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花と音楽のカフェ巡り~記憶を紡ぐ異世界巡礼~  作者: 雨音トキ


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第1章 失われたカフェの記憶

鐘の音を辿って、アリアは桜並木の奥へと進んだ。

石畳の道は緩やかに曲がり、両脇の桜の枝が頭上で交差して、花のトンネルを作っている。舞い散る花びらが足元に積もり、一歩踏み出すたびに柔らかな音がした。

「この先よ」

リリィが先導するように飛んでいく。

やがて、小さな広場に出た。そこに、古びた建物が一軒、静かに佇んでいた。

二階建ての木造建築。壁は褪せた茶色で、窓枠には蔦が絡まっている。入口の上には、古い看板が掛かっていた。「花時計亭」という文字が、かすれた金色で書かれている。

その看板の下に、小さな鐘がぶら下がっていた。風が吹くたび、カランカランと寂しげな音を立てている。

「ここが……」

「そう。きっと、ここに何かがあるわ」

アリアは扉の前に立った。ガラス越しに中を覗くと、カウンターと数脚のテーブル、そして壁際に置かれた古いピアノが見える。客の姿はない。

扉を押すと、鈴の音が鳴った。

「いらっしゃいませ」

低い声が聞こえた。カウンターの奥から、一人の男性が現れる。

50代だろうか。白いシャツにベストを着た、背の高い痩せた男性。短く刈った髪には白いものが混じり、深い目の下には隈ができている。疲れた表情だった。それでも、客を迎える時の習慣なのか、わずかに口元を上げて微笑もうとしている。

「お一人様ですか?」

「はい。コーヒーを一つ、いただけますか?」

「かしこまりました。どうぞ、お好きな席へ」

アリアは窓際のテーブルに座った。リリィは彼女の肩から飛び立ち、窓辺に止まる。店主には見えていないようだった。

店内を見回す。天井は高く、木の梁が渡してある。壁には古い写真が何枚も飾られていた。このカフェの昔の様子だろうか。写真の中では、たくさんの人々が笑顔で集まっている。

今とは、あまりにも違う。

カウンターの向こうで、店主がコーヒーを淹れ始めた。豆を挽く音が、静かな店内に響く。お湯を沸かし、ドリッパーをセットし、一つ一つの動作が丁寧だった。

アリアはその様子を見つめた。手の動きに迷いがない。何年も、何十年も、同じ作業を繰り返してきた人の手つきだ。

やがて、コーヒーの香りが漂ってきた。深く、豊かな香り。

店主がカップを運んできた。白い陶器のカップに、湯気が立ち上っている。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

アリアは一口飲んだ。苦味と酸味のバランスが絶妙だった。丁寧に淹れられたコーヒーの味。

「美味しいです」

店主の表情が、ほんの少しだけ和らいだ。

「ありがとうございます」

そう言って、店主はカウンターに戻ろうとした。でも、アリアは言葉を続けた。

「素敵なお店ですね。ずっと、ここでカフェを?」

店主は立ち止まり、アリアを見た。少し迷うような表情の後、小さく頷いた。

「ええ。私で30年になります。父の代から数えれば、50年ほど続く店です」

「50年も……」

「父がこの店を始めたのは、50年ほど前のことでした。その20年後に戦争が起きて、この街の多くが焼かれました。音楽家たちは散り散りになり、楽譜も失われた」

店主は窓の外を見た。桜が風に揺れている。

「私はエリオといいます。戦争の時、私はまだ20代前半で、父を手伝っていました。店は奇跡的に焼失を免れましたが、賑わいは失われました。父はそれでも諦めず、音楽文化を取り戻そうと必死でした」

「お父様は……」

「戦後しばらくして、父は亡くなりました。私が店を継いで30年。最初の頃は、まだ何人かの音楽家が戻ってきていました。あのピアノで、時々演奏してくださる方もいた。お客様も、音楽を聴きながらコーヒーを楽しんでくださいました」

