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リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました  作者: 遠藤 世羅須


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8/8

第7話 一度目は偵察

ゴースト&ゴーレムの定義を終えた直人、しかし、盤面は停滞を許さない。ダンジョンも現実も。

直人は、まず現実の会議を“無難に”片付けた。

無難というのは、謝らず、約束せず、しかし空気は壊さないという、社会人の最難関スキルである。

「ご不便をおかけしています。影響停止を優先し、原因は確定次第、文面で共有します」

短く、固く、逃げ道を残す。

画面の向こうで営業が泣きそうに頷き、法務が無言で救ってくれる。

挿絵(By みてみん)


――そこで、直人はもう一つの画面を見る。

ダンジョン側は夜だった。

静かな闇の中、侵入者が四つ、同じ間隔で進んでくる。

勇者パーティ。初手から“偵察”の動き。

ミリアが涼しい顔で言った。

「来ましたね♡ 中ボスの皆さま♡」

直人は低く返す。

「褒めてる場合じゃない。今日は情報を渡さない」

「無理です♡」

「即答するな」


偵察は“戦わない”で始まる

勇者たちは戦わない。

まず“反応”を見る。

戦術家が床に白い粉を撒く。粉は一定方向へ流れた。

「導線がある。……整っているな」

斥候が壁に手を当てる。

「見られてる。ゴースト系だ」

聖職者が小さく祈る。

「目隠しの祝福」

勇者が短くまとめる。

「魔王はいる。だが、いま触ってない」

直人は歯を食いしばる。

(触ってないのに魔王扱いされるの、納得いかない)

ミリアが囁く。

「黙ってるほど、魔王っぽいですよ♡」

「沈黙がいいんだ。現実でも・・・」


直人は“見せない対応”に切り替える

直人はコマンドを短く打つ。

ゴースト:距離を取りつつ監視

ゴーレム:封鎖待機

ゴブリン:表に出さない(手続きに乗らない相手には逆効果)

「受付しないの?」とミリア。

「しない。あいつらは“規約を踏まない”」

「勇者さん、規約より目的ですからね♡」

「そういうのが一番厄介なんだよ」

勇者パーティが、わざと“困った顔”の札を置いた。

『苦情:導線が分かりにくい』

『要望:最短で核心へ』


直人の仕事脳が一瞬、反応しかける。

(直したい)

ミリアが即座に釘を刺す。

「直人さま、今“改善したい”って顔しました♡」

「顔を監視するな」

直人は“無言で”盤面をいじる。

札はゴーストに回収させ、導線は「最短に見える遠回り」にだけ調整する。

攻撃しない。言葉も出さない。

勇者側が止まる。

戦術家が小さく息を吐く。

「……反応した。だが呪文が聞こえない」

斥候が低く言う。

「魔王、黙って触った」

勇者が断言する。

「引き金は別にある」

直人は眉間を押さえた。

(やめろ、学習するな)


引き金は“困りごと”だった

勇者パーティは次の一手を打つ。

わざと松明を倒し、火が壁を舐める程度の“事故”を起こす。

戦術家の声が冷たい。

「人は、“困りごと”に反応する」

勇者が続ける。

「魔王も同じだ。管理する者なら、放置できない」

直人の背筋が冷えた。

(それ、俺の弱点だ)

ミリアが楽しそうに囁く。

「直人さま、いい人ですね♡」

「褒めるな、弱点だ」

火が広がりそうになる。

神官が小さく祈って鎮火を試みるが、わざと“間に合わない”程度に抑えている。

つまり――直人に反応させるための火だ。

直人は耐えきれず、口を開いた。

「……危険だ。対応――」

挿絵(By みてみん)

その瞬間、大きな呪文とも咆哮とも言える声がダンジョンに響き渡る。

盤面が動いた。

ゴーレムが通路の一部を閉じ、火の流れを遮る。

ゴーストが空気を攪拌して煙を押し戻す。

火は止まる。

勇者パーティが、確信する。

戦術家が低く言った。

「呪文を吐いた」

聖職者が頷く。

「魔王語だ」

斥候が笑う。

「引き金、取れた」

勇者がまとめる。

「一度目は偵察。魔王の癖は掴んだ」

侵入者は整然と撤退した。

勝負をしに来たのではない。情報を取りに来たのだ。


直人は椅子の背に沈む。

「……学習された」

ミリアが嬉しそうに拍手する。

「おめでとうございます♡ ちゃんと“魔王”になりました♡」

「ほめる所が違う。魔王じゃないし」


(第8話に続く)

「物見」だった勇者パーティ。お互いに相手の探り合いだが、直人は次第に追い詰められてゆく。

この作品、本話時点でまだ設定上半日も経っていません。もうしばらくPC前でゴタゴタしますが、その後は別の展開となります。是非お楽しみください。

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