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花と音楽のカフェ巡り~記憶を紡ぐ異世界巡礼~  作者: 雨音トキ


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第7章 冬の都市クリスタリア導入編

季節の境界線を越えた瞬間、世界が白く染まった。

雪が降っていた。

静かに、休みなく、空から降り続けている。

気温が急激に下がり、アリアは慌ててコートを羽織った。

「寒い……」

息が白くなる。

「冬の都市、クリスタリアよ」

リリィが囁いた。

「常冬の街。ここは一年中、雪が降り続けているの」

道の両脇には、白銀の木々が並んでいた。

枝には氷の結晶が付いて、きらきらと輝いている。

美しいが、冷たい。

やがて、街が見えてきた。

クリスタリア。

建物はすべて、氷のように透き通った白い石で造られていた。

尖塔、アーチ、窓枠。すべてが繊細で、まるでガラス細工のよう。

屋根には雪が積もり、軒先には氷柱が下がっている。

「綺麗……」

アリアは息を呑んだ。

でも、人の気配がない。

通りを歩いても、誰もいない。

窓はすべて閉ざされ、明かりも見えない。

「静かすぎるわね」

リリィが不安そうに言った。

広場に出た。

中央には、巨大な氷の噴水があった。

でも、水は流れていない。すべてが凍りついている。

噴水の周りには、氷の彫刻が並んでいた。

人の形をした像。

手を繋いでいる像、踊っている像、楽器を持っている像。

かつて、ここで人々が集まっていた頃の名残だろうか。

アリアは広場を見回した。

一軒のカフェが目に入った。

「氷晶カフェ」という看板。

建物全体が、氷のように透き通っていた。

アリアは近づいた。

扉を押す。

開かない。

凍りついているようだ。

窓越しに中を覗くと――

店内も、すべてが凍っていた。

テーブル、椅子、カウンター。すべてに氷が張り付いている。

カップやポットも、氷の中に閉じ込められていた。

誰もいない。

完全に、無人だった。

「これは……」

アリアは扉を叩いてみた。

でも、反応はない。

「ここの記憶は……完全に凍結してるわ」

リリィが深刻な声で言った。

「花も、音楽も、すべてが……氷の下に閉じ込められている」

アリアは広場に戻った。

住民はどこにいるのか。

通りを歩いてみた。

建物の窓を覗くと、中に人影が見えることもあった。

でも、窓はすぐに閉められてしまう。

扉をノックしても、誰も出てこない。

「誰も、交流していないのね」

リリィが呟いた。

「みんな、家に閉じこもって……」

アリアは何軒も訪ねたが、誰も扉を開けてくれなかった。

広場に戻ると、雪がさらに強くなっていた。

視界が白く染まる。

アリアは中央の噴水に近づいた。

氷の彫刻の一つ、楽器を持った女性の像に手を伸ばす。

「記憶があるはず……」

右手を掲げる。花の紋章が光り始めた。

そして、氷像に触れた。

冷たい。

でも、それだけだった。

何も起こらない。

映像も、光も、何も。

「反応がない……」

アリアは集中力を高めた。

もっと深く、記憶を探る。

でも――

やはり、何も。

氷は、すべてを閉じ込めていた。

記憶も、音楽も、すべてを。

アリアは手を離した。

「無理……なの?」

リリィが肩に止まった。

「氷が厚すぎるのよ。記憶に辿り着けない」

「じゃあ、どうすれば……」

「わからない。でも……」

リリィは街を見回した。

「この街には、まだ生きている人がいる。その人たちが、記憶を持っているはず」

「でも、誰も出てきてくれない……」

アリアは広場のベンチに座った。

雪が積もっていたが、払いのけて座る。

どうすればいいのか。

他の街では、すぐにカフェを見つけ、人々と話すことができた。