店主の声が、わずかに震えた。

「でも、この10年で……最後の音楽家も来なくなってしまった。戦争を経験した世代が高齢になり、若い世代は音楽のことを知らない。そして、お客様も……少しずつ、来なくなってしまいました」

アリアは黙って聞いていた。

「今日も、あなたが初めてのお客様です。昨日は誰も来なかった。明日も、きっと……」

店主は言葉を切った。それ以上言えば、声が崩れてしまいそうだった。

「すみません。暗い話をしてしまって」

「いえ……」

店主はカウンターに戻った。背中が、どこか小さく見えた。

アリアはコーヒーを飲みながら、店内をもう一度見回した。壁の写真、古いピアノ、磨き上げられた床。すべてに、この店を愛する人の想いが感じられる。

それなのに、人がいない。音楽もない。

こんなに素敵な場所なのに。

窓の外を見ると、カフェの裏手に小さな庭が見えた。桜の木の下に、花壇がある。色とりどりの花が植えられているが、その中に一つ、青い花が咲いていた。

忘れな草だ。

その花を見た瞬間、アリアの右手がかすかに温かくなった。花の紋章が、淡く光っている。

「あの花……」

リリィがアリアの耳元で囁いた。

「記憶があるわ。あの花に、触れてみて」

アリアは立ち上がった。カウンターの店主に声をかける。

「あの、お庭を見せていただいてもいいですか?」

店主は少し驚いた様子だったが、すぐに頷いた。

「ええ、どうぞ。裏口から出られます」

「ありがとうございます」

裏口を開けると、春の風が頬を撫でた。庭に降りると、忘れな草が風に揺れている。小さな青い花が、いくつも咲いていた。

アリアは膝をついて、その花に手を伸ばした。

指先が花びらに触れる。

その瞬間――

視界が光に包まれた。

指先が花びらに触れた瞬間、世界が変わった。

光が視界を満たし、アリアの意識は別の時間へと引き込まれていく。花の記憶が、映像となって流れ始めた。

――――

夜だった。

同じ庭、同じ忘れな草。でも、周囲の雰囲気がまったく違う。

カフェの窓からは、温かな光が溢れていた。中から笑い声が聞こえてくる。たくさんの人々の声。グラスの触れ合う音。そして、ピアノの音色。

記憶の中のアリアは、庭からカフェの中を覗いている。

店内は人で溢れていた。すべてのテーブルに客が座り、カウンターにも何人もの人が並んでいる。みんな笑顔だった。コーヒーを飲みながら、隣の人と語り合い、音楽に耳を傾けている。

