのとは違うだろう。前なら一人で済んだことも、君に頼まなければならないかもしれない。それが何年も続いて、君が嫌になってからでは――」
途中までは、やっと結婚した後の話をしてくれたのだと思った。何に困っているのか、これからどう暮らすつもりなのか、聞けるなら聞きたかった。それなのに、私が何かを頼まれて嫌になるところまで、ジークが決めてしまう。
「まだ言ってもいないことまで、私が言うことにしないでください。困ることがあるなら、あなたと相談したいんです。別の方を探したいんじゃありません」
「君は優しいから、今は私を気の毒に思っているだけかもしれない。それを理由に結婚を決めてほしくないんだ」
気の毒だから、会いに来ている。そう思われていたのだと分かると、さっきまで言い返せていたのに、今度は何と答えればいいのか分からなくなった。
出征前にも、今日と同じように着ていく服を迷って、待ちきれずに家を出ていた。彼の方が先に着いていると、待たせたくなくて、次はもっと早く出たこともある。会う前から話したいことを考えて、帰った後も彼に言われたことを思い出していた。
あの頃からずっと好きでいるのに、帰ってきたら、その気持ちまで別のものにされてしまった。結婚したいと言ったことも、彼には見舞いの言葉に聞こえていたのだろうか。
「あなたが私と結婚したくないなら、それは聞きます。でも、私がいつかあなたを嫌いになるなんて、勝手に決めないでください」
ジークの返事を待ちながら、膝の上で手袋を揃えた。口にしてから、本当に答えられたらどうしようと怖くなった。結婚したくないと言われたら、分かりましたと答えるつもりだったのだろうか。そんなに簡単に諦められるなら、最初にあの紙を見せられた日に帰って、それきり来なかった。
でも、今日はもう帰りたかった。これ以上ここにいたら、同じことを言いながら泣いてしまう。ジークを困らせて、それで慰めてもらっても、きっと余計につらくなる。
「今日は、失礼します」
手袋を持ったまま立ち上がった。迎えの馬車はまだ来ない。長くいられるようにと頼んだことを、今は後悔していた。使用人にお願いして、別の部屋で待たせてもらおう。ジークの前でなければ、少しくらい泣いても構わない。
「サンドラ、待ってくれ」
扉の前で振り返ると、ジークも椅子から立っていた。ほかの男の話なら、今度こそ返事をせずに出ていこうと決めて、続きを待った。
「……怖いんだ。君に嫌われるのが」
嫌いなら、もう来ていない。そう言い返しかけたけれど、ジークはまだ何か話そうとしていた。私は扉の前に立ったまま、彼の言葉を待った。
「この前、君が帰ってから、夕食までいてもらえばよかったと思った。結婚したら、帰る時間を気にしなくても済む。そんなことまで考えたんだ。でも、いつか君に、前の私の方がよかったと言われたら、耐えられる気がしなかった」
夕食までいてほしかったなんて、知らなかった。帰ってほしくないと言ってくれたことだけで、あんなに嬉しかったのに。彼はもっと先のことを考えて、それから、私には何も聞かずに諦めようとしていたのか。
そんなことは思わないと、言えばいいのだろうか。私は今でも彼が好きで、今日も一緒にいたかった。でも、それはもう何度も伝えた。今度も信じてもらえなかったらと思うと、大丈夫です、と簡単には言えなかった。
「私、ずっとあなたがいいって言ってるのに。もう会いたくないのかと思いました。誘ってくださったから来たのに、私が何を言っても、聞いてもらえなくて」
帰るまで我慢するつもりだったのに、涙が落ちた。拭えば落ち着けるかと思ったけれど、顔を上げるとまたジークが目に入る。もう、泣かずに話すことまで頑張れそうになかった。
「怪我の知らせが来てから、顔を見るまで、どれだけ心配したと思ってるんですか。私だって、怖かったです。やっと帰ってきてくれたのに、ほかの人なんて会いたくありません」
ジークが俯いたので、また何か言わなければと思った。でも、もう言い方を変えたり、理由を探したりできそうになかった。まだ彼と結婚したい。こんなに悲しくても、その気持ちは変わらないのだから、私にもどうしようもない。
「すまなかった。ほかの縁談の話は、もうしない。帰らないでほしい」
顔を上げたジークが、こちらへ歩いてきた。そばに来てもらうと、それだけで触れたくなってしまった。
「サンドラ。私と結婚してほしい」
再会した日に、こう言ってもらいたかった。その時なら、何を今さらと笑えたかもしれない。今は嬉しいのに顔がぐしゃぐしゃで、何度も頷いてから、ようやく返事ができた。
「……はい」
ジークの上着をつかんで抱きつくと、右腕が私の背へ回った。胸へ額を押しつけていたら、さっきまで我慢していた声まで出てしまった。
帰ってきたと聞いた日から、こうしたかった。顔を見られれば安心できると思っていたけれど、抱きしめてもらえる方がずっとよかった。上着越しに体温が伝わってくる。少し痩せていても、彼のそばにいる感じは覚えていた通りで、もっと早くこうしていればよかったと思った。
服を濡らしてしまっているのは分かったけれど、離れて顔を拭く気にはなれなかった。ジークも何も言わずに抱いていてくれたので、しばらく甘えることにした。
少し落ち着いてから、胸に顔を寄せたまま、最初の日に言えなかった挨拶をした。
「……おかえりなさい」
「ただいま」