でも、ここでは……

「待つしかないわね」

リリィが言った。

「誰かが出てくるまで」

アリアは頷いた。

でも、どれくらい待てばいいのか。

雪は降り続けている。

静寂だけが、広場を支配していた。

冷たく、孤独な街。

クリスタリアは、他のどの街とも違っていた。

アリアは花図譜を取り出した。

クリスタリアのページ。

氷花のスケッチと、空白の五線譜。

そして、曲のタイトル。

「雪解けの子守歌」

「雪解け……」

アリアは空を見上げた。

雪が、顔に降りかかる。

この街に、春は来るのだろうか。

氷は、解けるのだろうか。

わからない。

でも、諦めるわけにはいかない。

アリアは立ち上がった。

「もう一度、街を回ってみます」

「そうね。誰か、話してくれる人がいるかもしれない」

二人は再び、通りを歩き始めた。

雪の中を、一歩一歩。

クリスタリアでの旅は、まだ始まったばかりだった。

そして、これまでで最も困難な旅になりそうだった。


街を歩いて2時間。

ようやく、一人の老婆が扉を開けてくれた。

「旅の方……?」

警戒した様子だった。

「はい。アリアと申します。この街のことを、教えていただけませんか?」

老婆は少し考えた後、頷いた。

「中へ入りなさい。風邪をひいてしまう」

暖炉のある部屋に通された。

温かい。久しぶりの温もりだった。

「何を知りたいの?」

「音楽のことです。雪解けの子守歌という曲を……」

老婆の表情が曇った。

「その曲を……知っているのかい?」

「はい。失われた音楽を取り戻す旅をしていて」

「取り戻す……そんなこと、できるのかい?」

「できます。でも、記憶を持つ人が必要です」

老婆は暖炉を見つめた。

「あの子なら……知っているかもしれない」

「あの子……?」

「セラフィナ。かつて、この街で一番美しい声を持っていた娘だ」

老婆は窓の外を指差した。

「あの塔に住んでいる」

街の端に、細い塔が立っていた。

「でも……」

老婆は悲しそうに首を振った。

「あの子は、もう歌えない。戦争で、声を失ってしまったから」

――――

アリアは塔へ向かった。

石造りの古い塔。窓は小さく、最上階にだけ明かりが見えた。

扉をノックする。

返事はない。

もう一度ノックした。

「すみません! お話を聞かせてください!」

沈黙。

でも、気配はある。中に、誰かいる。

「私は花守りです。失われた音楽を取り戻すために来ました!」

しばらくして――

扉が、わずかに開いた。

隙間から、青い目が覗いた。

「……」

声は出ない。

でも、扉が少しずつ開いていく。

中に、一人の女性が立っていた。

30代半ばくらいに見えた。

雪のように白い髪。透き通るような青い瞳。細い体つきで、白いドレスを着ている。

まるで、氷の妖精のような姿だった。

女性は階段を指差した。

アリアは頷き、中に入った。

螺旋階段を登っていく。

最上階の部屋は、小さかった。

窓から雪景色が見える。

簡素なベッド、机、椅子。壁には楽譜が飾られていた。

女性は机の前に座り、紙とペンを取り出した。

そして、書き始めた。

『セラフィナです。どうぞ、座ってください』

アリアは椅子に座った。

セラフィナは、また書いた。

『花守り。本当に、そんな方がいるのですね』

「はい。失われた記憶と音楽を取り戻す旅をしています」

セラフィナは微笑んだ。

優しい笑みだった。

『雪解けの子守歌のことですか?』

「ええ。あなたが……歌っていたと聞きました」

セラフィナの表情が曇った。

『昔の話です』

「今は……」

『もう、歌えません』

セラフィナは喉に手を当てた。

『戦争の時怖くて、叫び続けて、それから、声が出なくなりました』

「戦争……」

『30年前です。私はまだ子供でした』

セラフィナは遠い目をした。