壁際のピアノの前には、一人の若い男性が座っていた。

20代半ばだろうか。細身で、少し長めの黒髪。白いシャツの袖を肘まで捲り上げ、真剣な表情で鍵盤に向かっている。

エリオだ。若い頃のエリオに違いない。面影がある。でも今よりずっと生き生きとして、目に光があった。

彼の隣には、年配の男性が立っていた。エリオの父だろう。温かな笑顔で息子を見守っている。

そして、ピアノの前には、もう一人。

10歳くらいの少年が、楽譜を持って立っていた。明るい茶色の髪、大きな瞳、少し緊張した面持ち。新しい服を着せてもらったのだろう、白いシャツが真新しい。

「これが新しい曲です。春風のワルツ」

少年の声が聞こえた。幼いが、どこか誇らしげな声。

「春の風が桜を揺らすように、軽やかに、でも温かく。この街の春を、音にしたかったんです」

エリオが優しく笑った。

「いい曲だな、セレス。お前の曲はいつも、この街の風景が見えてくる」

セレス――少年はそう呼ばれていた。

エリオの父が少年の頭に手を置いた。

「さあ、お客様に聴かせてあげなさい。セレス、お前ならできる」

少年は頷き、ピアノの椅子に座った。足が床にギリギリ届くくらいの背丈。それでも、鍵盤に向かう姿は真剣そのものだった。

深呼吸を一つ。

そして、最初の一音が響いた。

高く、澄んだ音色。まるで春の朝の光のような、透明な響き。

次の音が続く。軽やかに、でもリズミカルに。まさにワルツだった。3拍子の優雅なリズムが、店内に流れていく。

小さな手が懸命に鍵盤を叩く。右手が旋律を奏で、左手が伴奏を刻む。少し音を外しかけて、すぐに修正する。それでも止まらない。前へ、前へと進んでいく。

客たちが静かになった。みんな、少年の演奏に聴き入っている。

アリアは息を呑んだ。美しい曲だった。本当に、春の風が吹いているようだ。桜の花びらが舞い、暖かな日差しが降り注ぎ、新しい季節の始まりを告げている。そんな光景が、音楽から伝わってくる。

セレスの指が鍵盤を滑るように動く。旋律が高まり、広がり、店内を満たしていく。

そして――

不思議なことが起きた。

ピアノの周りに、光の粒子が浮かび始めたのだ。淡いピンク色の光。それは次第に形を成し、花びらになった。

桜の花びらだ。

音楽に合わせて、花びらが宙を舞い始める。ピアノから生まれた花びらが、ワルツのリズムで回転し、客席へと流れていく。

客たちが目を見開いた。驚きと、喜びの表情。

「綺麗だ……」

「まるで本物の桜吹雪みたいだ」

花びらは実体ではない。触れることはできない。でも確かに、そこに存在している。音楽が生み出した、幻想の花。

花びらは店内を巡り、天井へと舞い上がり、また降りてくる。まるで本物の桜吹雪のように。

セレスは必死に弾き続けている。額に汗が浮かんでいる。でも、その目は輝いていた。自分の音楽が、こんなにも美しいものを生み出していることに、気づいているのだろうか。

曲が中盤に差し掛かる。旋律が少し静かになり、まるで春の夜のように穏やかになる。花びらの動きも、ゆっくりとした円を描くように変わった。

そして、再び旋律が高まる。クライマックスだ。

セレスの小さな手が、力いっぱい鍵盤を叩く。音が重なり、和音が広がり、店内全体が音楽に包まれる。

花びらが一斉に舞い上がった。天井いっぱいに広がり、まるで夜空の星のように輝く。

客たちが拍手を始めた。音楽に合わせて、手を叩く。リズムを刻む。

やがて、曲が終わりに近づく。旋律が静かに降りていき、最後の和音が響く。

少年の手が、鍵盤から離れた。

余韻が店内を満たした。

花びらが、ゆっくりと消えていく。光の粒子となって、空気に溶けていく。

静寂。

そして、爆発的な拍手。

「素晴らしい!」

「天才だ!」

客たちが立ち上がり、セレスに拍手を送る。少年は照れたように頭を下げた。顔が真っ赤になっている。

エリオが息子の肩を抱いた。

「よくやった、セレス。お前は本当に、素晴らしい音楽家だ」

エリオの父も目を細めて頷いた。

「この子は、きっとこの街の宝になる」

セレスはピアノの椅子から降り、もう一度深く礼をした。

客たちの笑顔。温かな拍手。音楽に満たされた空間。

父と息子の、幸せそうな表情。

これが、花時計亭の、幸せだった頃の記憶。

――――

映像が途切れた。

光が消え、アリアは現実に引き戻される。庭の忘れな草の前で、膝をついたまま。

手が震えていた。胸が熱かった。

「今の……は……」

「記憶よ。この花が見た、20年前の光景」

リリィが囁いた。

アリアは立ち上がり、カフェの裏口へと戻った。店内に入ると、エリオがカウンターで俯いていた。

「あの……すみません」

エリオが顔を上げる。

「忘れな草に触れて……記憶が、見えました」

エリオの表情が変わった。驚き、そして戸惑い。

「記憶……?」

「20年前の、このカフェ。たくさんのお客様と、ピアノを弾く少年が……セレスという名前の……」

その名前を聞いた瞬間、エリオの体が強張った。

「セレス……お前、なぜその名を……」

「春風のワルツという曲を、弾いていました。とても美しい曲でした。音楽に合わせて、桜の花びらが舞っていて……まだ小さな子供でしたが、素晴らしい演奏でした」

エリオの目から、涙が一筋流れた。

彼はカウンターに手をつき、俯いた。肩が小さく震えている。

「それは……息子が作った、最初の曲だ……」

声が震えていた。

「セレスは……私の息子です。あの子は幼い頃から音楽の才能があって、10歳の時に初めて自分で曲を作った。それが、春風のワルツでした」

エリオは顔を上げた。涙で濡れた頬を、手の甲で拭う。

「あの子は、この店で育ちました。毎日ピアノを弾いて、お客様を喜ばせていた。父も私も、あの子を誇りに思っていました」

「今は……」

アリアが尋ねかけた時、エリオは首を横に振った。

「それは……」

彼は目を伏せた。それ以上は、今は話せないという表情だった。

アリアは、それ以上聞かなかった。

ただ、胸の中で決めた。

この記憶を、この音楽を、もう一度この場所に取り戻そう。

リリィがアリアの肩に舞い降りた。

「次に進みましょう」

アリアは頷いた。

まだ、物語は始まったばかりだ。


アリアはテーブルに座り直した。エリオはカウンターの向こうで、まだ俯いている。

沈黙が流れた。

やがて、エリオがゆっくりと口を開いた。

「30年前、この街に戦争が来ました」

静かな声だった。

「私はまだ20代で、父からこの店を継いだばかりでした」

エリオは窓の外を見た。桜が揺れている。

「戦火は激しく、街の多くが焼かれました。人々は逃げ、音楽家たちも散り散りになった。この店も、ギリギリのところで焼失を免れましたが……多くのものが失われました。そんな戦後の混乱の中、この店で火事があったんです。多くのものが消失し……」

「楽譜も……」

「ええ。セレスが大切にしていた楽譜の数々。彼が作った曲も、師匠から受け継いだ曲も、すべて灰になりました。あの子は、必死で守ろうとしたんです。でも、火は容赦なく……」

エリオの手が、カウンターの上で握りしめられた。

「それ以来、セレスは変わってしまいました。ピアノの前に座っても、何も弾けなくなった。楽譜がないと、どう弾けばいいのかわからないと言って……いや、本当は違ったんでしょう。心が、音楽を拒んでいたんです」

アリアは黙って聞いていた。

「それでも、最初の数年は、この店にいてくれました。お客様の相手をして、コーヒーを淹れて。でも、あの子の目には、もう光がなかった。毎日、空っぽのピアノを見つめては、俯いていました」

エリオは目を閉じた。

「そして10年前、あの子は私に言ったんです。『もう、ここにはいられない。音楽のない自分は、この店にふさわしくない』と」

「エリオさんは……何と?」

「何も言えませんでした」

エリオの声が震えた。

「『音楽を続けろ』と言ってやればよかった。『楽譜がなくても、お前の心には音楽が残っている』と、励ましてやればよかった。でも、私は……ただ、黙って見送ることしかできなかった」