『街が襲われて、人々が逃げ惑って、私は、怖くて、ずっと、叫んでいました』

紙に書く手が震えている。

『それから、声が消えました』

アリアは静かに聞いていた。

セラフィナは、また書いた。

『でも、歌えなくなっても音楽は、好きです』

彼女は壁の楽譜を見た。

『雪解けの子守歌。母が教えてくれた曲です』

「お母様は……」

『戦争で、亡くなりました』

セラフィナは涙を拭った。

『母はこの街で、歌姫と呼ばれていました。美しい声で、子守歌を歌っていました』

「あなたも……」

『はい。母から教わって、私も歌っていました。でも』

セラフィナは首を振った。

『もう、歌えません。記憶はあるのに、声が』

アリアは右手を掲げた。花の紋章が光る。

「記憶があるなら、音楽も戻せます」

セラフィナは目を見開いた。

『本当に?』

「はい。声が出なくても、記憶があれば……音楽は蘇ります」

『でも、どうやって』

「あなたの記憶を見せてください。お母さんと一緒に歌っていた頃の記憶を」

セラフィナは迷った。

でも、やがて頷いた。

『わかりました』

彼女は目を閉じた。

アリアは、セラフィナの手を取った。

そして、花の紋章を輝かせた。

光が部屋を満たす。

――――

映像が浮かび上がった。

同じ塔の部屋。

でも、もっと明るく、もっと温かかった。

窓からは、雪ではなく、柔らかな光が差し込んでいる。

幼い少女が、ベッドに横たわっていた。

3歳くらいのセラフィナ。

その隣に、一人の女性が座っている。

母だ。

セラフィナと同じ、白い髪と青い瞳。優しい笑顔。

「セラフィナ、眠れない?」

幼いセラフィナが頷く。

「じゃあ、子守歌を歌ってあげる」

母が歌い始めた。

静かで、優しい旋律。

「雪が降る夜も、怖くないよ」

「温かな腕の中、眠りなさい」

子守歌だった。

セラフィナの目が、徐々に閉じていく。

「夢の中では、春が来るよ」

「花が咲いて、鳥が歌うよ」

母の声は、まるで氷を溶かすように温かかった。

映像が変わる。

少し成長したセラフィナ。4歳くらい。

母と一緒に、広場で歌っている。

人々が集まって、聴き入っている。

母が主旋律を歌い、セラフィナが和音を重ねる。

二人の声が調和して、美しいハーモニーを作っていた。

「雪解けの時が、来るまで」

「待っていてね、春の訪れを」

人々が拍手する。

母とセラフィナは、手を繋いで礼をした。

幸せな時間。

でも――

映像が乱れた。

暗くなる。

爆発音。

悲鳴。

セラフィナが叫んでいる。

「お母さん! お母さん!」

でも、母の姿は見えない。

炎と煙。

崩れる建物。

セラフィナは叫び続けた。

声が枯れるまで。

そして――

映像が消えた。

――――

光が引いていく。

セラフィナは泣いていた。

声を出さずに、肩を震わせて。

アリアは手を握り続けた。

やがて、セラフィナは顔を上げた。

涙で濡れた顔で、しかし穏やかな表情で。

紙に書いた。

『ありがとうございます』

「え……?」

『母の声をもう一度、聞けました』

セラフィナは微笑んだ。

『忘れかけていました。でも、思い出しました』

「セラフィナさん……」

『私は歌えません。でも』

セラフィナは立ち上がった。

壁の楽譜を取り、アリアに渡した。

『この楽譜を、使ってください』

雪解けの子守歌の楽譜だった。

手書きで、丁寧に書かれている。

『母が書いたものです。これがあれば』

「はい。ありがとうございます」

アリアは楽譜を受け取った。

セラフィナは、また書いた。

『この街に、音楽を取り戻せますか?』

「取り戻します。必ず」

『みんな家に閉じこもって、誰とも話さなくなりました』

セラフィナは悲しそうに言った。

『戦争の後、みんな怖くて心を閉ざしてしまったんです』

「あなたは……」