涙が、再び頬を伝った。

「あの子がどこへ行ったのか、今何をしているのか、わかりません。生きているのかどうかも……もう、10年も……」

カウンターに、エリオの涙が落ちた。

アリアは立ち上がった。

「探します」

エリオが顔を上げた。

「セレスさんを探します。そして、もう一度この場所で、春風のワルツを弾いてもらいます」

「そんな……無理です。どこにいるかもわからない息子を、どうやって……」

「見つけます」

アリアの声には、迷いがなかった。

「私は花守りです。失われた記憶を取り戻し、失われた音楽を蘇らせる。それが、私の使命ですから」

エリオは言葉を失った。

リリィがアリアの肩から飛び立ち、花時計亭の中を一周した。そして、記憶を読み取った忘れな草の方へと飛んでいく。

「アリア、あの記憶の中の旋律……保存しておくわ」

リリィの羽が光った。花の周りに、淡い光の粒子が集まってくる。音符のような形をした、小さな光の欠片。

「これが『音の種』。記憶の中の音楽を、形にしたものよ。これがあれば、セレスがあの曲を思い出す手がかりになるわ」

光の粒子がリリィの羽に吸い込まれ、その羽が一瞬虹色に輝いた。

「さあ、行きましょう。セレスを探しに」

アリアはエリオに向き直った。

「必ず、連れて帰ります。信じて、待っていてください」

エリオは何か言おうとして、言葉が出なかった。ただ、小さく頷いた。

アリアは花時計亭を後にした。扉を開けると、鐘がカランカランと鳴る。

桜並木を戻り、街の中心部へと向かう。石畳の道に、人々の姿がまばらに見える。

「まず、聞き込みからね」

リリィが言った。

「セレスという音楽家を知っている人。10年前に街を出た若者を見た人。少しずつ、手がかりを集めていくのよ」

アリアは頷き、最初に目についた雑貨店へと入った。

「すみません、お尋ねしたいことがあるのですが……」

店主は中年の女性だった。親切そうな笑顔で応対してくれる。

「セレスという名前の、音楽家の方をご存知ありませんか? 10年ほど前に、この街を出て行ったと聞いたのですが」

女性は少し考えた後、首を横に振った。

「セレス……? ああ、花時計亭の息子さんですね。でも、どこに行ったかは……誰も知らないと思いますよ」

「そうですか……」

次はパン屋に入った。そこでも同じ答え。

書店でも、花屋でも、誰もセレスの行方を知らなかった。

「みんな、名前は知っているのに……」

「仕方ないわ。10年も前のことだもの」

日が傾き始めた頃、アリアは街外れの小さな工房の前に立っていた。看板には「楽器修理」と書かれている。

「最後に、ここを試してみましょう」

扉を開けると、木の匂いと、油の匂いが混ざった空気が漂ってきた。奥から、金槌で何かを叩く音が聞こえる。

「すみません!」

音が止まった。奥から、初老の男性が現れた。作業着を着て、手には工具を持っている。

「お客さんかい? 楽器の修理なら、何でも請け負うよ」

「あの、実は楽器のことではなくて……セレスという音楽家を探しているんです。ご存知ありませんか?」

男性の表情が変わった。

「セレス……あの、花時計亭の?」

「ええ! ご存知なんですか?」

「知ってるも何も、よく来てたよ。ピアノの調律を頼まれてね。あの子は、楽器を大切にする、いい子だった」

アリアの心臓が高鳴った。

「10年前に街を出て行ったと聞いたのですが、どこへ行ったか……」

男性は腕を組んで考えた。

「確か……街を出る前に、一度だけ会ったんだ。『もう音楽はやらない』って、寂しそうに言ってたよ。それで、『どこへ行くんだ』って聞いたら……」

男性は工房の奥を指差した。

「『街外れの、廃工房に住む』って言ってた。人目につかない場所で、静かに暮らしたいんだって」

「廃工房……どこですか?」

「ここから北に1時間ほど歩いたところ。古い製材所の跡地だ。もう誰も使ってないはずだが……まだ、そこにいるかどうかは、わからんがね」

「ありがとうございます!」

アリアは工房を飛び出した。リリィが後を追う。

「北へ、1時間……急ぎましょう!」

夕陽が街を赤く染めている。アリアは走り出した。

セレスは、まだこの街にいるかもしれない。

会える。きっと、会える。

希望を胸に、アリアは街外れへの道を駆けていった。


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