『私も、長い間閉じこもっていました。でも』

セラフィナは窓の外を見た。

『このままじゃ、いけないと思うんです』

彼女はアリアを見た。

『手伝わせてください。声は出ませんができることがあるはずです』

アリアは頷いた。

「一緒に、この街に音楽を取り戻しましょう」

セラフィナは笑顔で頷いた。

そして、コートを羽織った。

二人は塔を降りた。

雪の中、並んで歩く。

セラフィナは、久しぶりに外に出たのだろう。

最初はおぼつかなかったが、徐々に足取りがしっかりしてきた。

「氷晶カフェに行きましょう」

セラフィナが頷いた。

二人は広場へと向かった。

声を失った歌姫と、花守り。

凍りついた街に、変化をもたらすために。

旅は、まだ続く。


氷晶カフェの前に立った。

セラフィナが、扉に手を当てた。

凍りついている。

アリアは右手を掲げた。花の紋章が光り始める。

「氷を溶かしてみます」

光が扉に向けられた。

でも――

氷は、びくともしなかった。

「硬い……」

アリアは力を込めた。

紋章の光が、さらに強くなる。

氷の表面が、わずかに輝いた。

でも、それだけだった。

溶けない。

アリアは手を下ろした。

「無理……。氷が厚すぎるわ」

リリィが囁いた。

「この街の氷は、普通の氷じゃない。心の氷なのよ」

「心の……」

「ええ。人々が心を閉ざしたから、街全体が凍りついた」

セラフィナが、紙に書いた。

『中に入れませんか?』

「窓から、入れるかもしれません」

アリアは建物の裏手に回った。

小さな窓が一つ、地面近くにあった。

氷は張っているが、薄そうだ。

「これなら……」

アリアは石を拾い、氷を叩いた。

ヒビが入る。

何度か叩くと、氷が割れた。

窓を開け、中に入る。

セラフィナも続いた。

店内は、冷たかった。

すべてが凍りついている。

テーブル、椅子、カウンター。

そして――

窓辺に、氷花が咲いていた。

いや、氷の中に閉じ込められた花だ。

白い花びらが、氷の中で凍っている。

アリアは花に近づいた。

「これが……この街の記憶……」

右手を掲げる。

花に触れる。

冷たい。

氷が、指先に張り付く。

でも、記憶を読み取ろうとする。

光が灯る。

でも――

すぐに消えた。

映像は現れない。

「やはり……氷に阻まれている……」

アリアは何度も試した。

でも、記憶には辿り着けない。

氷が、すべてを封じ込めている。

「どうすれば……」

リリィが花の周りを飛んだ。

「セラフィナの歌声が、鍵かもしれない」

セラフィナが、首を振った。

紙に書く。

『私は歌えません』

「声が出なくても、いいのよ」

リリィが言った。

「心の中で歌えば……それが、氷を溶かすかもしれない」

セラフィナは戸惑った様子だった。

アリアが優しく言った。

「試してみませんか? あなたの母の歌を、心の中で」

セラフィナは少し考えた後、頷いた。

彼女は氷花の前に座った。

目を閉じる。

そして――

口を動かし始めた。

声は出ない。

でも、確かに歌っている。

唇が、歌詞を紡いでいる。

アリアは、その様子を見守った。

やがて、不思議なことが起きた。

氷花の周りの氷が、わずかに輝き始めた。

「光ってる……」

リリィが囁いた。

セラフィナは歌い続ける。

声なき歌。

でも、その想いは確かにそこにあった。

氷が、少しずつ薄くなっていく。

光が強くなる。

そして――

一筋の水が、氷から滴り落ちた。

溶けた。

わずかだが、確かに溶けた。

セラフィナは目を開けた。

驚いた表情で、氷花を見つめる。

アリアは花に触れた。

今度は――

かすかに、温もりを感じた。

記憶が、動き始めている。

でも、まだ完全には開かない。

「もう少し……もう少しで……」

アリアは集中した。

セラフィナも、再び目を閉じて歌い始めた。

二人で、氷を溶かそうとする。

光が強くなる。

氷花の周りの氷が、徐々に薄くなっていく。

でも――

突然、光が途切れた。

アリアは倒れそうになった。

「アリア!」

リリィが支える。

「大丈夫……でも、もう限界……」

セラフィナが、アリアを支えた。

椅子に座らせる。

『無理をしないでください』

紙に書いて見せる。

「ごめんなさい……でも、少しだけ……進みました……」

アリアは氷花を見た。

氷は、確かに薄くなっていた。

完全には溶けていないが、希望は見えた。

「時間が……必要ですね……」

リリィが頷いた。

「そうね。一度では無理よ」

セラフィナが書いた。

『毎日、ここに来ます。そして、歌います』

「セラフィナさん……」

『私にできることは、これだけです。でもやりたいんです』

セラフィナは氷花を見つめた。

『この街を、もう一度温かくしたい』

アリアは微笑んだ。

「ありがとうございます。一緒に、頑張りましょう」

――――

その夜、アリアはセラフィナの塔に泊めてもらった。

暖炉の火が、部屋を温めている。

アリアは花図譜を開いた。

クリスタリアのページ。

氷花のスケッチと、空白の五線譜。

雪解けの子守歌。

でも、まだ楽譜は書き込めない。

記憶が、完全には開いていないから。

「冬編は……未完のまま……」

リリィが肩に止まった。

「仕方ないわ。他の街とは違うもの」

「でも……」

「続きは、また必ず」

リリィは力強く言った。

「あなたは、ここで諦めるような人じゃないでしょう?」

アリアは頷いた。

「……そうですね」

花図譜を閉じる。

「今は、できることをやります。セラフィナさんと一緒に、少しずつ氷を溶かしていきます」

「そうよ。焦らないで」

窓の外では、雪が降り続けていた。

でも、部屋の中は温かかった。

セラフィナが、温かいお茶を淹れてくれた。

三人で、暖炉の前に座る。

「セラフィナさん、ありがとうございます」

セラフィナは微笑んで、紙に書いた。

『こちらこそ。久しぶりに、誰かと一緒にいられて嬉しいです』

「寂しかったでしょう?」

『ええ。でももう、大丈夫です』

セラフィナはアリアとリリィを見た。

『あなたたちがいるから』

アリアは温かな気持ちになった。

クリスタリアでの旅は、まだ始まったばかり。

そして、まだ終わっていない。

いつか、必ず――

この街に、音楽を取り戻す。

氷を溶かし、春を呼ぶ。

その日まで、諦めない。

アリアは、そう心に決めた。

セラフィナが、紙に何か書き始めた。

『アリアさん』

「はい?」

『あなたには、他にも救うべき街があるのではないですか?』

アリアは少し驚いた。

「それは……そうですが……」

『ここの氷は、すぐには溶けません。時間がかかります』

セラフィナは真剣な表情で書き続けた。

『でも、他の街では今も、誰かが苦しんでいるかもしれない。誰かが、あなたを待っているかもしれない』

「でも、セラフィナさんを一人に……」

『大丈夫です』

セラフィナは微笑んだ。

『もう、一人じゃありません。あなたが、それを教えてくれました』

紙に書く手が止まらない。

『私は、ここで氷花の世話を続けます。毎日、歌を歌います。そして、あなたの帰りを待っています』

「セラフィナさん……」

『だから、行ってきてください。他の街へ。他の人たちのところへ』

セラフィナはアリアの手を取った。

『必ず戻ってきてくれると、信じていますから』

アリアの目から、涙が溢れた。

「ありがとうございます。必ず、戻ってきます」

セラフィナは頷いた。

雪の夜、塔の中で、小さな希望が灯っていた。

そして、新しい旅立ちへの決意が、生まれていた。


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